第七十九話:終着点
新章!
全体のストーリー的には折り返し地点のつもりです。
<<DATE:ヴァルムント歴-998年>>
<<LOCATION:ヴァルムント帝国-帝都ヴァルグラート>>
<<WEATHER:晴れ>>
帝都ヴァルグラート、歴史ある巨大な王城を中心に広がる世界最大の人口を誇る大都市である。中心にはレトロチックな古い建物が並び、今では貴族の住まいや騎士団の本部として使用されている。郊外には高層ビルが立ち並び、その眼下には根の様に道路が張り巡らされている。
都市最大の大通り、数多の高級店が立ち並ぶその場所に三人の人物が横並びで歩いている。
「平日だってのに人が多いな、呑まれたら一瞬で逸れるぞ」
背は平均的で黒い髪のあまり冴えない男。左腰には使い古された剣を携え、他の二人を扇動する様に先頭を歩いている。
<<ゼニウム・アルヴェスト>>
レベル:2251
「ちょっと歩くの速いって! いたいけな女の子に歩幅合わせてよ! ね〜ニグっち手繋いで〜」
学園にいた頃から全く背が伸びず、他人を揶揄うことを生きがいとする女。
<<ルビリス・リンドベリ>>
レベル:1824
「ふざけんな、俺らはもう成人してんだよ。そんなに繋ぎてぇならゼニウムに頼め」
目つきと口は悪いが高身長で顔立ちも良く、仲間思いの男。腰にはゼニウム同様に古びた剣を携えている。
<<ニグラス・イヴァノフ>>
レベル:2308
「ニグっちが良いのー! ゼニーとか絶対ヤダ、手洗ってなさそうだし。うわっ! 想像しただけで蕁麻疹が!」
「後でお前の顔を手でプレスしてやるわ」
といった会話をしつつ、三人は大通りを進んでいく。
テルグラス焦土から脱出した後、三人を乗せた陸上戦艦は帝都へと向かった。騎士長のキブシルが死亡したことにより、残された騎士団員は次の所属先が決まるまで帝都の治安維持を命じられた。その後はレイナが特別教師として、三人を鍛え上げた。ニグラスはレベルが二千を超えた為、黄金の騎士団へのスカウトが来たが、ゼニウムには来なかった為そのスカウトを蹴った。騎士長であるゼニウムの祖父が手回ししたことは分かりきっていた。
「にしても借金が完済できて良かったな、ベルトリオンから帰ってきてすぐに徴兵されたもんだから普通に存在を忘れてたぞ」
「レイナ先生には本当に頭上がらないよ」
ナグルヴェイン峡谷での借金はレイナ先生が代わりに全て完済してくれた。本人曰く、お金は使い切れないほど有り余っているらしい。申し訳ない気もしたけどご厚意に甘えさせて貰った。
そうこうしているうちに目的の場所へと着いた。
「着いたぞ」
一等地に堂々と聳え立つ建物。壁一面のガラスが太陽光を反射しより輝いて見える。建物の中に入ると、分厚いガラスケースに覆われた様々な武器が視界全体を埋め尽くす。三人が通っていたガルツェンの武器屋とは桁違いに広く、大型のスーパーの様だった。
今回訪れた理由は勿論新しい剣を買うため。流石帝都なだけあって物価が非常に高いが、その分高性能の武器が揃っている。借金が無くなり、一年間給料の一部を貯金してきたおかげでようやく手が届く様になったのだ。
「ガルツェン以来か〜あの時は四人ではしゃいでたよね」
ルビリスが少し遠くを見つめた様に喋る。
テルグラス焦土の戦いを最後にリリアの姿を見ていない。レイナ先生が面倒を見ている様だが、精神状態が不安定という理由で面会すら出来ない。最初はすぐに会えると思ったが、なんだかんだ一年以上経ってしまっている。勿論無理矢理にでも合おうとしたことはあった。だが、普段優しいレイナ先生から明確な殺意を向けられた。次の日に謝罪してくれたけど、もう一度会いに行く気にはなれなかった。だからといって納得したわけではない。俺、ニグラス、ルビリス、そしてリリア。この四人で色々な苦難を乗り越えてきた。この四人で居るのが当たり前だったのだ。こうしてリリアが居ない生活を送っているとパズルのピースが足りない様な、そんな感覚がする。
「そういえばガルツェンの武器屋、名前はえっと‥‥‥アルティメットなんちゃら‥‥‥の店長さんは今何してるんだろうね」
「ゼルファリス連邦国に行くって言ってたな、ふざけた名前の店だったけど武器の修理の腕は一流だった」
店長さんの名前は確か、サクヤ・ツキモリ。変わった名前だけど恐らくかなりの実力者だ。しかも称号持ち、あの時は俺のレベルも低くてあまり見えなかったけど‥‥‥称号‥‥‥まさかね。
◇◇◇◇◇◇◇
三人が武器屋を出ると、外はすっかり日が暮れていた。建物や街頭に明かりが灯り、車のライトが無数の蛍の様に動いているのが見えた。少し歩くと都市を一望できる小さな公園の様な場所を通りかかる。そこから見える星空の様な美しい帝都の景観を前にルビリスから心の内に思い留めていた願望が零れ落ちる。
「‥‥‥いつか四人でこの景色を見に来たいな」
ルビリスだけじゃない。また四人で集まれることをゼニウムとニグラスも願っている。
「うん、絶対見に来よう」
ふと空を見上げると、四つの流れ星がまるで互いを追いかけ合う様に夜空を駆け抜け、淡い光の軌道を重ねて消えていった。




