14.Aクラスの奴ら
Aクラスの話をした途端に、珍しく焦り始めたオーマの引っ張られるように教室に戻ってきた俺らは今、何故か五人で机を向かい合わせて、 黙りこくっている。
「なあ・・・」
と俺は何度か声をかけているが、誰も答えてくれない・・・
「なあ、みんなどうしたんだよ?次の授業に行かなくていいのか?」
・・・誰か答えてくれよ。何でもいいからさあ・・・
「・・・イサ。」
居心地の悪さをアピールしようとしたところでやっと、オーマが口を開いた。
「何だよ、オーマ。」
「さっきお前、Aクラスの連中に会ったって言ってたな。」
「ああ、そうだけど。」
「あいつらの考えてることはよく分からねえ・・・だからお前も気をつけた方がいいぞ。特にミチ=カケル、あいつは危険人物だ。」
「何でだよ?確かにお前のことは嫌ってるみたいだったけど、だからって別に悪い人には見えなかったぞ。それに嫌われてるのはオーマがすぐ勝手なことするからで、」
「そんなことはどうでもいいんだよ、あいつが俺を嫌ってるとか。そっそんなことぜぇぇぇんぜん気にしてねえんだよ!ペッペッ!」
ガタッとオーマが椅子を倒す。・・・・・・いやめちゃくちゃ気にしてるじゃねえか!動揺しすぎだぞ!?ペッペッって何だよ!?ペッペッって!
「だが、あいつが陰でこそこそイサに寄ってきたのは気に食わねえ。あいつらは何を企んでやがる・・・いつもAクラスの連中が出てくると俺たちはロクなことにならねえ。だいたいミチ=カケルって何だよ、変な名前なんだよ。名字があるから何だってんだよ、俺はオーマって名前だけで満足してるんだよ。それに、」
「なあオーマ、一回落ち着けよ。お前がどれだけ副会長のことが嫌いなのかは分かったからさ。」
「イサ。私から質問してもいいか?」
オーマがぶつぶつ何かを言っている横で、シーテがスッと白くてかわいらしい手をあげる。
「あっああ。」
「そもそもイサはどうしてAクラスに連れて行かれたんだ?」
「その前にシーテ、俺連れて行かれたって言ったっけ?」
「あの副会長のことだ、たまたま通りかかったイサを見つけて、強引に教室に連れていったってところだろう。さらに生徒の授業遅刻を、生徒会副会長の特権を乱用して取り消すなんてことは、あいつなら当たり前のようにやるだろうな。」
「・・・そういうもんなのか。」
「当たっていたか?」
「かなり。」
「だろうな。で、イサ。私の質問に答えてくれ。どうしてイサは、Aクラスに連れて行かれたんだ?」
「あそうだ、なんかな、今度体育祭の前にイベントがあるみたいなんだよ。」
「イベント?」
「詳しくは今日の放課後に説明されるみたいなんだけどな、とりあえずそのことをクラスのメンバーに伝えてくれって言われたんだ。」
「誰に?」
「副会長に。」
「ふうん。」
と言ったっきり、シーテは何かを考えるようにあごに手をあててまた黙ってしまった。彼女の長い髪がさらりと耳から滑り落ちて顔が隠れてしまった後も、その彼女のかわいい姿に見とれてしまう。
シーテはやっぱりかわいい・・・かわい・・・
「イサ、イサ。」
と、隣からシキが俺の肩を叩いてきた。
「なんだよ。」
「なんで俺たちに直接言いに来なかったのか、副会長は何か言ってなかったか?」
「うーん、なんか俺がこのクラスの救世主・・・とか、何か訳の分からないこと言ってたけど。でもシキ、お前だってこのクラスの中では真面目な方だろ?だから俺じゃなくても、シキが代表になったって問題ないと思ったんだけど・・・シキ?」
「・・・ああ、ごめん。考え事をしてた。えっと、とりあえず放課後にはどこに呼ばれた?」
「Aクラスだけど。」
「そうか。なら俺もついて行くよ。」
「えっ、シキもついてきてくれんの?それは心強いな。オーマとは違ってさ。」
「あ?俺がなんだ、イサァ?」
「あーいや、何でもねーわ。」
「ちょっと待て!」
