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海の防人~2022 日中開戦~  作者: 呉提督
20/48

珍客

今回、R15ギリギリです。

お気をつけください。

「ほら、飲みな。」


自販機でココアを買って彼女に飲ませた。

あまり長くないポニーテールに整った前髪と顔立ち。

よく見ると、なるほど、ナンパされるのもわかる

綺麗な顔をしていた。

よほど喉が渇いていたのか、彼女はそれを一気に飲み干してしまった。


「ありがとうございます。あの、お礼を・・・・」


「そんなものはいらん。」


元々助けたつもりなどなかった。

ただなんとなくココアを買って

なんとなく飲ませただけだからだ。


「お前、家は?」


「あの・・・・その、親と喧嘩しまして・・・・。」


「そうか。」




その後、和也の家に向かいながら、彼は彼女の

話を聞いた。

彼女も2年前に両親が離婚。

理由は弁護士である父親の不倫だった。


離婚後、彼女は母親に引き取られたが、

パート従業員の母親の稼ぎでは毎日食べるのが

やっと。

携帯はもちろん、ジュースすら飲めなかった。


そして3日前にその母親と些細なことで喧嘩。

家出してきたのだという。

今問題になっている"貧困JK"というやつだ。



彼女の話を聞けば聞くほど七美と共通するものが

あった。

母子家庭、貧困・・・・


和也は彼女に尋ねた。


「助けてくれる人は?学校の先生とか、

お前に惚れてる男とか、いないのか?」


「いません。」



結局家についてしまった。

彼女は自分の家には帰りたくないという。


仕方なく、和也は彼女を自宅に招いた。





・・・・


「・・・・すごい家ですね・・・・。」


驚くのも無理はないだろう。

和也の家には電化製品がほとんどない。

洗濯は基地やコインランドリーでやるし、

テレビは見ない。

半年空けることもあるので冷蔵庫に保存しても

意味がない。だから冷蔵庫もない。

自宅での食事は外食かコンビニ弁当だ。


よって家にあるのは

トイレや風呂を除けば

本棚と机、ベット、パソコンのみである。



「寒かっただろう。すぐにシャワーを浴びろ。

風邪でもひかれたらたまったもんじゃないからな。

着替えは俺の使ってないジャージを置いておく。」


ようやく彼女の顔に笑顔が戻ってきた。

風呂場から聞こえる楽しそうな鼻歌を

耳にしながら、メールを確認する。

上陸したからといって休めるわけではない。


明後日には東京にいってSSのメンバーと

極秘の打ち合わせがある。

新幹線のチケットももう一度確認した。


すべての確認を終えて一息つく。

まさかこの家に客を、しかも女の子を

入れるとは思ってもいなかった。

人生、なにがあるかわからないものだ。


すると、シャワーを浴び終えた彼女が

バスタオル一枚で出てきた。

しっとりと濡れた髪がとても色っぽい。



「あの、今日は助けていただいただけでなく、

家にまであげていただいて、本当にありがとうございました。

私、そういった経験はありませんが、今夜は精一杯

ご奉仕を「早く服を着ろ。俺はそんなものに興味はない。」


彼女の発言を遮った。

彼女に七美の姿を重ねる。

七美が意識を取り戻して体でお礼をされても

なにも嬉しくない。

幸せに、笑顔になってくれたらそれでよかった。


そしてそれは彼女にも言えた。



「え?あの・・・・」


「疲れてるんだから早く寝ろ。

俺は明日東京に行く。この家は自由に使ってもらって

構わん。

金はとりあえず10万渡しておく。足りなくなったら

ATMから引き出せ。」


SS隊員は契約のほかに自衛官で言えば佐官クラスの

給料が貰える。

趣味もなく、ほとんど自由な時間もない和也

にとって使いどきなどなかった。

最近開設したばかりの5番目の口座のキャッシュを

渡した。



「え?でも・・・・」


「ただし、落ち着いたら母親に連絡しろ。

捜索願いなんて出されて誘拐犯扱いされたら

たまらんからな。」



彼女は泣いていた。

ここまで何度も涙したことだろう。

でもこれからは嬉し涙だけを流してほしい。


それが和也の願いであった。



最後に、ベットに行く彼女に言った。



「君の名前は?」


「咲。花山咲です。」



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