開戦
2022年 4月22日 10:30
「魚雷発射用意!」
探信音が返ってくる。
装填された8本の魚雷のうち2本に中国潜水艦の
エンジン音のデータが与えられた。
自衛隊の歴史が、いや、日本の歴史が変わる。
今日、日本はあの敗戦から新たな一歩を踏み出すのだ。
そう思うと、和也は武者震いが止まらなかった。
「1番、2番、発射!!」
ズドン、と重たい音がする。
1番発射管と2番発射管から2本の
89式魚雷が放たれ、中国潜水艦に向かって
疾走した。
・・・・
探信音を受け、驚いたのは中国側だった。
日本の潜水艦をまったく探知できなかったのもそうだが、
それより自衛隊がいきなり探知音を撃ってくるなど
あってはならないことだった。
自衛隊の潜水艦は自らが攻撃されるまで
撃たないと教えられてきたからだ。
「魚雷2本接近!命中まで3分!」
「デコイ装填!発射急げ!」
狙われたのは2隻の中国潜水艦のうち、
西側に位置している方だった。
東側の潜水艦は取舵をとって退避している。
「デコイ装填完了!」
「エンジン停止!デコイ発射!」
艦長が矢継ぎ早に命じる。
デコイにはその潜水艦のエンジン音が入ったテープが
備えられており、魚雷が代わりにエンジン音を出すことで
敵の魚雷を引き付ける役割が期待された。
「敵魚雷、デコイに食い付きました!」
たいほうの発射した2本は中国潜水艦の
デコイにひきつけられ、中国潜の前方3000で爆発。
目標に命中することはなかった。
「よし、反撃だ!魚雷「敵魚雷接近!2本!」
それは最早悲鳴に近かった。
爆風の中を突っ切ってきた敵魚雷2本。
たいほうは最初の魚雷が回避されることを見越して
二段構えの攻撃を仕掛けたのだ。
「デコイを・・・・」
「間に合いません!」
魚雷はそのまま中国潜水艦に突き進み、
前方100、上方50で爆発した。
猛烈な揺れが中国潜を襲う。
「状況を確認しろ!」
「魚雷発射管室浸水!
魚雷発射不能!」
「機関室浸水!エンジン止まりました!」
撃沈こそ免れたものの、戦闘ができる状態ではないのは誰から見ても明らかだった。
・・・・
「爆発音確認。敵潜水艦1隻撃破。
魚雷発射管室を損傷したと思われます。」
「よし、残る1隻は?」
「探知不能。爆発音でなにも聞こえません。」
元級1隻を撃破したものの、残る1隻の所在は不明。
しかし、それは向こうも同じことで、
こちらの位置はつかめていないだろう。
「エンジン停止。探知に全力をあげよ。」
「了解。」
その後たいほうは残る1隻が東シナ海に離脱した
ことを確認し、宮古海峡解放という
任務を達成した。