と、突然シーテが立ち上がり、シキの前に立って、腰に手を置いた。その姿もまたかわいらしいが、彼女の眉間には素晴らしいシワが寄っている。シキは表情を変えずにシーテを見上げ、
「なに?」
「ちょっと待てと、言っている。」
「うん、聞いてた。」
「イサには私がついていく。」
「どうして?」
「どうしてもだ。シキ、お前は頭はそこそこ良いが、人と話すのはそんなに好きではないだろう。」
「うん、好きじゃない。」
あ、否定しないのな・・・
「だったら私がついていく方がいいだろう。」
「いや、シーテはすぐ人ともめるでしょ?」
「なっ・・・そんなことはない!」
「そうかな、よくもめてるよね?」
「ばっばかな!わっわっわたしは・・・そっそのっ!つまりだな!」
「うん。」
「私がイサについていくと言ったら、ついていくんだ!」
「だから、なんで?」
「ちょっちょっとお二人さん?」
「なんだイサ!」
「いっいや、俺は誰がついてきてくれても嬉しいけどな?オーマ以外なら。ただ、Aクラスの奴らと喧嘩するなら一人でいいよ。教室の場所も分かってるし。」
「いや、それはだめだイサ!私はAクラスの恐ろしさを知っている。あいつらはただの金持ちなのではなく、暗黒の闇なのだ!だからイサが近づけば・・・」
「ごめんシーテ、何が言いたいのか全然分からねえけど、とりあえずシキと揉めるのはやめてくれ。とりあえず放課後にこのクラスの誰かが行けばいいんだ。オーマ以外の。」
「なあ、イサ。」
「なんだよ?オーマ。」
「何でそんなに俺を仲間外れみたいに言うんだよ!?」
「あーそれは・・・」
・・・だって、オーマだし?俺、副会長さんにオーマが勝手な行動をする問題児って言われた時、すんなり納得しかけたもんな。
「とりあえず、次の授業に行こうぜ?次は何の授業なんだよ?」
と、オーマに聞くと・・・
「知らねーよ、ばぁか!俺を仲間外れにしたこと絶対後悔させてやる!コーヒーゼリーの恨みもまだ果たしていないことだしなぁ!」
「・・・」
あーもうめんどくせぇ、コイツ。しかも何だよ!?コーヒーゼリーの恨みって!だいぶ前過ぎる話だろ!?
「なあ、頼むよ、あっシーテ。俺、今日の時間割知らないんだよ。このクラスって授業の順番がいつも適当だろ?なあ、シキ。」
「知らん!自分で考えろ!」
時間割を自分で考えるって何だよ!?
「イサ、俺は今いじけているから、教えられそうにない。」
「シキまで!?」
いや、いじけてる奴が自分で「いじけてる」って説明するの初めて聞いたぞ!?しかも相変わらず無表情だから全然いじけてるように見えねえよ!あーもう・・・・・・あれ?
・・・そういえば・・・マツカは?そういえばさっきからいない気がする・・・
「なあみんな・・・」
と顔を上げると、教室の中にはもう誰もいなかった。
いやみんな次の授業分かってるんじゃねえか!教えろよ!?
おいおい、これじゃまた俺だけ遅刻じゃねえか・・・勘弁してくれよ・・・
「はあぁー」
俺たちのクラスは教科書も渡されていないため、授業ごとに誰かに見せてもらったり、借りたりする。だから今から何の授業であっても、道具は書くもの以外には必要がないのだ。あとは教室さえ分かれば・・・
教室を出る前に、いつも教室でマツカが座っている席を見ると、ちゃんとカバンが置いてあった。
音楽室まではいたよな・・・だとしたら・・・先に次の教室に行ったとか?
教室の後ろの檻ではクマのクーが、背を向けて寝ている。
クーの寝息も、今日はやけに静かだ。
「クマって意外と静かに寝るんだな。」
そんなことを言いながら、また教室の扉を閉めて、俺はこの不思議な学校の廊下を当てもなく歩き始めた。
こんにちは、祭狐です。
今回はそうですね、書いていてうん・・・何書いてるのか分からなくなりました(笑)
最後のクマの部分はいるの?と思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です。そこだけは!ちゃんと考えてます(笑)
次回もよろしくお願いします。
祭狐