かわりゆく日常 3
この作品はフィクションであり、
登場人物の思想や考え方はあくまで設定です。
そのことをご理解したうえでご覧下さい。
7月中旬
ついにまちにまった学校祭が始まった。
和也達のクラスは劇をやることになっている。
演目は『戦争と平和』。
太平洋戦争の時の若い兵士が主人公だ。
最近の若者は時代の流れに敏感なのか、普段は煙たがられる
この手の劇も今回は満場一致で決まった。
和也は主人公の兵士役。戦争に理不尽を感じながらも
それを口に出すことができず、上官に殴られる戦争の
愚かさを伝えるという難しい役回りだったが、和也は
見事に演じきった。
「「ありがとうございました!」」
最後の挨拶と共に幕が降り、舞台裏ではあちこちから
「お疲れー」の声が聞こえてくる。
「おい、和也。この後カラオケ行かないか?」
「わりい、今日は先約があるんだ。」
クラスメートの誘いを断るのは少し気が引けたが、
仕方ない。
和也はスマホを取り出して七美に連絡をとろうとした。
だが、
(あれ?おかしいな。応答がない。)
何度かけても繋がらないし、メッセージも既読にならない。
「なんだ?音信不通か?なら行こうぜー。」
こうなってしまった以上、断る理由はない。
和也は七美に断りのメッセージを入れてカラオケに
行った。
・・・・
学校祭最終日
学校祭最終日。この日は打ち上げ花火が上がる。
和也は30分も早く約束していた屋上へと向かう。
昨日作った『花火の間立ち入り禁止』と書いたプラカードを
屋上のドアノブにかけておく。
これならば邪魔が入ることもない。
和也は彼女が来るのを楽しみに待った。
しかし、
10分経ち、20分経ち、花火が始まっても彼女は
いっこうに姿を現さなかった。
(七美?どうしたんだ?)
前に打ったメッセージにも返信はない。前はこんなこと1度も
なかったのに。
彼の心配とは裏腹に花火はどんどん上がり、真夏の夜空を
埋め尽くす。
和也が呆然と立ち尽くす中、最後の巨大花火が
打ち上がり、花火大会は終わってしまった。
「七美・・・・どうして・・・・。」
不信感、というよりは心配と疑問だけが彼の心を支配した。
・・・・
次の日
本日は金曜日。簡単な片付けがあり、午前中で帰ることができる。
「おい、剣城、ちょっといいか?」
和也に声をかけてきたのは2年生の学年主任だった。
「はい、どうしましたか?」
「お前、確か、坂本(七美)と仲よかったよな?」
「はい、そうですが・・・・。」
学年主任の次の発言を聞いた和也は
背筋が凍りついた。
「坂本は今、意識不明の重体なんだ。」