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お嬢様の天敵 7

 そして、答案が返される日。

 この日まで唯依は毎日小早川邸に通って、お泊まりを続けていた。咲希は「全滅だわ~」と、泣きそうな顔をしながら、唯依と二人で出掛けていったのだった。

 大悟は娘の受験の合否でも待つかのようにジリジリしていた。

 答案を受け取ったら終了の短い一日を終えて二人は帰ってきた。どういうわけか、唯依はとぼとぼと、咲希は会心の笑顔だった。

「結果はどうだった?」

 咲希は全教科満点で文句なしの学年トップ。唯依は二位。いつもどおりの結果だったようだ。

「しかし、手応え最悪だったんじゃないのか?」

「無心の勝利ね」

 咲希にしても、パーフェクトは初めての経験だったそうだ。いつも時間が余って余計な見直しをついついやってしまい、その結果いくつかの誤答をしてしまう。いわゆる『蛇足』だったらしい。今回は時間がギリギリで、その悪癖が出る暇もなかった。それが幸いしたようだ。

 唯依は唯依なりに自己ベストの点数だった。全教科中で、たったの一問間違えただけだったのだ。それでも、唇を噛みしめて、今にも泣き出しそうな顔をしている。

「おまえも頑張ったじゃん。ご褒美に甘いものでもおごるから、二人とも着替えてこいよ」

 大悟はヨシヨシと、敗者の頭を撫でた。すると、唯依はポツリポツリと涙をこぼした。

「……私だって……頑張ったのに……どうして……咲希ちゃんばっかりずるいです」

 大悟はやれやれとため息をつく。

「どちらかといえば、ズルしたのは唯依のほうだろ? お互いに頑張って勝負がついたんだから、文句を言うのは失礼ってもんだ。次にまた頑張れ」

 肩をポンと叩いたのがスイッチだったかのように、唯依は「あーん」と声を出して泣いた。

「もう、しょうがない子ね……」

 咲希は唯依を抱き締めて泣き止むのを待った。差し出したティッシュで鼻をかませて、優しく目をのぞき込んだ。

「芳野もパパの本を読んだのよね? でも、肝心のところを理解してなかったんだわ」

 願望達成のために誰かを押しのけようとするのがそもそもの間違い。相手を意識すればするほど相手の存在を大きく感じて、とてもかなわないと思い込んでしまう。ただ単純にパーフェクトなテスト結果を望めば良かったのだ。咲希はそう解説した。

 唯依は「そっか~」と、笑顔を取り戻した。根は素直な子らしい。

「それにしても、満点と一問だけ間違いって凄いよな。俺からしたらどっちも神レベルだ」

 咲希が「まあね」と自慢げに言うと、唯依も「まあね」と続けた。勝ち負けを差し引いてみれば、自分だって大したものなんだと気付いたのだろう。

「……ねえ、咲希ちゃん、よかったら私のお友達になってもらえませんか?」

 唯依は怖ず怖ずと願い出た。

「わたし達ってとっくに『大親友』なんでしょ? 誰かさんが言いふらしてたのが本心だったなら」

 咲希はクスクス笑う。そして、唯依の手を引いて自室に連れていく。

「ほら、着替えて大悟にたかるわよ」

 もっとお嬢様らしい言い回しはできないものかと苦笑いの大悟。近場で人気のスイーツ店を検索する。ドーナツ屋さんでもいいかな? と、悪戯小僧のような笑みを浮かべるのだった。

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