単身赴任
この国では北は山脈。東は大河。南に街道。西に森林となっている。中でも森林は「魔の森」と呼ばれるほど魔物が多い。この魔物は非常に凶暴で数が多く不定期に近くの街に向かってくる。そんな街を守っているのは第四小隊通称『右手の盾』と言われる防衛隊であった。総数30名ほどの小さな小隊であるが、この小隊が来てから街への被害は無くなったと言われている。そんな場所へこの物語の主人公はやっていけるのであろうか・・・
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いつものように、適当な場所を見つけて寝転がっていると、同期のドンペリが会いに来た。奴はこの国で一番危険な街と言われている【カロナール】で毎日、魔物と戦っている。大変だよな、がんばれよ。
「久しぶりだなスピア。最近の調子はどうだ?」
「最近?特に変わってないかな。というより昔から何にも変わってないよ俺は」
「そうか・・・。ところで今日会いに来たのは、今度からスピアには俺たちの部隊に入ってもらうことになった。」
「え?マジで?」
「ほら、任命書を持ってきたぞ。」
懐から丸めた紙を取り出すと、こちらに放り投げてきた。中を確認すると本日付で第四小隊に配属されることが記載してあった。
「マジかよ。めんどくせぇ~なぁ~。」
「まあ、そういうなって、お前にとって一番楽な仕事だと思うぞ。」
移動しながら仕事の説明をするといわれ仕方なく立ち上がり後ろについていった。話を聞くとどうやら、門の近くに俺の仕事場があり、そこで基本的に何もしなくていいと言われた。
いや、『何もしなくていい』と言われても何か問題があったらもちろん自分も動くつもりだよ。というより外が騒がしいのに中でぐーたら過ごすほど、自分は腐っていない。
ああ、第10小隊の演習は別だけどね。何で疲れてまで体を動かさなきゃならないんじゃ。
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その日の午前中に家に帰り、家族に異動になったこと今日の午後には出発することを話した。両親には心配されなかったが姉ちゃんは、『しっかり朝は起きて毎日三食たべるよう』言われた。
荷物は両手で抱えられる袋に着替えを入れて準備はすぐに終わった。このまま家にいると寝てしまいそうなので、集合場所の馬小屋で寝転がっていた。馬くせえ。
しばらくするとドンペリが馬小屋にやってきた。奴は特に何も持っていなかった。
「俺の拠点は向こうだから、今更何か持っていくものは何もないよ。欲しいものは荷物として向こうにおくっているからね。それにしても荷物それだけか。少なくない?」
「足りないものがあれば現地で購入するつもりだから別に大丈夫でしょ」
ここから馬車で5日かかる場所に【カロナール】へ向かう。行程に不備はなくのんびりしながら目的地についた。
「結構あっという間だったな。」
背伸びをしながら、体を動かした。
「そう思うかもしれないけど、俺にとっては暇で長かったよ。それにしてもお前は本当に寝転がってばっかだったな。本当に昔と同等の動きができるのか?」
移動しながら今の状況を聞いて来たりしていた。隊長さんは朝と夜寝る前に体を動かしていたけど、体が鈍っていたのかな?自分の意思で体を動かすなんてここ何年もやってないなあ。いざというときは大体ちゃんと体が動くから問題ないでしょ。
「不安なら試してみる?」
「いや、お前はこれから仕事場を案内するからそこで力を見せてくれ。」
街の馬小屋から歩いて最西端の門前にある兵舎についた。