二章 『現実』
朝だ。太陽が昇ってる。
7月の朝、暑いな。
今日は木曜日、学校ある日だ。
「暇だし、もう行くかな」サンサンと降り注ぐ紫外線を浴びながらいつもの道を
歩く。
紙ヒコーキのリーダーになったんだよな俺。
あまり実感のない感覚があり昨日から何度も思い返している。
リーダーってなんなんだろ。
学校に着くのはあっというまだった。
「かおーるっ。」
いきなり後ろから抱きつきをくらった。
「なんだよ。鈴か」
鈴。幼馴染みで紙ヒコーキのメンバー。
「なんだよは無いよ。可愛い女の子が抱きついたんだから少しは焦ってよ」
始めの方は焦ったけどこう毎日やられると慣れる。
「バーカ。毎日やってんだぞ。さすがに慣れるは」
鈴って案外軽いな。などと特にどうでもいいことを考えていると
「なら、接吻する?」 などと鈴が急に言ってきた。
「ブゥーー」
驚いた。今飲んでたオレンジジュース吐いちゃたよ。まじで侮れねぇなコイツ
「冗談だよな」
「どっちでもいいよ」
本気なのか冗談なのか分からねぇよ。
向こうから一人の少女が走ってきた。
いや、訂正しよう。携帯の少女が走ってきたのだ。
「鈴ちゃん。酷いですよ。一人でとっとと行っちゃうんだから」
携帯には疲れというものは無いのか?
「ゴメン。神菜。馨見つけたからつい」
人と携帯が話してる所って普通の会話にしか聞こえないんだよね。
「あれ?今日太一は?」
太一というのは人ではなく俺の携帯だ。
だんだんややこしくなる。「いるけど。」
と言いながら携帯を取りだし電源をつける。
携帯がつき、俺はあるボタンを押す。
すると、携帯から人が出てくる。
「なんだ?馨」
こいつが太一。
見た目の年齢は俺と同じ。完璧なる普通だ・・・
「適当に出しただけだ」
ハァ。携帯には見えないよなこいつらって
「おはよう。太一」
「太一さん。おはようございます」
これだけ見てると普通の会話でしかない。
この世界は壊れている。
どこか狂っている。
どうでもいい話だが俺はこの名のない都市を出たことがない。
出れないのだ。
この名のない都市は誰かの権力で隔離されている。
他の世界はどうなっているのかはわからないが、噂によるともう滅んでいるとか
実際の所、誰もわからない。しかしこの都市は成長しすぎている。
不思議だらけの都市だ。
「馨。馨!授業始まるよ。教室行かないと」
鈴が話かけてきて我に帰り教室へと歩いて行く。
・・・鈴と二人きりで。
――――――――――――いったいどれだけの時間がたったのだろうか。
朝だか昼だか夜なのかもわからない。
目の前が真っ白で、頭の中にいろんな言葉が入ってくる。
今更だか、私は誰なのだろうか。歳はいくつで男なのか女なのか。
そもそも私は人なのか。
わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。
わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。わからない。
頭がグッチャグッチャだ。今でもドンドン言葉が入ってくる。
目の前は真っ暗になっていた。
――――――――――――「ふんふんふ。ふ~ん。」鼻唄をしながら歩いている
男性とその隣で歩いている男性。
その様子は友達同士にしか見えない。
「マスター。何か良いことでもありましたか?」
普通に歩いている男性が言い出した。
「ん?あぁ、ちょっとね。リーダーからの報告があってね。新しいゲームの開始
だと。」
言ってる意味がわからないのだか、隣にいる男性にはわかるらしい。
「だからネカフェに向かっているのですか。どこのチームですか?」
ネカフェとはネットカフェの事だろう。
「紙ヒコーキ。ヨワヨワしい名前だけど、リーダーは最強の敵だってさ。でも今
のチームにいる人数は8人だってさ。この前は400人はいたのにね」
チーム。敵。まるでRPGのような言葉が出てくる。「ではマスターは人数を増
やしに行くのですね。」
「そのとうり。そっちの方が楽しそうだしね。まぁ、リーダー命令なんだけど」
悪人。そう言えそうなくらい、悪巧みをしている顔で町中を歩いていた。
そうネカフェへと・・・・