君が記憶を忘れる理由
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――ねぇ、そこの君。もし暇だったら、少しばかり僕の戯れ言につき合ってくれないかい?
……ありがとう。じゃあ、始めるよ。
――何故、話を始めないのかって?
だって君、拍手とかしてくれて無いじゃないか……いやいや、冗談だよ。じょーだん。少しでも君と仲良くなっときたいんだ。《今の君》と。そう!《今の君》だ。分かりやすく言えば《現在の君》とだ。
--ふふ。不思議そうな顔をしているね。大丈夫、最後にはきちんと意味は分かるはずだから。《今の君》が理解しようとすればだけどね。
…ごめん。話が逸れちゃったね。戻すよ。
君は当たり前のように、過去の記憶を持っているはずだ。たまーに、持ってない人もいるけどね。
だけど、過去の全て覚えている訳じゃない。見たり、聞いたり、触ったりしたのに、覚えていない。
君は、何故だと思う?
--う~ん。僕が望んでいるのは、そんな答えじゃ無いんだけどな…。
もっと、そんな考えから離れてごらん?『当たり前』から。
--僕は、こう思うんだ。
《過去の君》と、《今の君》は違う人物だと。正確に言えば、《今の君》が《過去の君》を乗っ取っているんだ。何度も何度も。記憶ごと。
でも、何度も乗っ取っているあいだに乗っ取りきれない記憶が出てくるんだ。それが《今の君》が覚えてない記憶だ。
でも、《今の君》が覚えて無いだけで君の中には存在している。
--じゃあ、またまたしつもーん。
《今の君》が覚えて無いけど君の中に存在している記憶はどうなってると思う?
--…ちょっと。すぐ、僕に答え求めないでよ。やっぱり覚えて無くても、君は君だね。《過去の君》も同じように、僕にすぐ答えを求めてきたよ。
はいはい、僕の答えを教えてあげるから、落ち着いて。はい、深呼吸ぅー。
……落ち着いたかな?じゃあ、始めまーす。
《今の君》が覚えて無いけど、君の中に存在してる記憶を《忘れられた存在》とするよ。
その《忘れられた存在》は、一つ一つは小さい。けど、何度も何度も乗っ取られるうちに積もりつもって、一つの個体として存在するようになるんだ。
その個体は、やがて意志を持ち始める。
--そう!!僕みたいに!!
ここまで言えばわかるよね?僕は君の《忘れられた存在》なんだと。
信じられない?それは、どういう根拠で言っているのかな?僕は《忘れられた存在》であるから、こう言える。でも、君は何故、すぐ言い切れる?
というか、君自体が《忘れられた存在》の一番の根拠だよ。
《過去の君》たちにはこの場所で、何回も何回も同じ話をしている。今、話している話をね。でも、毎回君は忘れている。そして、《忘れられた存在》は、それを覚えて……いや、知っている。
これ以上の、根拠はないだろ?
ねぇ、そんな青色の顔になってないで《忘れられた存在》をよーく見て。
見える?《忘れられた存在》を縛りつけている、鎖が。
この鎖もね、君が君を乗っ取れば乗っ取る程緩くなっていくんだ。そして、最後には千切れる。
そうするとね、《忘れられた存在》は君になり、君は《忘れられた存在》になる。
つまり、最終的には君がこの鎖に繋がられるんだ。
どう、素晴らしいだろ。君がこれに繋がられれば、もう将来の事を考えなくてもいいし、恐怖も悲しみもなく平和にくらせるんだ。
まぁ、喜びも楽しみもなくなるけどねぇ。
あはは、今どんなに怖がっても君が君を乗っ取る事は、止められない。自然の摂理と言っても過言じゃないんだよ。
--あれ、もうこんな時間?もうすぐこの場所は閉ざされちゃう。もうちょっと話してたかったな。
最後に、《今の君》と《忘れられた存在》は仲良くなれたかな?
…残念。また、仲良くなれなかった。
くすくす、仕方ないね。じゃあ、この場所が再び開くときまた会おう。《未来の君》に、会えるのを楽しみにしているよ。
さようなら、《今の君》。ここから、でたら《今の君》は《未来の君》になり、《今の君》は《忘れられた存在》となる。
そして、《今の君》の存在は無くなる。永遠に!!!
さようなら、《今の君》。いや、《過去の君》。
--ようこそ、《過去の君》。
駄文を最後までありがとうございます。
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