岩本翔太の答
この話含めてあと2〜3話で終わります。
俺のじいさんが海軍のパイロットだったって
聞いたときは、どこか遠い国の話のように
感じてた。
その時は自分も同じ道を進むなんて夢にも思ってなくて、
戦闘機にも興味なんてなかったな(笑)
そんな自分の中でなにかが変わったのは、間違いなく、
あの四国大震災だろう。
あの時、自衛隊が助けに来なければ、自分たちは
水もなく、食料もない中で餓死していたかもしれない。
ライフラインが寸断された状況下で、風呂まで
沸かしてくれた自衛隊。
俺はその時、自衛隊に入ろうと思った。
そして今日、俺は部下を戦闘で失った。
真面目なやつで、交際半年になる恋人もいた。
「隊長が隊長なら安心です!」
なんて、わけのわからんこと言ってた。
じいさんは戦争でたくさんの同期や教え子が
死んでいくのを見て、言葉に表せないくらいの、
怒りや悲しみや憎しみに苛まれたと思う。
でも、それでもじいさんは生きた。
それを自分への戒めとして、生き恥を晒してでも生きる
ことを選んだ。
だから自分が生まれた。
信頼してくれていた仲間を失ってひとり生き残ることが
どれだけ辛いことか、今ならよくわかる。
だからこそ、じいさんは本当に立派だったとはっきり
言える。じいさんの孫に生まれたことを、
誇りに思う。
じいさん、俺も生きるよ。梶井の分まで
精一杯生きる。生き恥を晒してでも生きてみせる。
俺には、俺の帰りを待っている人がいるから…。
与那国島では、特殊作戦群が動き出した。
対戦車砲RAMで中国軍の空挺戦車を
撃破し、それを使って中国兵を陽動、
その隙に沿岸監視隊を救出するというものだ。
武藤の先導の元、中国軍に忍び寄る。
距離はおよそ70m。少しでも音を立てれば
ばれてしまう。
「隊長、あれです。」
「よし、全員離れろ。」
RAMを持った隊員から全員が距離をおく。
隊員は後方を確認したのち、RAMを発射した。
「敵戦車の撃破を確認!!」
猛烈な爆発音と共に
敵戦車から黒煙が上がる。
中国兵も自衛隊に気がついたようだ。
一斉にこちらに向かってくる。
「総員退け!!」
特殊作戦郡は打ち合わせどおり退避する。
だが、彼らにはひとつ大きな誤算があった。
「武直10!!」
中国軍の対地戦闘ヘリ武直10が2機、
想定よりもかなり早く特殊作戦群を捕捉したのだ。
「まずい!伏せろ!」
茂みに身を隠そうとするももう間に合わない。
誰もが撃たれるのを覚悟した、その時!
「あれは…友軍機です!」
しなのから発進したF35が3機、与那国島上空に
到着し、特殊作戦群を狙っていた武直10を2機とも
バラバラに粉砕したのだ。
ミサイルを発射したのは岩本翔太三佐。
その僚機2機も翼に抱えた空対地ミサイルAGM-65マーベリック
を放ち、中国軍の戦車や装甲車を撃破していく。
岩本のF35は、さらに高く、
日本の空を乱舞した。