オペレーションサンダー3
2022年 4月22日 07:00 与那国島
『オペレーションサンダー』が発動された頃、
与那国島の陸上自衛隊分屯地は中国軍300人と
空挺戦車3両、攻撃ヘリ5機に完全に包囲されていた。
まだどちらも発砲はしていない。
中国側は09:00までに投降しない場合、
攻撃を開始すると宣言しており、
分屯地内は緊張に包まれていた。
「隊長!いかがいたしますか!」
「敵の火力は遥かに優勢です。
総攻撃された場合、我々は20分足らずで壊滅します!」
だが、隊長は落ち着いていた。
「もう少しで海自のしなのが援護に来る!
それまで耐えるのだ!」
一方その頃、与那国島でもうひとり、
作戦を開始している人物がいた。
和也の同期にしてSS特殊情報部の武藤である。
スパイとして与那国島に潜入していた彼は今、
他の住人たちと共に小学校の体育館に
閉じ込められている。
「すみません、トイレに行きたいのですが・・・」
中国語は話せるがわざと日本語を使った。
中国語だと怪しまれる可能性があるからだ。
スパイは怪しまれたら終わりなのである。
「『とっとと行け!』とのことだ。」
中国軍の通訳が訳す。
無論、武藤にそんな通訳はいらないわけであるが。
トイレに駆け込み、聞き耳をたてる。
体育館入り口に2人。
体育館内に15人。
小学校の校門に5人。
歩哨も加えるとこのあたりにはだいたい30人の
中国兵がいる。
そして、このトイレの近くには誰もいない。
武藤は靴底に隠しておいた衛星電話を取り出す。
携帯の電波塔は空爆でやられたが、これなら
関係ない。
「こちらコードネームΣ。
与那国島上陸軍は、
歩兵、1個連隊およそ800人。
空挺戦車5両、地対空ミサイル4基、攻撃ヘリ5機、
装甲車8両以上。
住人は3つの小学校にわかれて収用されており、死傷者なし。
今のところは平穏です。over」
その後短く、「こちら司令部。了解」との
返信があった。
衛星電話をビニール袋で密閉し、
洋式トイレの水洗タンクに入れる。
発見されなければまた使える。
武藤は次の任務を達成すべく動き出した。