『悪夢の異世界召喚』…第2章・腐敗した国ウクア
ウクア王国の城内では、戦勝記念の宴が盛大に開かれていた。煌びやかな装飾が施された大広間には、高級な酒と山海の珍味が並び、貴族たちの高笑いが響き渡る。
上座には、傲慢な笑みを浮かべた国王ケリブ、その隣には宝石で身を飾った王妃カミール、そして彼らの息子である王子デシルが座っている。彼らの周りには、宰相ガブドや将軍クリ―ハスをはじめとする高位の貴族たちが集まり、権力と富に溺れた会話に花を咲かせていた。
「いやはや、まさかこれほどあっさりと魔族を討ち滅ぼせるとはな!ギロの召喚魔法は、まさに神の御業よ!」
「ありがとうございます、王よ…」
ケリブが高らかに宣言し、宮廷魔術師ギロに視線を向ける。ギロは深々と頭を下げた。
「ええ、我々の兵士を一人も失うことなく、魔族の脅威を排除できたのですから、これほどの朗報はございません」
宰相ガブドが、口元に薄い笑みを浮かべて追従する。
「まさしく!あの異世界人共も、我々の思惑通りに動いてくれたものだ。強力な魔法武具を与えれば、誰でも強くなれる。しかも、持てば催眠状態に陥り、恐怖も痛みも感じなくなる優れもの。おかげで兵士の犠牲を最小限に抑えられた」
将軍クリ―ハスが、下品な笑い声を上げる。彼らが地球から人々を呼び出した理由は、自国の兵士の命を惜しむあまり、異世界人を使い捨ての戦力として利用するためだった。あまりにも身勝手で腐りきった理由だが、その場にいる貴族たちは誰も疑問を呈さなかった。
「他の国々からは、やり方が非道過ぎると喚き立てられておりますが、魔族との戦いにこれだけの成果を出したのですから、もはや彼らも何も言えまい。召喚魔法という術を確立し、自国の人間を一人も死なせることなく勝利を収めたのだ。我々の偉業は歴史に名を刻むであろう」
カミールが、優雅な仕草で酒杯を傾けながら言った。
「そうですね。あの召喚された者どもも、我々の言葉を鵜呑みにして、喜んで戦場に赴いてくれましたからな。本当に愚かな連中だ。まさか、戦勝の宴で毒を盛られるとは思いもよらなかっただろう」
デシルが鼻で笑う。
「しかし、中には勘のいい連中もいたようだな。数名、我々の手から逃げ出したようだが……」
クリ―ハスが、忌々しそうに呟いた。
「ふん、気取られたのは不覚ではあったな。勘の良さは褒めてやるが、仮にこの広大なウクアの島から脱出できたとしても、元の世界へ帰れるわけではない。未開の地で野垂れ死ぬのが関の山だろう」
ケリブは、冷めた目でそう言った。
「魔族との戦いに勝利した今、我々の立場はもう揺るがない。今後は、新たに召喚した奴隷を使って戦後復興を完遂すれば、未だにうるさい諸国も完全に黙るしかなかろう。我々の王国は、さらに盤石なものとなるのだ!」
王の言葉に、貴族たちは我先にと歓声を上げた。彼らの脳裏には、自分たちの更なる繁栄と、他国を支配する未来が描かれている。その中心には、地球から召喚された無数の人々が、奴隷として酷使される姿があった。
「…………」
だが、召喚を任されているギロの表情にはどこか複雑な色が浮かんでいる。彼は召喚魔法を乱用することに、内心では不安を感じていた…。




