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家来、大いに戦う 10

 別荘には二人組のガードマンが到着していた。ようやく味方が増えたことでいくらか安心する女達と、トイレから出られない酔っぱらい。

「なるほど、大蛇大社が住み着いた土地周辺には謎の集団精神病……だそうです」

 唯依がノートパソコンで調べた結果だった。薬物や人には聞こえない周波数の音声で洗脳されているんじゃないか、というような憶測が流れていたが、真相は不明ということだ。

「例のバクとそのドラゴンと、やっぱり関係があるのかしら」

 咲希が問うともなしに言うと、

「そういえば……ドラゴンがバクを食べてました。なんだかバクのほうから進んで食べられにいってたようにも。私達には見向きもしなかったし」

 真っ青な顔の大悟が合流してきて、咲希がかいつまんで説明した。大悟は確かめたいことがあると、唯依のパソコンで検索を続行した。

「やっぱりか。あのバクの正体は信者だ。『御柱様』だの『龍神様』だのとわめきながら食われにいってたからな。見てみろ」

 大蛇大社では『大龍神命おおたつがみのみこと』を名乗る教祖のことを『御柱様』と呼ぶ。龍神の化身で、人の姿をした神、『現人神あらひとがみ』なのだという。教祖の本名は山田龍造やまだりゅうぞう、五十三歳。元々は神々の頂点に君臨していた龍神こと八岐大蛇やまたのおろちが神々の謀反に遭い、秩序を失った天界はいまだ混沌の状態で、龍神を復活させなければこの世は滅亡する、という教義らしい。

「ありがちな終末思想だな。おそらくあのドラゴンの正体は教祖だろう。信者は夢の中で教祖に食われることで精神エネルギーかなにかを提供して、ドラゴンに力を与えているんだと思う」

「よりによってバクの姿をしているってことは、バク自身もどこかからエネルギーを集めているんじゃないかしら?」

 一同は顔を見合わせた。

「それが昼間行った町で起こったことの真相か。バクに食われると精神を侵されるのかもしれないな。いや、精神力を吸われて無気力になるってとこか」

 美夜が浮かない顔をしている。

「まさか、そのドラゴンを倒しにいくなんて言わないでしょうね? たった四人で一教団の企みをどうこうできるはずがないし、危険すぎますわ」

 大悟は美夜の肩に手を置いて、優しい目をした。

「怖かったら美夜さんは行かなくていいよ。咲希も唯依も、怖かったら俺に任せればいい」

「かっこつけてんじゃないわよ。あんた一人で行ったら、お酒でも振る舞われて、油断したところをパクっと食べられておしまいじゃないの」

 と、咲希は憎まれ口を叩く。

「先輩なら、綺麗なお姉さんに誘惑されて、そこをパクッと食べられるんじゃないかしら?」

 唯依も便乗した。つまりは一緒に行くと言いたいのだろう。

「だめですよ、あなた方にもしものことがあったら……」

「美夜さんの言いたいことはわかるけど、このまま教団を野放しにしたら『集団精神病』がますます広がるかもしれないわ。それに、ドラゴンを復活させて、もっと悪いことをするかもしれないじゃない。今のところ、あいつらと戦えそうな人なんて、わたし達しかいないでしょ?」

 美夜はプーっとふくれっ面になって言った。

「私だって、こんな弱虫で卑怯な大人みたいなことは言いたくないんですよ。ただ、私しか大人がいないからと思って、保護者っぽい役回りを一応やってみただけで……」

 あ~あ、私も青春したいわ~、と、投げやりに言ったあとで微笑んだ。

「じゃあ、青春しようか。くよくよ考えたって始まらないだろ? 『不安に思うから不安な現実がやってくる』って、咲希の親父さんも書いてたしな」

「そうよ、『願って確信したことは実現する』のよ。わたしはみんなと自分自身を信じてる。絶対出来るわ」

 なんとなく肩を組んで円陣を作り、『おー!』と、声を上げる。

「やだ、先輩ったらお酒くさ~い」

「あんた、寝ながらゲーってして、わたしにかけたら承知しないからね?」

「え、今晩は一緒に寝てもいいの?」

 大悟は咲希に抱きついて、ほっぺを吸う。咲希は「酔っぱらい」と迷惑そうな顔で言うが、振りほどく気はないようだ。

「『いいこと』してて遅刻とかは無しですよ? でも、どうしてもなさるなら『対策』を……」

 美夜がからかうと、

「だ、だ、だから、そそ、そんなことしないってば!」

 咲希は慌てて大悟を突き飛ばした。唯依がすかさず受け取って言う。

「あら、咲希ちゃんがしないなら、是非私と。冒険ものに濡れ場はつきものでしょう? ね、セ・ン・パ・イ」

 酔った勢いか唯依のお尻を撫でまわしていた大悟だったが、咲希の凝視で凍りつき、

「唯依が相手じゃあ、なんだか犯罪チックな絵面になりそうだな」

 と、冗談めかして言うのだった。

「もう、先輩の意地悪!」

 決戦を控えながらもお気楽な四人であった。

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