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Deceptive Love  作者: 緋色
第四章:テルグラス焦土編
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第七十話:回収

キリが悪かったので二話分の文章量!


 帰還命令が出てから俺達は最短距離で戦艦の停泊地を目指している。既に二時間以上走り続けているが、物資が入った重いリュックを背負っているせいで余計に疲労が蓄積する。


 「もぉぉ無理ぃぃ! 足が折れちゃぅう! ニグッち〜私の荷物も持ってぇ!」


 「ふざけんな! しかもお前、こっそり自分の荷物を俺のリュックに移しただろ!」


 「そんなことしてないですぅ! そうやってすぐ私を悪者に仕立て上げるのやめて!」


 「じゃあ何でお前のリュックはそんな凹んでんだよ!」


 一目で分かるが、ルビリスは既に限界が近いようだ。ニグラスも疲労が目立つと思ったらあのバカのせいでリュックの重量が傘増してるからだ。と言いつつも、走りっぱなしだと俺の足も悲鳴を上げ始めている。他の騎士の人達からも荒い呼吸が聞こえてくる。


 「ゼニウムも大丈夫?」


 横を走るリリアが俺のことを気にかける。疲労のせいで全く気が付かなかったがリリアは呼吸が荒いどころか汗ひとつかいていない。


 「何でそんな余裕そうなんだよ」


 「ふふん♪ こういう時にも私のスキルが輝くんだよね!」


 ずっっるぅ! こいつ反転スキルで荷物を軽くしてんのか、ていうかそんなこともできるのかよ! 俺のスキルは最近全く出番ないし、ていうか敵のレベルが高すぎてほとんど情報見えないし、さらに言えば、別に俺の天啓の瞳(オラクル・アイ)がなくても鑑定用魔道具とかで変えが効くから余計経つ背がない。


 先頭を走るサルヴィオさんはまだまだ余裕そうだが、何度も振り向いてはこちらの様子を確認している。


 「そこの路地を曲がったら一度休息を取る! もう少し頑張れ!」


 その言葉を待ってました! 皆も安堵したようで顔の強張りが引いていく。




 路地に入り、重い荷物をようやく肩から下ろすことができた。体が浮くような感覚がする。


 「五分だ、それまで各自水を飲むなり息を整えろ。すぐにまた移動する」


 五分‥‥‥流石にハードすぎない? いつもの優しいサルヴィオさんはどこかへ行ってしまったようだ。俺は血流を良くするために肩を回したり、座って足を伸ばしたりした。建物の壁に寄り掛かっていると、ニグラス達も自然と俺の横に腰を下ろした。


 「ふぅ、結局、何処行っても落ちつかねぇな」


 「それな。ていうかロベリア騎士長は大丈夫かな」


 「問題ないでしょ。キブシル騎士長も向かったし」


 「あー肩も足も全部痛い! もうやだ走りたくなーい!」


 なんだかんだ、こうして四人で他愛もない話をしている時が一番落ち着く気がする。今思えば、この数年で本当に色んなことがあったな。嬉しいことも楽しいことも、逆に辛いことも悲しいことも、全部この四人で乗り越えてきた。


 ‥‥‥お母さんの目には、今の自分はどう映っているかな。


 


 和やかな空気、過去の思い出に浸っていると、その時は突然訪れた。


 俺達の耳に聞き慣れない音が響いた。何かが裂かれたような音。その次に硬い鎧が地面に叩きつけられる音がした。視線を路地の奥へと向ける。軽快な足音が暗闇の奥から近づいてくる。


 「え、嘘、さっきまで何も感じなかったのに‥‥‥!」


 ルビリスが少し後退りニグラスの後ろへと隠れる。他の騎士達も異変に気付いた、いや気付かないはずがない。全く隠す気のない膨大な魔力を持つ何かが、何の前触れもなく俺達のすぐ近くに現れたのだ。


 顔に何か温かい液体が飛んできたかと感じた時には、俺達の前方に立っていた二人の騎士の胴体が真っ二つになった。騎士は自身の体に何が起きたか理解出来ずに、悲鳴をあげることなくそのまま絶命した。上半身が硬い地面へとズレ落ち、叩きつけられた鎧が音を上げる。


 先程の和やかな空気は一瞬で消え去り、冷たい風が路地を通り抜ける。そして、薄暗く点滅する街灯がその姿を映し出した。


 「え‥‥‥」


 リリアが思わず声を漏らした。


 それは人の姿をしていた。予想に反し、鋭い角や鋼鉄の鱗もなく、黒い軍服のような服と帽子で身を包み、一切の模様がない漆黒の巨大な斧を軽々と肩に掛けている。暗闇の中で靡く金色の髪をしたショートヘアの女性。誰の目にも人間に映った。


 その人間離れした魔力量を除いて‥‥‥


 「ほう、これは驚いた。この滅びた都市に一体何の用だ?」


 普通の声だった。悍ましくもなく、不快でもない。だがその声を聞いた瞬間全身の身の毛がよ立つ。全身から汗が滲み、手足が震える。


 あれは‥‥‥やばい‥‥‥!


 <<???>>

 レベル:???

 称号:???


