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海の防人~2022 日中開戦~  作者: 呉提督
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かわりゆく日常 1

2017年春


『自衛隊の海外での武力行使を容認する集団的自衛権などを含んだ安全保障関連法案が昨日国会にて強行採決され、日本の

安全保障は・・・・』


テレビから流れるニュースを横目に見つつ、テレビの

電源を落とし、家を出る。

一時期は膝くらいまであった雪もすっかり溶け、

春の日差しが差し込んでいる北海道、札幌市。

だが、気温はまだ低く、コートは欠かせない。


『1番線、まもなく到着いたします。』


通勤ラッシュの地下鉄の1号車の位置に並ぶ。


「先輩、おはようございます!」


背中から聞こえる元気な声。

毎朝聞いている声なのに、なぜか嬉しくなる後輩の挨拶。


「おはよう。今日は比較的暖かいな。」


「そうですね。」


他愛もない話をしつつ、学校へ向かう。

それが彼の日常だった。


5駅ほど過ぎたところで目的の駅に着いた。

サラリーマンの波にもみくちゃにされつつ、改札を抜けて

高校を目指す。


「それじゃあ先輩、また後で!」


「ああ。」


2年生の教室に向かう彼女を彼は嬉しそうに見守った。



・・・・

部活の休憩中



「先輩、お疲れ様ですー。今日のサーブ、うまく決まってましたね!」


「ああ。ありがとう。」


スポーツドリンクの入った水筒を渡しながら彼女が

尋ねてきた。


「ところで先輩、今朝、安全保障関連法案が強行採決されました

けど、日本はどうなるんですかね?」



「さあな。でも、日本は、自衛隊は戦争なんてしないよ。

『戦争法だ!』なんていうのはマスコミや反日の

いいががりさ。」


「そうなんですか?」


答えるかわりに彼女の艶のよいツインテールの髪を

優しくなでる。

そのたびに彼女が見せる笑顔が彼の毎日の唯一の楽しみで

あった。



・・・・

次の朝


『安全保障関連法案の強行採決に対して国会前では

およそ2万人が集まり、『戦争反対』のプラカードを

掲げてデモを行いました。・・・・』


「暇なやつらだな。」


冷めたコメントを残してテレビを消し、

いつもと変わらず学校へ行く。





平凡だけど、楽しい毎日。そんな毎日がずっと続くと

思っていた。





「おはようございます、先輩。今日もやってましたね、

デモ。」


「ああ。暇なやつらだ。」


「『民主主義を守れ!』って言ってましたけど、国会議員は

選挙で選ばれた人達なんですから、きちんと民主主義を

守ってるんですよね。」


「民主主義を守ってないのは反対派だ。

反対派の方が小数なのに、あたかも多数派であるようにふるまう

からな。」


「ホントですよね。」


プクーっと顔を膨らませる彼女。

そのたびに彼は(こいつはいちいち面白いな。)と思う。


まさか、この笑顔が3ヶ月後に見られなくなるとは

この時誰も予測していなかった。


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