15.放課後に衝突する奴ら
あの後何とか授業の教室を見つけ出し、授業遅刻を免れた俺は教室に戻るなりオーマの肩をつかんだ。
「おいオーマ。」
「あ?どうしたイサ、やっとコーヒーゼリーの件について謝る気にでもなっ・・・」
「そんな冗談言ってる場合じゃねえだろ。それよりずっとマツカの姿が見えないけど、どこに行ったか知らないか?」
「あのなあ、俺は冗談じゃなくて真剣に言ってるんだぞ・・・」
「オーマ。」
「わーってるよ、マツカの話だろ?知らねえけど、よくあるから大丈夫だよ。」
「よくある?」
「ああ。」
「じゃあ別に何かあったわけじゃないんだな?」
「当たり前だろ、もう少ししたら帰ってくるだろうぜ。・・・なんだぁ?イサくんはマツカちゃんのことがずいぶん気になってるみたいだなぁ?」
オーマが顔を近づけてニヤニヤと顔を傾けて俺を見下す。・・・ムカつく顔してんなぁ、コイツ。
「はっ?オーマ顔キモイぞ。別にそんなんじゃねえよ。」
「そんなってどんなですかねぇ?」
「あーもうめんどくせえ。なんでもないならいいんだよ。女の子だから少し心配になっただけだよ。」
「へえ?じゃあ俺が女だったらコーヒーゼリーのこともすんなり謝って・・・っておい!イサ!どこ行くんだよ!俺の話は無視かよ!?」
「Aクラスに行くんだよ!あっそうだ、シーテとシキが帰ってきたら、俺一人で行くけど大丈夫だって伝えといてくれ!」
一気にまくし立ててから、ペンと紙を手に持って教室を出ようと扉を開けたところでふと疑問に思った。・・・妙に後ろが静かだ。いつもならのオーマならば、まだしつこく文句を言ってくるだろうと思っていたのだが・・・予想に反して教室の中はシンと静まり返っている。Aクラスに集合する時間が迫っているので気にせずに早く行ってしまいたいところだが、何だか心配になって扉を閉めるついで一度振り返ると・・・
「・・・オーマ、どうした?何をそんなに驚いた顔してるんだよ?」
「・・・おっおう、わかったぜ。」
「どうした、返答がおかしいぞ?」
「いや、・・・なあイサ、」
「なに?」
「もしかしてお前って・・・」
「なんだよ?なんか言いたいことがあるなら早く言えよ。」
「・・・いや、なんでもねえ。」
「なんだ?もう行くぞ。」
「おうおう行っちまえ!コーヒーゼリーのこと謝んなかったの後で絶対後悔させてやるからな!」
「・・・」
ピシャリと扉を強めに閉めて、Aクラスに向かう廊下を走る。
なんだよあいつ!コーヒーゼリー、コーヒーゼリーってあいつの頭にはそれしかねえのか!?そのおかげですげえ時間が無駄になったじゃねえか!・・・やっぱりオーマは最悪だ!
「っと、通り過ぎるところだった。」
オーマへの怒りのせいで過ぎかけたAクラスの扉の前に立って、手を少し挙げてからノックをした方がいいんだろうかと考える。
「いやでもした方が印象が良いよな。Wクラスも悪いクラスじゃねえって思ってもらわないと。」
一度深呼吸をしてから、扉の真ん中のあたりをコンコンコンと三度ノックする。
「はーい。」
と扉の内側から声がして、少し経ってからガラガラと扉が優しく開かれた。
「おー、イサくん!来てくれたんですね。」
「ミチ=カケル副会長・・・ですよね?今日の授業の教室のこと、ありがとうございました。」
「わあ、名前覚えてくれたんですね、嬉しいです!でもカケルでいいですよ。」
「あっはい、カケル副会長。」
「イサくん、カ・ケ・ルでいいんですよ?」
なっなんかこええ・・・
「カッカケル・・・」
「ええ、それで結構です。僕はイサくんともっと仲良くなりたいので、フレンドリーにいきましょう?」
「はっはい・・・」
「では、お待たせしました、イベントについての話を始めましょうか。イサくんはこの席に座ってください。」
「あっはい。」
副会長のカケルく・・・カケルに勧められるがままに教室の中央の一番前の席に座った。目の前にはカケルの笑顔。さっそく他の席に移りたいと思ったが、俺の後から入ってきた他のクラスの代表者たちが次々に席を埋めていくおかげでそれは阻止されてしまった。
「おや、ところでイサくん。」
「はい。」
「Wクラスの他のメンバーは誰もついてこなかったんですね。」
「そう、ですね。」
実はクラスでもめ事があって結局俺がみんな置いてきてしまった・・・と素直に言ったら、カケルはどういう反応をするだろうかなどと恐ろしく思いながら、とりあえずうなずく。
「なんだ、無駄な心配をして色々用意をしてしまいました。」
「用意・・・?」
「ああ、なんでもありません。イサくんだけならスムーズに済みそうでよかったってことですよ。」
「そっそうですか、それならよかったですははっ。」
一瞬カケルの背後に何か輝いたものが見えた気がしたんだけど!?・・・何をしようとしてたんだ!?この人はっ!こぇぇえよ!!
