あの空の向こうへ 4
翔太は大切なことにようやく気がつき、
一歩を踏み出す。
あれから翔太は泣き続けた。
いつも自分の横にいてくれた彩夏。
それがまさか他の男と付き合うなんて・・・・。
こんなことになるくらいなら告白しておくべきだったのか?
いや、あいつは圭吾の告白を受け入れた。じゃあ最初から
圭吾が好きだったのか?
そんな予測も今となってはただの自己満足でしかない。
毎日していたメールもぱったりこなくなった。
幼稚園の頃、一緒にお風呂に入ったこと、
小学生の頃、運動会で転んだ自分を手当てしてくれたこと、
中学生の頃、修学旅行で一緒にクレープを食べたこと・・・・
様々な思い出が溢れだし、同時に彼の目からも透明な
液体が溢れ出した。
虚しい・・・・
心の一部が抜き取られた、そんな気がしてならなかった。
夏休み明け
翔太の気持ちは沈む一方である。
彩夏とはクラスが同じだが、話かけるなどできなかった。
嫌われるのが怖かった。
そんなある日、翔太が家でグズグズしていると、
ピーンポーン
翔太の親友である大樹が家を訪ねてきた。
「翔太、元気か?」
「大樹、何しにきたんだよ?」
「一緒に遊びに行かないか?」
「うるさい!そんな気分じゃないんだ。ほっといてくれよ!」
次の瞬間、大樹が翔太の胸ぐらを掴み、顔を思いっきり
殴り付けた。
「な、なにすんだよ!」
「お前、ホントになにもわかってないんだな。
彩夏はな、好きで圭吾と付き合ってるわけじゃないんだよ!
あいつはな、前に隣町に行った時にストーカーに
目をつけられてな、仕方なく圭吾と付き合ってるんだよ!
お前が!進路のことでウダウダウダウダして、なにも
見てないから、好きでもない人に守ってもらうしか
ないんだよ!!」
自分はなんて馬鹿だったのだろうか。
自分のことしか考えていなかった。
自分のことしか頭になかった。
そして、大切な者を失うところだった。
「行った方がいいんじゃないのか?」
「そうだ、行かなきゃ。あいつら今日デートするって!」
いてもたってもいられなかった。
~彩夏に謝らないと~
その思いだけで家を飛び出す。
大樹はその背中をやれやれと見届けていた。
「頑張れ、親友。」
「別にいいじゃねーか。」
「いや!やめて!」
彩夏の家の前にふたりはいた。
「なんでだよ?俺たち付き合ってるだろ?キスくらいいいじゃん。」
「いや!本当に好きな人としかしたくない!」
「なんだよ、それ。俺は本当に好きじゃないってのか!?
俺はこんなに彩夏が好きなのに!」
前の自分はなにもできなかった。
でも、今は違う。
一歩を、未来への一歩を踏み出すんだ。
「やめろ!」
翔太はふたりの間にわって入り、大樹がやったのと同じように
圭吾を殴り付けた。
「痛ってえ。なにすんだよ!!」
「彩夏は・・・・彩夏は俺のだ!もう、もう誰にも渡さない!!」
彩夏はすこし戸惑っていた。
でも嬉しそうだった。
そんな時、猛烈な揺れが町を襲った。