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夢シリーズ

山小屋の神様

作者: 岸野果絵

 夢の中で、私は誰かと登山していた。頂上の付近に山小屋みたいなのがあった。私達はそこに泊まることにした。


 小屋の中は薄暗かった。畳が敷いてあった。古びてはいたが掃除が行き届いているのかかび臭くもなく小奇麗だった。

 私たちは襖をあけて一番奥の部屋に入った。一番奥の奥にちょっと大きい袋戸棚がある。殺風景な部屋の中で唯一目立つ存在だった。気になったので開けてみた。と、そこには神棚が入っていた。

 そのまま戸を閉めてしまうと、なんだかバチでもあたりそうな気がしたので、私たちはとりあえずお祈りすることにした。


 二礼して柏手をうって手を合わせていると、なんとなく光った気がした。恐る恐る顔を上げると扉の隙間から光が漏れていた。神棚の扉がゆっくりと開くところだった。私たちは呆然としばらくながめていた。

 扉が開ききると、奥から大黒さんみたいな恰好をした小太りの小さな神様が出てきた。

 神様は神棚から畳の上に飛び降りた。すると人間の大きさになった。


「よくきたのぉ。人間がくるのは・・・そう・・50年ぶりくらいじゃ」

 神様は満面の笑みを浮かべながら、立ち尽くす私たちに坐るよう促した。そして上機嫌でなにやらいそいそと支度をしだした。みずから緋毛氈ひもうせんを敷き、金屏風やら座布団やらをセットしていた。一通り支度が終わると、私たちの前にちょこんと座った。


「こうみえても神格は高いんじゃぞ」

扇を口元にもっていった。

「だから高いところにおるのじゃ」

そういうと、ひょひょひょひょという感じの笑い声をあげた。

 私たちはどう反応してよいかわからず、固まっていた。


「うちの宮司はここのところ、とんと姿を見せぬのじゃが、もてなすものくらいはあるぞ」

神様は袋の中からこぶし大の蝋燭をだしてきて、私たちの前に1個ずつ置いた。そして不思議な鼻歌を歌いながら縦長の急須をだしてきた。

「もっと時間をおくのがワシ好みなんじゃが」

 そういいながら煎茶を小さな茶器に入れて私達の前に置いた。

 お茶はわかったが、蝋燭はいったいなんなんだかわからないので、私たちは固まっていた。


「食わぬのか?なかなか美味じゃぞ」

どうやら神様は蝋燭を食べろと言っている様子だった。

 ここで断ると、非常にヤバい気がした。

 私は意を決して蝋燭にかぶりついた。食べた瞬間は固いような気がしたが、次の瞬間、とても柔らかく、爽やかな甘さが口の中に広がった。


 神様の方を見ると、神様はにこにこと大きく頷いていた。私ははお茶も飲んでみた。やさしい甘さが口の中に広がった。素朴でなんか懐かしいような甘さだった。

 神様は満足そうにうなずいていた。

「しばらく逗留するがよいぞ」

といわれたところで目が覚めた。

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