「失礼しまーす。おっみなさんおそろいですね。」
とそこに入ってきたのは、Bクラスの生徒会長ヒマザメくんだった。彼は強くなさそうな眼差しで俺を見つめた後、軽く咳ばらいをしてから教卓の前に立った。
「では、イベントについて説明を始めます。まず体育祭についてですが、後ほど学年別の種目やクラスごとに参加できる種目についてのプリントを配布しますので、そちらを参考にしてください。今日来ていただいたクラス代表の方々を中心に種目決めを行ってもらい、また次に招集をかけた時に決定した内容を我々に報告してください。では次に、体育祭前に行われるイベントについてですが・・・Wクラス代表イサくん?」
「・・・はい?」
「ここまでは理解できましたか?」
「はい!?」
「えっ理解できませんでしたか?」
「いやいやできましたよ!?いやなんで俺に確認を求めたんですか!?」
「Wクラスは言葉が通じないことがあると副会長のミチ=カケルが言っていたので、心配になって。」
「言葉通じないって・・・そういう意味じゃないですよね!?本当に言葉が通じないなら今ここにいませんからね!?俺!!」
「えっでもカケルが・・・」
「ごめんなさい、会長。通じないのは他のメンバーの話で、イサくんは別ですよ。」
「あっそうなんですか。では、遠慮なく次の説明に移らせていただきます。」
いや他のメンバーも言葉通じますから!!っていうか言葉通じる通じないってそういう意味じゃないですよね!?どんだけ馬鹿にされてるんだ俺らのクラスは!?
「では体育祭前のイベントのことなのですが、合宿を開催します。これは今年から始まったことなので、まだ手探り状態なのですが、ぜひ全員参加でお願いします。また、合宿と言いましても学校に泊まるだけなので、宿泊費などはかかりません。」
「あの、合宿って何をするんですか?」
「イサくん、良い質問です。この合宿では体育祭に向けた準備を行います。この合宿中はグラウンドや体育館などが使い放題になり、各種目の練習に使ってもらいます。基本はこの間先生は学校にいませんが、体育の先生などが必要な場合は事前に申し出てください。他に質問はありますか?とくにイサくん?」
「だからなんで俺なんですか!?」
楽しそうに笑う会長の横で、副会長のカケルが「それでは今日は解散です、ありがとうございました。」と号令をかける。
「ありがとう、カケル。」
「いえ、会長。楽しそうですね。」
「イサくんのこと初めは少し怖い人なのかと思っていたんだけど、そうでもないなって。」
「そうでもないってなんだよ!?」
「あははっ」
「もういいですよ。じゃあ俺も帰るから。」
「イサくん怒ってます?」
「怒ってないよ。じゃあな、ヒマザメくん。」
馬鹿にしやがってと思いながらAクラスを出ると、いきなり横から手をつかまれる。
「うおっ!?なっだれだ・・・っ!!」
「よ」という文字が口から出るよりも先に頭に衝撃が走り、しゃがみこむ。
「おいイサって言ったな、お前誰だ。」
痛みに顔を上げられずにいると、頭上から男の低い声が聞こえ・・・ん?この声どっかで聞いたことあるような・・・ってそれよりも今のこいつの言葉の意味わかんねえよ!?「イサって言ったな、お前誰だ。」ってだからイサだよ!お前が今俺の名前自分で言ってただろうが!?
「いってえ・・・誰だよお前。」
「俺が聞いてるんだ、イサ。」
「だから意味が分からねえって・・・うわっ!?」
少し痛みが治まったところで顔をあげると、なんとそこに立っていたのはこの間カフェで見かけた不良だった。
「おっおまえ・・・なんでここに・・・あとなんで俺の名前知って・・・」
「おいイサだよなお前。」
「あっああ、そうだけど。」
「お前、だれ?」
「だから・・・何言ってるんだよあんた・・・」
「ちょっと来い。」
「はあっ!?っちょ!?」
また腕をつかまれ、グイグイ引っ張られる。
「おいまて!お前こそ誰なんだってっ・・・」
腕を振りほどこうとした瞬間すごい形相でにらまれ、思わず息を飲んだ。そしてそのスキに腕をさっきよりも強くつかまれ、半分ひきずるように連れていかれた・・・・・・おっおれ殺されるのかぁ!?
だっだれか助けてくれぇぇぇ・・・!!
イサが去った後、会長が「ヒマザメって誰のこと?」と疑問を口にしたことにイサが気づくのはもう少し後の話。
本当にお久しぶりです。祭狐です。『W学園の俺ら』本当に本当に久しぶりに更新させていただきました。
読んでくださった方、ありがとうございます。本当にうれしいです。
また再開していこうと考えていますが、キャラを間違えてしまうことがあるかもしれません。
その時はアホだと思って読んでやってください。
ダメだし、意見感想など、いただけたら本当に助かります。
ですが読んでくださっただけでも本当にうれしいです。二回目ですね(笑)
これからもよろしくお願いします。
祭狐