第八十八話:集結
帝都の中心に聳え立つ巨大な城。九百年以上帝国の象徴としてあり続ける世界最大の歴史的建造物である。実際は城跡の上に復元されたものであり、その地下には千年以上前の壁画や古代の魔道具が眠っている。
「状況を確認しろ!」
「被害状況はどうなっている!」
「敵の数は!?」
城内は混乱状態だ。様々な声や人が行き交い情報が錯乱する。二名の大公爵が窓から燃え盛る帝都を眺めている。各都市には都市内への転移を無効化する結界が常に張られている。都市の規模によってその効力は異なるが、帝都の結界はヴァルムント帝国内で最も堅牢である。
「まさか本当に仕掛けてくるとはね」
「守護者が約五十機、当然惰性の十翼も来ているだろう。それと同時に、ナグルヴェイン峡谷の魔物共が一斉に動き始めた」
ヴォルカニス公爵とグラディオーク公爵は目の前に広がる光景に動揺するが、すぐに現実を受け入れる。瞬襲戦争以降、このような状況を可能性の一つとして考えていたからだ。彼らの軍の殆どはナグルヴェイン峡谷に配備しており援軍としては期待できない。
「魔王と協力関係だった、とは考えにくいけど、さてどうしようかしら。敵の数は少ないけど一般兵士じゃ歯が立たないでしょうし」
「幸い帝都には騎士長達が滞在している。彼らと黄金の騎士団に任せるほかあるまい」
守護者を相手できる者は限られている。個々が騎士長と同等かそれ以上の戦闘力を誇る魔導兵器だ。だが、彼にとっては所詮鉄屑に過ぎない。
「私が行こう」
後ろから声がかかる。その声色から感じられる圧倒的威厳は、二名の公爵の中で信頼へと変わる。
「アルヴェスト伯爵‥‥‥いえ今は騎士長と呼んだ方がいいかしら」
ヴァルムント帝国が誇る最強の騎士にして現代の黄金の騎士団団長。ヴォルカニス公爵が最も信頼を置く騎士でもある。
「私が部下を率いて守護者の殲滅を行う。他の騎士長には皇帝の護衛を任せたい」
彼ほどの実力を持つ者だからこそ出来る提案だ。誰もその提案に異を唱えようとは思わなかった。これらを踏まえ、ヴォルカニス公爵は彼の考えていることを予測する。
「狙いは皇帝、ということね」
しかし、その言葉にアルヴェスト伯爵が頷くことはなかった。彼は公爵達へ背を向け来た道を戻る。
「‥‥‥用心に越したことは無い。敵がゼルファリス連邦国だけとは限らぬからな」
◇◇◇◇◇◇◇
帝都の出現した複数の光の柱、その中から漆黒の服を纏った者達が姿を現す。
「帝都か、だいぶ街並みが変わったな」
「やはり魔王達も来ていますね。狙いはこの国の皇帝でしょうか」
アニスとラケナリエは爆発音や悲鳴が上がる帝都を見回す。至る所から黒い煙が立ち上り、炎が都市を包み込もうとしている。
「我々の任務は三つ。皇帝の保護、レイナ・キリシマの殺害、そして、リリアの回収だ」
ミルトニアスは遠くに聳え立つ城を眺めている。見た目こそ変わったが、自分にとって切っても切れない場所である。千年以上前の記憶が彼の中に蘇る。
「一つ目は本当に必要か? 私はあの一族が嫌いなんだ」
アニスは大きく溜息を吐く。
「我々に仕事を与えなくて本当に良いのですか? 私は一向に構いませんが、そこで項垂れている方が大人しくしているとは」
ラケナリエはアニスの方へ視線を向けると、それに気づいたアニスは自信満々に笑顔でピースをする。
「出番が来たら伝えよう。面白いものが見れるぞ」
「‥‥‥へぇ」
ミルトニアスの言葉にアニスは大人しく待つことを決めた。あのミルトニアスが面白いという言葉を使ったのだ、彼女の中に期待感が募る。その間にラケナリエは何処かへと足を進める。
「どこへ行く?」
ミルトニアスから声がかかる。
「旧友に会いに行くだけです。すぐ戻りますよ」
彼は後ろ姿のまま手を振り、その場を後にした。
キャラクター紹介④
<<スウィーピア・ラドミール>>
性別:女
種族:人間
誕生日:2/14
身長:166cm
体重:55kg
称号:なし
スキル:なし
好きなもの:料理、可愛いもの全般、人の役に立つこと、面白い人
嫌いなもの:なし
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オルドニア王国出身の両親を持ち、家庭では多少宗教色があるが、本人は熱心では無い。非常に上品で貴族のような所作が目立つ。それとは裏腹に面白いものが好きでテレビではお笑い番組をよく視聴する。学園入学時、最初に出来た友人がリリアであり親友でもある。




