衝撃
急展開and胸糞注意です。
2022年 4月19日
武藤から情報をもらって東京のホテルに
一泊した和也は、横須賀にある自衛隊病院へ
向かっていた。
受付で病室を確認し、エレベーターに乗る。
アメリカで手術を終えた七美が
帰国したのだ。
東京オリンピック開会式での活躍でボーナスをもらった和也は
その金で七美をアメリカにいかせ、手術を受けさせた。
10時間にわたる大手術は無事成功し、
七美は意識を取り戻したと聞いている。
だが、高額だったため、不足分はあと5年
SSで働いて返さないといけなくなってしまったが。
いわばローンというやつだ。
5年ぶりに目覚める七美。
浦島太郎になった気分だろう。
後遺症は残らないのだろうか?
体はいままでどおりに動くのか?
不安ばかりが頭をよぎる。
【坂本七美様】
とネームプレートがつけられた部屋のドアに手を
かけて一瞬緊張する。
そのままゆっくりとドアを開ける。
そこには・・・・
「七美・・・・」
彼女がいた。
体を起こしてボーッと窓の外を見つめている。
彼女はこちらに気づいた。
そして・・・・
「貴方・・・・誰ですか?」
体が固まるとはまさにこのことを言うのだろう。
その後軍医から聞いた話によると、
手術によって意識は回復したものの、
記憶を失ってしまったらしい。
自分の名前などは覚えているそうなのだが・・・・。
「彼女の記憶を取り戻すのか、それともまったく新しい
人生を歩ませてあげるのか、それは貴様が決めなさい。」
自分はいままでなんのために戦ってきたのだ?
なんのために地獄の訓練に耐え、SSで任務を遂行して
きたのだ?
いうまでもない。彼女の、七美のためだ。
その彼女が記憶を失ってしまった。
自分と過ごした時間も、自分のことも、
なにひとつ覚えていない。
・・・・・・・・・・・・
そうか。これでよかったんだ。
記憶を取り戻したところで彼女はどうなるだろう?
失った時間のこと、いじめられていた苦しみに
また苛まれるだけだ。
これで、これで、よかった。
これで、彼女はまったく新しい人生を歩める。
辛かった時間も、苦しかった時間も、自分との思いでも、
すべて捨て去って彼女は新しい人生を歩む。
そこに自分はいらない。
彼女の側にいるのは、別の男なんだ。
そして自分は、誰にも必要とされることなく、
深海に消えていく・・・・。
「軍医。」
「なんだ?」
「彼女に伝えてください。『しあわせになれよ』って・・・・」
「・・・・了解した。」
それだけ言い残して和也は病院から去った。
目から溢れる透明な液体は止まることはなかった。