原潜たいほう 2
一部不適切な発言を含むかもしれません。
ご了承下さい。
「今、貴様らの後輩である2期生の錬成を行っている。
貴様らは現在建造中のたいほうの様子を見に行ってもらうと
同時に原子力潜水艦運用に必要な技能を身につけてもらう。」
別に驚きもしなかった。
自分達は総理大臣と防衛省のごくわずかな人間しか
知らない存在。
ただ幹部を育成したいだけなら自分達などいらない。
つまり、特別な仕事に就かされる。
それは最初から予想していた。
「剣城、これから自衛隊は変わる。
常に受身だった自衛隊が先手を打って対処していく。
貴様らはその先駆けだ。
くどいようだが、貴様らの大切な人間の命は
我々の手にあることを忘れるな!」
原子力潜水艦。それは深海に潜み、獲物を狙う
獰猛なる海の魔王。
たとえ祖国が核で滅ぼされようと、敵に対して報復の
核を撃ち込まなければならない。
もっとも強く、残酷な兵器である。
「話は以上だ。」
・・・・
2020年 夏
東京は溢れんばかりの人でごった返していた。
待ちに待った東京オリンピックの開幕である。
47都道府県から選りすぐりの精鋭警官が集められ、最高レベルの
警備がしかれている。
聖火ランナーの到着後、ブルーインパルスが青空を彩り、
東京オリンピックは開幕した。
そんな中、
「こちらα、異常なし。」
和也達特殊工作員、通称SSは、オリンピックを
狙った爆弾テロなどの警戒に当たっていた。
国内の過激派や、海外の工作員、テロリストで怪しい人間は
すべてマークしている。
「こちらβ、会場内に不審物を発見。
確認したところ、ただの忘れ物と判明。
引き続き警戒する。」
広大なオリンピックの会場ですべてに目をくばるのは
難しい。
なにかを隠せそうな場所や、意外と人目につかないところを
重点的に探す。
原子力潜水艦たいほうはすでに完成しているが、
進水はまだである。
この仕事が終われば今度は海だ。
オリンピックを狙った犯行予告は100件を超えており、
警察が逮捕できたのはわずか20人。残る80人は未だに
特定に至っていない。
警官が警備に引き抜かれている以上、仕方ないのかも
しれないが。
ほとんどがイタズラの類いだが、だからといって
放置するわけにもいかない。
和也達の暑い暑い不審物、不審者探し大会の
始まりであった。