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学園Wの俺ら  作者: 祭狐
16/16

16. その頃のマツカとオーマ

混乱を防ぐために、先に説明させていただきます。

今回の一人称はマツカ(女の子)です。

イサではありません。

「失礼しました~」


がチャッと校長室の扉を閉めて、一度ふうっと息を吐く。


「そういうことですかぁ~」


今、校長と話していた内容を振り返って、うんうんとうなずく。

参加できなかった分の授業は後で内容をまとめたプリントなどをラム先生に渡してくれるし、遅刻にもしないと言っていたことにも満足して、廊下で軽くスキップする。


「良かったです~これでまた一時間分どこかでサボれちゃいますね~」


この学校の校長は白いヒゲと眉毛が特徴的だ。白いのにキリッとしていてあごヒゲもなぜか強そうな印象を受ける。そしていつも軽く叱られる。私はいつも「師匠先生」と呼んでいるが、「校長と呼びなさい。」となぜか毎回怒られるのが不思議でしょうがない。


「そういえば放課後にイサとカフェに行こうと思っていたんですよね~まだ教室にいますかね~」


スキップをしたおかげでいつもより校長室から教室までの距離が少し近く感じる。今度はWクラスとかかれた扉を開けようとする。


「・・・つは・・・」

「・・・?」


ガラッと音がする前に手を止めて、教室からかすかに聞こえてきた声に耳を澄ませる。


「あいつは・・・いやまさか・・・でもどこか似ていた気がするんだよな・・・」

「・・・オーマですね・・・ん~・・・なるほどぉ~」


心の中で「いち、に、さんっ」と数えて、一気に扉を開ける。教室の中にはオーマが一人席に座って、ぼうっと黒板の方を見つめていた。


「ただいま戻りました~」

「おう、マツカ。さっきイサが心配してたぞー」

「そうですか~少し師匠先生に呼び出されてしまっていたので~」

「そうか。元気だったか?師匠は。」

「元気でしたよ~。でも、オーマの方が元気がないみたいです~」

「はっ?」

「違いましたか~?」

「・・・」


オーマは一瞬驚いた顔をして、またすぐにヘラリと笑った。


「・・・なあマツカ。」

「はい~」

「なんで今年、イサが俺らのクラスに入って来たのか気になることねえか?」

「ん~そんなに気にならないですよ~?それよりも早くもっと仲良くなりたいです~」

「ああ、それは俺も思うけどよぉ。」

「オーマはどうして気になってるんですか~?」

「・・・いやなんつーか・・・なんでだろうな。ただ何となく・・・」

「罪悪感、ですか?」


オーマの顔が一瞬強張る。


「・・・それどういう意味だ?」

「いえいえ、ただ何となく思いついたことを言ってみただけですよ~。でも確かに私もたまにあります~」

「何がだ?」

「イサを見てると、あれもしてあげたいこれも一緒にやりたいって~・・・ん~こういうのなんて言うんですかね~ぼせいほんの~?だからオーマもきっとそういう感じなんじゃないですか~?」

「俺もイサに母性本能が働いてるってことか?」

「そうですよきっと~。だってイサって子供みたいじゃないですか~、素直だし~何だかんだがんばったりやらされたり~」

「ははっ、確かにな。あいつすぐ怒るしな。」

「たしかに~」

「じゃあ私がお母さんで、オーマはお父さんですかね~。」

「うわぁ言うことの聞かねえ息子だなぁ。」

「でもイサ良い子ですよ~」

「そうだな。」

「ところでそのイサはどこに行ったんですか~?」

「ああ、イサはAクラスに行きやがったよ。ミチ=カケルって野郎に呼ばれてさ。俺がまだ話してるってのにあいつ。」

「そうなんですか~、オーマはそれが悔しかったんですねぇ~。」

「はぁ?悔しいとかじゃねえよ。誰がミチ=カケルとかいうクソ野郎を俺よりも優先しやがったことが気に食わねえだけだ。」

「そうですか~オーマはカケルパンのこと嫌いですもんね~」

「でも、お前のそのカケルパンって呼び方を嫌がってる時の奴を見るとせーせーするぜ。」

「あ~どうして嫌がるんですかね~、カケルパンってかわいくないですか~?」

「微妙だろ。」

「そうですかね~?」

「あーよし帰るかぁ。マツカはどうすんだ?」

「私はイサとカフェに行きたいのでもう少しここで待ちます~きっとクーちゃんの世話をしに帰ってくるくるでしょうから~」

「そうか、じゃあ俺は先に帰るな。」

「はい~」


オーマがカバンを持って席を立ち、ふと扉の前で立ち止まる。


「マツカ。」

「はい~」

「サンキューな。」

「なんですか急に~」

「いや、なんかよ・・・まあいいや、じゃあな。」

「はい~」


オーマもいなくなり、暇になった私は檻の中に視線を移した。大きな檻の中ではクーちゃんがこちらに背を向けて寝転がっていた。


「お腹が空いているんですかね~。早くイサに帰ってきてもらいたいですよね~クーちゃん。」


話しかけてもピクリとも動かず、私の方にはちっとも興味を示してくれない。少しさびしくなって、カフェで何を頼もうかなと考える。


「やっぱり放課後は甘いものが飲みたくなります~クーちゃんもそう思いませんか~?」


もふもふした背中を眺めながら、ふとさっきの師匠先生(校長)の言葉を思い出す。


『知らない方がいいこともあるんだぞ、マツカ。今言ったことをクラスのみんなに伝えるかどうかはお前次第だが、このまま今を楽しむ方が大切なのかもしれないな・・・』


「今を楽しむ、ですか~」


師匠先生はまだ何かを隠していたみたいだった。でも聞いて怒られるのも嫌だし、黙っておいた。


「うーんどうしますかね~、ねぇク~ちゃん?」


もふもふの背中は結局、私の方を向いてくれることは一度もなかった。












この話で初めてイサ以外の人物を一人称にしました。

なんでしょう・・・なんだか不思議な気持ちでした(笑)

正直自信ないですが、開いて読んでくださった皆様ありがとうございます。

あと学校サボるのはよくないですし、放課後に甘いものかは・・・人それぞれだと思います(笑)


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