8 夜とお店とクマ
んん・・・
頭いてぇな・・・あっ、そいやぁさっきシーテに顎でグリグリされたんだっけか。
ゆっくりと目を開けると・・・って!?何で俺、寝てたんだ!?
「あっ起きたんですね。」
後ろから、優しく声をかけられる。
何か聞いたことあんなあ、この声。
「イサくん?大丈夫ですか?」
「ん?あぁ、うん大丈夫だよ。」
と言いながら首だけ回して後ろを見ると、・・・首しか回んないんだけど!?
「何これ!?」
「イサくん?」
「首しか回んねえぞ!?」
「あぁ、それは結んであるから。」
「何に!?」
「イスに。」
「何が!?」
「イサくんの手足が。」
下を向くと手足が縄跳びの縄みたいな、っていうか明らかに縄跳びの縄だろこれ!!とにかく俺の手足が椅子に縛られている!!
「イサくん落ち着いて。」
「いや、落ち着けないだろ!この状況で!!・・・ってあれ?生徒会長さん?」
さっきから俺に話しかけていたのは、あの入学式で一度だけ見た、生徒会長さんだった。
眼鏡をかけていて、いかにも賢そうな見た目の生徒会長さん。
けどなんか、
「あんさ、生徒会長さん?」
「はい?」
「なんか、遠くありません?」
「何がでしょう。」
「うーんと、俺と、生徒会長さんの距離?」
「あぁ。」
「・・・ん?」
「はい。」
「あと、俺首しか回んないんで、とりあえず俺の前に来てもらっていいですか?」
「はい。」
「はい。」と答えた生徒会長さんは、壁に沿って、壁のギリギリを辿りながら、俺の前方の一番遠い所に座った。
「・・・うん、いやだから、遠くありません?なんか。」
「そっそんなことないですよ。」
「いやいや!」
「いやいや。」
何なの!?この会話!!
「うーんと、じゃあ生徒会長さん。」
「はい。」
「今さらな質問いいかな。」
「はいどうぞ。」
「ここさ、どこ?」
そう、ここどこ!!?何で生徒会長さんがここにいるの?とか、生徒会長さんとの距離がどうして遠いの?とか、そんなことよりだなあ!?ここ!!そう、そのここってどこ!?
「イサくん、それは…」
「うん。」
「言えない!」
バッと生徒会長さんが顔を赤くして顔を隠す。・・・はっ!?何で!?何を恥ずかしがってるの!?
「うっうん?あの、恥ずかしがるとこじゃないよね?」
「ひゃぁ。」
「ひゃぁ」って何!?ひゃぁって!!何かチョー恥ずかしそうだなおい!!俺まで恥ずかしくなってきたぞおい!?
「あの、生徒会長さんって男だよな?」
「…はい。」
「随分とかわいい声出すんだね。」
いやいや、そうじゃねえだろ俺!何言ってる!?
「じゃなくて!ここ、どこ…ってん?」
俺の足に何かがコツリと当たった。下を向くと、・・・これは、ラムネの瓶?
「もしかしてここ、ラム姉・・・じゃなくてラム先生のお店?」
「!?どうして分かったんですか!?あっ…!」
「やっぱそうか。」
「…言えません。」
「今さら!?もう今さら過ぎだろ!!逆にここまできて誤魔化すのもすごいな!!」
「…そうですよ。」
「何で不貞腐れるの!?」
何か訳が分からんけど、とにかくここはラム先生の店だっていうのは分かった。で、あとは、
「今何時?」
「どういうフリですか?それ。」
「ん!?」
どういうフリデスカ?どういうイミデスカ?どういうフリ?フリ!?どういうフリがあるのそれ!?
「うっうーん、普通に聞いてるんだけど。」
「あぁなんだ。」
あぁなんだ!?
「八時です。」
「…あぁ八時か。ん?ってか何で俺ここにいんの?あと、生徒会長さんも。」
「たまたまW組の前を通りかかったら、」
「うん。」
「教室でイサくんが一人倒れてて。」
「うん。」
あいつら、倒れてる俺のこと放置したのね・・・。
「大変だと思って、」
「うん。」
「急いでここに運んだんです。」
「誰が?」
「僕が。」
「へぇぇえ。」
生徒会長さんの腕を見る。うん、男の割に細い腕・・・俺この人に運ばれたの?
