家来、初仕事 4
「怖い夢でも見たのかい?」
咲希は自分の悲鳴に驚いて目を覚ました。中条と勉強しながら居眠りしていたのだと気づく。
「大悟が死んじゃったの……」
「佐藤君が?」
中条は穏やかな表情のまま、咲希の瞳をのぞき込む。
咲希は肩にかけられたタオルケットを脱ぎ捨て、大悟の部屋に走った。
「あらあらお嬢様ったら」
メイドがクスクスと笑う光景を通りすぎ、大悟の部屋に飛び込む。
「よう、どうしたんだ? おまえも今起きたのか?」
大悟はベッドで上体を起こし、胸の辺りをさすっていた。
「馬鹿! 心配したじゃないのよ!」
咲希はベッドに飛び乗り、大悟のシャツをまくり上げる。
「お、おいっ! ……ずいぶんと積極的な」
大悟の身体には傷一つ無いようだった。話す口調からして、痛みがひどいということもないのだろう。
「心配して損した」
大悟は何を思ったか咲希の手を握って振り返り、熱烈に抱き締めてベッドに組み敷いた。唇を尖らせてタコのような顔をしながら咲希の唇に迫る。
「ちょ、ちょっと! なにするのよ! 放しなさいよ変態!」
「えっ、違うの? ご主人様がご所望ならと……?」
大悟はあっさり引き下がり、きょとんとした顔で咲希を見下ろしている。
「やだ、覚えてないの?」
「あ、そうか。夢の中で何かあったんだな? でも、今回はなんだか覚えてないんだ。初仕事なのに、ごめん」
咲希は、かいつまんで夢の中での出来事を語った。
「なるほどな、夢の中で死んでも実際に死ぬわけじゃないのか」
いつの間にかベッドの脇に立っていた中条が続ける。
「夢の中で死を体験するような恐怖に出会うと、その記憶をシャットダウンするということなのかもしれませんね。いわば安全装置のようなものかと」
お嬢様と二人でベッドにいる場面を目撃され、ギョッとした顔の大悟。
「失礼しました。お嬢様が取り乱されていたようなので。お邪魔いたしました」
中条は入って来たときと同様、物音も立てずに出ていった。




