家来、初仕事 2
「ちょっと、大丈夫?」
夢の中で目を覚ましかけた大悟は、後頭部に魅惑的な柔らかさを感じていた。膝枕だ、ご主人様の細っこいのにムッチリした太ももに膝枕されているのだ、と、鼓動を速くしながらも、タヌキ寝入りを決めこんだ。この幸せを一秒でも長くと企んでいると、
「ほら、仕事よ。起きなさい!」
両方のほっぺをいやというほどつねられた。それでもまだ寝たふりを続ける大悟。しまいには膝枕がはずれて胸ぐらをつかまれ、『目の覚めるような』往復ビンタを頂戴する。
「って~な、何すんだよ!」
大悟が起き上がると咲希は胸を撫で下ろした。
「もう、死んじゃったかと思ったじゃないの。中条さんに限って失敗なんかしないとは思ったけど……」
「なんで俺が中条さんに当て身くらったの知ってるんだ?」
咲希はきょとんとして小首をかしげる。
「あら、ずいぶんと荒っぽいのね。『大悟が眠れないときには手伝ってあげてね』とは言ったけど。きっと他の手段を用意してる暇が無かったんだわ」
キャハハと可愛く笑っているが、この屋敷の人達は基本的に容赦無いのだと悟る大悟。ちなみに、採用されてからこちら、咲希は大悟のことを『大悟』と呼び捨てるようになっていた。
「で、城を建てるんだっけ?」
「そうよ。図面を用意したから早速取りかかってちょうだい。わたしはまだ勉強があるから」
と、更地には場違いな学習机に向かい、問題集の続きに取り組む咲希だった。
「それって、こっちでやっても意味あるのか? リアルでやらないと提出できないだろ」
咲希は顔も上げずに答える。
「もう宿題は全部済んでるけど、こっちでやると理解が深まる気がするのよ」
鼻歌まじりにスラスラと問題を解いていく咲希。楽しそうに勉強する人間がこの世に存在したなんてと軽くショックを受けながらも、大悟は仕事に取りかかった。
図面といっても詳細に描かれた城の絵だった。図面を左手に持ち、右手のひらを前方にかかげて主要なパーツを発生させていく。大悟はこれまで創作活動に意欲を持って取り組んだことなどない。慣れないながらもそうやって物作りをしてみると楽しくなって、どんどん夢中になった。時折、勉強に夢中な咲希の横顔を盗み見る。着々と問題集のページを進み、もう半分ぐらい終わっているようだ。なんとなく咲希に負けてはいられないという気がして、大悟は創作のペースを速める。咲希が顔を上げたときには、もう城が出来上がってましたという光景をイメージしてニヤニヤする。




