防衛出動
2022年 4月22日 08:30
高校生の田中健次は高校に着くなり
担任から驚愕の出来事を聞かされた。
「たった今、自衛隊に戦後初の防衛出動が
発令されたそうだ。
よって今日の授業はなし!
全員ただちに帰宅するように!
明日の連絡は追って行う。」
クラスがざわついた。
遠い世界に感じていた戦争がすぐそばに来ているのである。
授業がなくなったことは嬉しいが
素直に喜べるほど彼も子供ではない。
「父さん・・・・」
健次は自衛隊でパイロットをしている
父の生還を祈らずにはいられなかった。
・・・・
「防衛出動・・・・ついに来たか。」
しなの艦上では、幕僚たちが作戦会議をしていた
ところだった。
しなのは22日の午前5時に横須賀を出港。
20ノットの速度で護衛艦と共に現場海域に
向かっている。
「中国軍は現在確認されているだけでも空母2隻、揚陸艦2隻、
護衛艦9隻、潜水艦6隻を投入。
尖閣、与那国、多良島、宮古島に上陸した兵力は
合わせて2000。
1個旅団に匹敵します。
相当な戦力です。」
既に現場海域の航空優勢は中国に
奪われてしまっている。
これを沖縄の航空自衛隊と協同で奪い返すのが
しなの部隊に与えられた任務である。
「航空優勢を取らない限り住民の奪還は不可能です。
今は一刻も早く現場に向かいましょう。」
「そうだな。艦長、訓示を。」
大空は波多野群司令に頷き、マイクを
手に取った。
『全乗務員へ告ぐ!
たった今、防衛出動が自衛隊全部隊に通達された。
今までの訓練は今日のためにあったと思え!
各員は士官の指示に従い訓練どおり任務を
遂行せよ!以上!』
艦内各所から歓声が沸き起こる。
しなの部隊は速力を22ノットに上げ、
朝日が昇った太平洋を突き進んだ。
・・・・
10:30
「艦長、潜水艦を探知。
音数2。音紋照合します。」
潜水艦のエンジン音はそれぞれ違う。
そのエンジン音を"音紋"といい、データがあれば
人間の指紋のように潜水艦を識別できる。
「でました。中国潜水艦元級です。
距離8000。微速航行中。」
和也は立石ソナー長の耳に感服した。
これなら2VS1でも勝てる。
「わざわざエンジン音を響かせて航行か。
ここは自分たちの海だと言わんばかりだな。
愚かな。」
魚雷は装填済だ。
あとはデータを与えればいつでも発射できる。
「1番から6番、目標元級エンジン音!
30秒後ビンガー発射、返ってきたと同時に撃て。」
「了解!」
このたいほうの先制攻撃が
日本にどのような影響を与えるのか。
それは誰にもわからなかった。