迷いを振り切って
2022年 4月23日 11:00
しなの以下第一護衛艦隊に
与那国島上空の制空権確保の命が下った。
「現在、与那国島上空には広東の殲20が5機、
張り付いている。
ホーク隊は艦隊防空、ファルコン隊は
宮古島上空援護に忙しい以上、
スパロウ隊5機で行ってもらうことになる。
やれるか?」
しなの艦長の大空は
岩本の顔を見た。
少し緊張しているが、特に青ざめたり、
体調の悪そうな印象はない。
「やれます。」
11:30、しなのからスパロウ隊のF35JB、5機が
発進。
与那国島解放に向けて動き出した。
・・・・・・・・
『隊長!敵機探知!距離60!(60km)
こちらには気がついていません!』
殲20のステルス能力がF35に劣ることは
今までの戦闘で既に証明されている。
『ウェポンズフリー!!全機、敵機を捕捉次第
攻撃を開始せよ!』
殲20の高度は6000。
こちらは8000。
圧倒的に優位なはずだった。
『敵機散開!こちらに気がついたようです!』
攻撃を加えようと降下したF35だったが、
殲20に気づかれ、初撃を外した。
そのまま岩本が一番恐れていた乱戦に突入する。
岩本の右正面に敵機が現れる。
岩本は撃墜すべくミサイルの発射ボタンに
手をかけた。
「!!」
その時だった。
岩本とその殲20のパイロットの目が一瞬あったのだ。
ほんの一瞬。
だが気のせいではない。確かに目があった。
そのせいで射撃のタイミングを逃した。
殲20のミサイルも飛び立つことはなく、
2機はすれ違う。
「しまった!」
岩本の逃した敵機はスパロウ隊の3番機、
梶井二尉の機体に襲いかかった。
梶井機は前方に集中しており、
接近に気がついていない。
『梶井!回避しろ!!』
岩本の声と殲20のミサイル発射はほぼ同時だった。
距離もわずか4km。
かわせるはずもない。
『梶井!梶井ィィィィィ!!』
ミサイルは梶井機の左翼に
吸い込まれ、梶井機は炎に包まれた。
「クソォォォォ!!」
岩本はようやくわかった。
戦場で迷うことは死を招く。
訓練と実践は違う。
そして、大切な人を守るということは、
誰かの大切な人を奪うことだということを。
ローヨーヨーで敵機の後ろをとる。
もう迷いはない。
体制を立て直したスパロウ隊は
殲20、5機すべてを撃墜。
スパロウ隊は1機を喪失した。