中国軍侵攻 3
2022年 4月21日 19:00 総理官邸
午後7時から始まった記者会見は、
最初に官房長官がカメラの前に登場し、
これまでにわかっていることから、公表しても
差し支えないと判断された情報を
発表することからスタートした。
その後、総理大臣が現れ、日本政府の意志を
示す。
「我が国は、中国軍の不当な攻撃に
断固として抗議し、武力行使も視野に入れて、
全力で事態の終息に当たる所存です。
国民と領土、どちらも失うつもりはありません!」
総理が力強く宣言し、会見は30分ほどで終わった。
その後、各メディアはバラエティーやドラマの予定を変更し、
一斉に中国軍の侵攻を報道した。
ある番組は事実だけを何度も繰り返し伝え、
ある番組は専門家に解説を依頼した。
中には日中の戦闘の結果を予測するものもあり、
批評が相次いだ。
東京のとあるビル
帝国新聞社の社会・政治部主任、稲垣は、
社員たちと朝刊の打ち合わせを行っていた。
「日本政府が"武力行使"なんて単語を使うなんて
戦後初ですよ!」
「これは戦後初の防衛出動があるんじゃないですか!?」
世論調査の結果は五分五分だった。
"武力を行使して戦うべき"が40%
"戦闘は避け、交渉で解決すべき"が35%
"わからない""無回答"が25%。
戦後、争いを毛嫌いしていた日本人の
40%、およそ4000万人以上が"戦う"と
選択したのは、正直意外だった。
だが、自国の領土が不当に侵略されながら
"戦闘は避け、交渉で解決すべき"との
意見が出てくるのは、おそらく日本だけだろう。
今回の結果を見て、稲垣は
安心したような、怖いような、そんな印象を受けた。