『ある廃寺で願い事をした男の子の話』…第3章・修学旅行
季節は秋。学校では修学旅行が始まっていた。
行き先は京都。歴史ある寺社を巡り、班行動で自由時間も設けられる三泊四日の旅だ。
生徒達は期待と興奮に満ちていたが、昭弘にとってはいつもとあまり変わらない時間だった。
2日目の夜になっても、彼はクラスメイトと打ち解けることなく、ホテルで一人静かに本を読んでいた。椿は引率教師として生徒達の様子を見回りながらも、つい昭弘のことが気になって仕方なかった。廊下で彼のいる部屋の前を通りかかった時、小さく溜息を吐くと、「真田君、大丈夫かな…」と呟いた。
一方、山川はその夜、欲望を抑えきれずに卑劣な行動に出ていた。トイレの個室にこもり、息を荒げながらスマートフォンを手に持つ。彼が手にしていたのは、女風呂に仕掛けた隠しカメラで盗撮した椿の映像だった。画面に映る彼女の無防備な姿を見ながら、彼は興奮していた。
「高峰の奴、こんな身体しててよく教師なんてやってられるな…モデルとかの仕事の方がよっぽど儲かるだろうに勿体ないこった」
彼は歪んだ笑みを浮かべて呟いた。この修学旅行の間に、彼はこの動画をネタに椿を――言う通りにしないとこの動画をネットにばら撒くとか言って――脅迫する計画を立てていたのだ。山川にとって、これは絶好の機会だった。
深夜が近づく中、山川は計画を実行に移すべく動き出した。椿が一人でロビーのソファに座り、行程表を確認しているのを見つけ、一瞬いやらしい笑みを浮かべた後、軽い足取りで彼女に近づいた。
「高峰先生、ちょっと話があるんだけどさ」
「山川先生?何かご用ですか?」
椿は少し驚いた様子で尋ねた。山川はわざとらしく真剣な顔を作った。
「いや、生徒のことなんだよ。ちょっと二人で話したいんだけど、あっちの休憩スペースでいいかな?」
彼は適当な理由をつけて彼女を誘導した。
椿は怪訝そうな顔をしつつも「分かりました」と立ち上がり、彼の後に続いた。ホテルのロビー脇にある小さな休憩スペースに着くと、山川は周囲に誰もいないことを確認し、ニヤリと笑ってポケットからスマホを取り出した。「実はさ、これを見てほしいんだ」と低い声で切り出す。彼が画面を椿に向けようとしその瞬間――
「キャアアアッ!!」という鋭い声が廊下から聞こえ、二人は驚いて顔を見合わせた。直後、耳をつんざくような銃撃音が連続で鳴り響いた――バン!バン!バン!窓ガラスが割れる音と、慌てふためく者達の叫び声が混じり合い、静かな夜が一瞬にして混乱に飲み込まれた。椿は目を丸くして「何!?」と叫び、山川もスマホを落としそうになり、「何だよ、何があったんだ!?」と慌てている。計画も欲望も吹き飛び、ただ呆然と立ち尽くしていた。




