9.クーとシキ
学校に戻って、Wクラスへ向かう途中に、
「あっ、生徒会長の名前聞くの忘れた。」
ってことを思い出した。そういえば、生徒会長は何であんな遠くにいたんだろ。それも聞き忘れたな。ってか絶対あれ、俺を遠ざけるためだよな。ってことは雄叫びも嘘かもしんねえけど、どっちにしろ餌はあげにいかなきゃだしなあ。
なんてつらつらと考えながら、教室のドアを開ける。
「はいはい失礼しますよっと。」
「イサ!!大丈夫だったか!?」
「ん?あれ、シキ?」
ドアを開けるた途端に、シキが俺の方へと駆け寄って来た。
「イサ!どこに監禁されてたんだ!?怪我してないか!?」
「ちょっ、落ち着けよシキ。大丈夫大丈夫。全く怪我してないから。ってか、何でお前はこんな時間まで学校にいるんだよ?」
「俺は、イサのことが心配で!っていうのと。」
「ていうのと?」
「その、話が・・・」
「あぁ!そっか、まだ聞けてなかったな。」
「イサは、まだ帰らなくていいのか?」
「あぁ、俺は平気だけど。とりあえず先にクーにエサやっていいか?」
「うん、気を付けてな。」
「そんな風に言われるとこえぇな。」
「クーはお腹空くと雄叫びをあげるから。今はまだ平気みたいだけど。」
ん?お腹が空くと雄叫びあげるのに、今は平気?つまり、まだ雄叫びをあげてないってことか?
「さっきすごい雄叫びあげてたんだろ?外のラム先生の店まで聞こえたみたいだけど。」
「いや?雄叫びはまだあげてないぞ?」
「・・・やっぱりか。」
「どうした?イサ。」
・・・やっぱりあの生徒会長、俺から逃げるために嘘つきやがったんだな。
「イサ?」
「うん?」
「初めてなのに、よく普通に檻の中に入ったな。」
「えっ?・・・うお!?」
俺、ボーッとしていつの間にか檻の中に入ってた!?うおー!!どーしよ!?
「グルルルルル」
「うわあ!!ごめんなさい!!」
奥でクマがこちらを見て、唸ってる。・・・こええぇぇ。土下座しよう!土下座すればみんな許してくれるはずだ!!
「申し訳ありませんでしたあ!!」
「おい!?イサどうした!?」
シキが俺の行動に驚いて檻の中に入ってきた。
いやでも、これやればきっとクマも許してくれるはずだ!!
「ブフゥ」
「はい!何でしょうかクマ様!」
「イサ、会話できるのか!?」
「フモオ!!」
「はい!失礼しました!クー様!愚かな俺の過ちをお許し下さい!!」
「何の話なんだ!?クーとイサは何を話してるんだ!?」
シキが俺の肩をつかんで、俺の顔を覗きこんだ。
「イサ?大丈夫か?クーは人間食べたりはしないぞ?」
「はっはい!」
「イサ!?動揺しすぎだ。俺にまで敬語になってる。一旦落ち着け。」
「ブフゥ。」
「エサ。」
「分かるのか!?」
「シキ!クー様のエサはどこにある!?」
「えっと、ここ。」
シキが檻の端にある扉つきの棚から大きな袋を出した。
「その袋開けて置いておけば、勝手に食べるらしい。」
「らしいって何?」
「今までクーのエサ食べてるところは誰も見たことがないんだ。
けど、次の日の朝には空になってるから、俺たちが帰った後に食べているらしい。」
「へぇー、落ち着いて一人で食べたいのかな。」
「じゃないか?」
「よいしょっと。」
袋をクマの足元まで運ぶ。少しドキドキしながら。
「フモッ」
「うおっ!?」
置いた途端にクマに頭をガシリとつかまれた。
・・・ひええええ!!
「シッシッシキ!!シキィー!!」
「大丈夫だイサ。クーが気に入った時にする行動だ。」
「・・・そっそうなのか?」
グイグイと三回押され、やっと手を離してくれた。
・・・ふうぅぅぅ。
「失礼しましたぁ。」
と言いながら、シキと檻から出て扉を閉める。
「シキ、檻の鍵は?そいやさっきも掛かってなかったみたいだけど。」
「ない。クーは出てこないから大丈夫だ。」
「あっそう。ならいいけど。んで?話、どうする?俺たちがいたらクーが飯食えないんだろ?出るか?」
「あぁ、そうだな。近くに喫茶店がある。そこに行こう。」
「おし、じゃあ行くか。」
教室に置きっぱなしだったカバンを開いて、中を確認する。
「イサ、どうかしたか?」
「いや、財布とか取られてねえかなって。確認。」
「ハハッ、信用されてないな。」
「シキのことはしてるよ。けど、オーマとかなら、取っていっててもおかしくねえ。」
「あったか?」
「おう。よし、行こうぜ。」
「うん。」
教室の電気を消してから、シキと教室を出る。
「あれ?そいや、教室の鍵は?」
「後で警備員さんが閉めに来るから大丈夫だ。」
「そうなんだ。あとさ、あいつら普通に帰ったの?」
「あいつら?」
「オーマ達。」
「あぁ、普通に帰ったよ。イサが意識を失って、生徒会長が来てイサを運んだ後に、よし帰ろうって。」
「薄情もんめ。」
「でも、心配はしてたよ。」
「あっそう。」
「シキ。」
「ん?」
「その生徒会長の名前って知ってるか?」
「たしか、暇鮫くん、だったかな。」
「ヒマザメ?」
「うん。オーマがそう言ってたけど。」
「カッコいいのか、そうじゃないのか、よく分かんねえな。そもそもそれ、名前なの?」
「うん。彼も名字はないから。」
「そっか。あっそうだ、何で名字がある奴と、ないやつがいるんだっけ?」
「・・・イサってさ、もしかして。」
「うん?」
「いや、喫茶店で話そう。」
先伸ばしされました。すみません(笑)
次の喫茶店にて、名字のこともその他もろもろ(って何だっけ(笑)) もシキが話してくれる予定です!
あっあと、前回のイサと生徒会長の話で、イサと生徒会長が離れてるのに、紙見えるの?っていうのと、クマの雄叫びがイサには聞こえたのか、という問題を発生させたこと、すみません。紙は・・・視力がいいということで(笑)
どうか、よろしくお願いします(笑)
グダグタですがお付き合い下さい(笑)(>_<)
読んでいただき、ありがとうございます!