家来、出会う
その日、佐藤大悟は昼寝をしていた。
このところおかしな夢を見る。
その夢の中では自由に動き回ることができた。夢を見ているという実感がありながら、思うがままに歩き回り、ときには空を飛び、可愛い女の子とデートすることだってできた。
十九歳でフリーター、現在は求職中で生活するのがやっとな大悟だったから、そんな夢にはまり込むのが唯一の楽しみだった。
この日も当然、大悟はデート相手を探していた。現実においては中学校時代に彼女がいて以来デートなどしたことがなかったが、こうして明晰夢と呼ばれる夢を見るようになってからは毎晩、毎昼寝がデート続きであった。あくまでも夢の中では。
ここは大悟が住む地方都市の住宅街。夢の中では空を飛んだり、世界中のどこにでもワープしたりが可能だったが、スタート地点は眠った場所と一致した。世界中の美女達とデートを重ねてきた大悟だが、そろそろ日本人が恋しくなっていた。日本人の女の子がやっぱり一番可愛いやと。
自宅近くの公園でブランコに座りながらガールハントの計画を練る大悟。そういえば気になっていた女の子がいた。二つ下の後輩で、高校を出るまでは毎日その子を眺めるために学校に通っていたようなものだった。小早川咲希という子で、今は十七歳の高校二年生のはずだ。
「よし、待ってろよ、小早川」
大悟は飲みかけていた缶コーラを一気に飲み干し、空き缶をくずかごに向けて放る。放物線を描いた空き缶はくずかごに入るまでの間にクシャクシャに潰れた。夢の中では超能力さえ使うことができたのだ。