「うん、も一個聞いていいかな。」
「はい。」
「何で保健室じゃなかったんだ?」
「・・・確かに。なんか、自然の成り行きで。」
自然の成り行きで、保健室じゃないんだ。へぇぇ。う~ん?俺がおかしいのかな?最近の子はこんなもんなのかな?
人が倒れてたらタクシー呼んじゃうのかな?
「で、イサくんこれ、途中で通り過ぎた保健室の先生から渡された手紙です。」
「おう、ありがとう。・・・うん?」
通り過ぎた?いや、通り過ぎないで!?そこに俺を運んでよ!!何故通り過ぎたんだ!?
まあ、もう言っても仕方ないけどさあ。
手足を縛られている俺のために生徒会長さんが、俺の方に手紙を開いて見せる。
「これ、ラム先生からじゃん。」
「そうなんですか?」
「うん。」
「読んでください。」
「えーと、イサくんへ。さっきはごめんね。まあそれはいいとして、・・・いいのかよ。えっと?今日のイサくんの言葉とても胸にきました。これから私も担任として、毎日ちゃんと、Wクラスに行こうと思います。」
「おぉ。イサくんすごいですね、ラム先生の気持ちを変えるなんて。」
「まあ、毎日来るなら良かったよ。で、えっと?ということで、イサくんに私のお店をお願いしようと思います。好きに商ってもらっていいのでよろしくね。ラムより。・・・はい?」
「なるほどぉ。」
「いや待てよ?そしたら俺は学校に行けなくないか?」
「ダメですよイサくん。クマの世話しに行かないと。」
「うん、そうだけどさ。」
「つまり、イサくんはこれから、朝に学校に行って、クマの世話をして、その後すぐお店を開いて、お昼辺りに学校に行ってクマの世話をして、またお店に戻って、夕方お店を閉めて、夜またクマの世話をして、帰宅する、ってことじゃないですか?」
「うん、サラッとスケジュールしてくれるのは嬉しいけど、生徒会長さん、それだと俺、学校にクマの世話しかしに行ってないよな?」
「本当だ。まあ、頑張りましょうね。」
「いや、何で頑張る方向になってんの!?拒否権は!?」
「あるんですか?」
「ないんですか!?」
「まあまあ。」
と言いながら生徒会長さんが寄ってきて、俺の手足の縄をほどいた。
「何でほどいたの?」
「手紙読んだからです。」
「そのために縛られてたの?」
「はい。」
「で、あの手紙の内容知ってたからここに運んだんだ?」
「えっ!?てっ手紙は読んでません!!」
「ウソ言え。」
「ほっ本当です!」
「本当のこと言ってごらん?ラム先生には言わねえでやるから。な?」
「・・・そうです。」
「はあ。もう、マジでこの学校なんなんだよ。」
「イサくん。」
「もう俺何でこの学校選んだんだっけ?」
「イサくん。」
「Wクラスとか意味わかんねえし。」
「イサくん。」
「もう本当、」
「イサくん!」
「何!?」
「クマの雄叫びが学校から聞こえます。」
「クマの雄叫び!?」
「きっとお腹を空かせてるんだと。」
「あっそうか俺が世話人なんだっけ?」
「そうですよ。」
「はいはい、行ってきますよ。まだ学校空いてるんだろ?」
「はい、大丈夫です。」
はあ、クマの雄叫びが学校から聞こえるって・・・普通に七不思議だぞ・・・。
まあもう驚かねえけどさぁ。
皆さん気づいた?いや気づかなくてもいいんだけどさ。
そもそも皆さんって誰だろ。俺までおかしくなってきたかな。
それよりもそう!!
まだ一日目、終わってないんだぜ!?
本当何なのこの世界!!
名字がない理由を書いてなかったです。
すみません(笑)
次話に書く予定ですので、本当すみません。
次話もよろしくお願いします!