家族
2022年 4月20日
翔太の実家では宴会が行われている。
翔太の両親、彩夏の母と彩夏、さらに近所の友人たちも
よんだため、子供達が走り回り、かなり騒がしかった。
「ほら、飲め飲め!ハハハ!」
普段は町役場に勤める真面目な翔太の父も今日は
おおいに酔っぱらっている。
「お前ももう一人前だなぁ。」
「そうだね。親父も髪、白くなって。」
「これはな、"年の功"ってやつよ!ハハハ!」
彼は笑っているものの、彩夏は気が気でなかった。
彼は戦闘機のパイロットなのだ。
国防の最前線にいる。
不慮の事故や紛争に巻き込まれる可能性も十分にあった。
彼はいつも
「戦闘機は旅客機より安全だよ。脱出装置があるから。」
と言っている。
その能天気が彩夏には心配でしょうがなかった。
少しして、彩夏は翔太を散歩に誘った。
・・・・
サッカーゴールや野球場が並ぶ河川敷をふたりで歩く。
沈黙がふたりの空間を支配した。
「ねぇ、」
「ん?」
「翔太は、翔太は戦争に行くの?」
翔太は答えに詰まった。
なんと答えていいのかわからなかった。
「わからない。」
「わからないじゃない!
本気で心配なの。翔太が死なないか。
私は、私は翔太に死んでほしくない!!」
嗚咽を漏らす彼女の髪を彼は優しく撫でた。
「誰かがやらなきゃいけない仕事なんだ。
君だけじゃない。みんなを守るために。」
これで説得できたかと思った。
でも甘かった。
「なんで翔太なの?
なんで貴方じゃないといけないの?
わかってる。わがままだって。
受け入れなきゃいけないんだって。
でも、でも・・・・!」
「帰ってくる。」
「え?」
「じいさんだって、じいさんだって帰って来た!
だから、だから俺も必ず生きて帰ってくる!!」
それは彼女と、そして自分との約束だった。
次の日、彼に緊急出動がかかった。