平和の祭典 2
『こちら、SS司令部。聖火台の下に不審物が
ある可能性大。至急向かわれたし。』
「こちらα、了解。」
先にとらえられた工作員の懐からでてきた
暗号を解読した結果、聖火台に爆弾が仕掛けられている
可能性が高いという。
新国立競技場建設の際に大問題となった聖火台。
人が立てば目立つようにすればよかったのだが、
後ろが通路になっているため、そうもいかなかった。
聖火ランナーの入場まであと30分。
和也は聖火台の下へと急いだ。
・・・・
聖火台の下に取り付けられていたのは
紛れもない爆弾であった。
爆発までおよそ10分。競技場では各国選手団の入場が
終わり、聖火ランナーが走ってくるころだ。
聖火台に火がついた瞬間爆発するしかけだろう。
爆発物処理班を読んでいる暇はない。
和也はペンチを取り出して、爆弾の配線を
一本ずつ切っていく。
聖火ランナーはどんどん近づいてくる。
このままではオリンピックは中止。日本は世界に恥を晒す
ことになる。
そうはさせない。日本政府には七美を助けてもらうまで
転覆されるわけにはいかない。
わずか5分で爆弾の配線のほどんどを解体し、
残るは3本。
どれかを切れば解体完了だ。
生唾を飲み込んでじっくり配線を見極める。
(これだ!)
和也が最後の赤の配線を切ったのとほぼ同時に
聖火が灯った。
会場からは惜しみ無い拍手が送られる。
無論、和也にではなく、聖火ランナーにだ。
『こちらα、任務完了。』
『こちら司令部。了解。よくやった。』
こうして、一番狙われると予測された開会式は
無事閉幕した。
その後、オリンピックは問題なく行われ、日本の若者たちが
多数の金メダルを手にした。
・・・・
2021年 4月
沖縄基地に配属されていた翔太に異動の内示が
下った。
配属先が書かれていないのが気になったが、上官いわく、
『行けばわかる』だそうだ。
翔太は新しい愛機のF35に乗り込み、沖縄を後にして
横須賀へと向かった。
・・・・
沖縄から1時間。横須賀上空にたどり着いた翔太は
目を丸くした。
「いつのまにこんなものを・・・・。」
そこにいたのは、巨大な甲板を持つ大型護衛艦しなのだった。