 スキルを使ってみたが、やっぱり何も見えない。おそらくレベル差が非常に大きい。何の情報もなしにここで戦うのは危険だ。


 「気をつけて、あいつ、何も見」


 その時、顔に息がかかった。先程まで二十メートルほど離れていた女性が目の前に立っていた。俺の目を興味深そうに覗いている。誰も今の動きを目で追えなかった。瞬きした時には既にそこに居たのだ。恐怖で体が全く動かない。


 「懐かしいな。その目、オルディギウス公爵の」


 速い!? オルディギウス? 誰だ? ていうか、俺のスキルを知ってる!?


 突然の出来事で、頭の中の情報が処理しきれない。


 「剣術(ケイロス)月華一閃(げっかいっせん)!」


 サルヴィオさんが目の前の女性に斬りかかる。だが鋭い斬撃は空を斬り、女性は一瞬で先程の位置まで戻っていた。


 「撤退だ! 荷物は捨ててけ!」


 号令がかかると同時に俺達は全力で走り出した。


 「ん? 何故逃げる? ふむ、時間が差し迫っている。やむを得ないな‥‥‥」


 女性が指を鳴らすと、その背後から複数の人影が飛び出す。フードを身に纏った者達がビルの壁や細いフェンスの上を風のように走ってくる。


 その腕からワイヤーが放たれ騎士の肩に命中すると、そのまま後方へと引っ張られる。


 「た、助けてく」


 悲鳴も虚しく、刃を持った風に巻き込まれたように一瞬で斬り刻まれる。


 「はぁはぁ、くそ! 急に何なんだよ!」


 「ルビリス! 魔法で足止めできる!?」


 「りょ、了解! パラライズ!」


 ニグラスに背負われながら魔法を唱える。淡い光の膜が相手を包み込むが、止まる気配を見せない。この間にも次第に距離が縮まる。一人、また一人と敵に呑まれていく。


 「き、効かない!?」


 「もう追いつかれる! リリア、迎え撃つぞ!」


 「え、あ、うん!」


 俺は剣を抜き、直ぐ真後ろを走る追跡者に対し剣を振う。攻撃は防がれたが、不意をつけたおかげで後方へと弾き飛ばすことができた。その衝撃でフードが捲れ、素顔が露わになる。


 「ろ、ロボット!?」


 黒い重厚な鉄の顔。目の部分は赤く光り、直ぐ体制を立て直して斬りかかってくる。


 その攻防を合図に他の騎士達も一斉に交戦を始める。白兵戦が繰り広げられるが、敵の俊敏さに翻弄され、次々に味方が倒れていく。俺とルビリスとニグラスは互いに背中を合わせ死角を無くす。


 「何だこいつら! ちょこまかと動き回りやがって!」


 「魔法が全然当たらないんですけど!」


 俺は辺り一帯を見回す。明らかにこっちが劣勢、サルヴィオさんが良い感じに立ち回ってくれてるおかげでなんとか持ち堪えてる。後は‥‥‥リリア!?


 リリアは呆然と戦場の真ん中で立ちすくんでいた。双剣を握っているものの、何処か挙動不審であり、普段の彼女ではないのが明白だった。


 あいつ何やってんだ! すぐに向かいたいけど、今ここを離れたら今度は二人を危険に晒すことになる。くそ、こんな時に! 


 「大丈夫かリリア!」


 サルヴィオはリリアの異変に気付きすぐに駆け寄る。リリアの背中側に立ち、彼女の死角をカバーする。


 「大丈夫だ、お前は優秀だろ。騎士長達が来るまで持ち堪えられる。背中は任せたぞ!」


 「‥‥‥」


 リリアは返事をしなかった。


 味方が倒れていくにつれ、次第に敵の勢いが激しくなる。


 サルヴィオさんがいればリリアも大丈夫なはずだ。あの二人なら心配はない。今はこっちに集中しないと、一瞬でも気を抜けば陣形が崩壊して終わりだ!


 ゼニウムには、自分達が持ち堪えられるという確信があった。ニグラスやルビリスも同じだろう。このロボット達は確かに強いが、今まで戦ってきた魔物に比べれば大したことはない。問題はあの女が追いついて来るまでにどうにかこの状況を打開しないと‥‥‥!


 視界の端でリリア達を確認した。敵が一体、リリアの方へと向かった。リリアはそれに気づいているようだった。なら問題はないだろう。そう思っていた。


 だがリリアが動くことはなかった。敵の刃がリリアの頭上を通り抜け、血飛沫が上がる。


 「あ、え‥‥‥?」


 リリアが掠れた声を上げる。


 「ぐはっ!」


 サルヴィオさんの背中から血飛沫が上がった。その一瞬を逃さず複数の刃がリリアを避けるように彼の腹部を突き刺す。


 ‥‥‥は?


 俺は頭の中が真っ白になった。サルヴィオさんは地面へと倒れ込み、腹部から流れる赤い血が円形に広がっていく。その目は虚無を見つめていた。リリアはその光景を目にし、膝から崩れ落ちた。手で口を多い、吐き出しそうな何かを必死に抑えている。


 サルヴィオさん、が、死んだ‥‥‥?


 「ゼニウム!」


 ニグラスの声が俺の意識を呼び起こした。間一髪敵の攻撃を防ぐが、体制を崩してそのまま地面に倒れてしまった。


 まずい!


 この機を逃さず、無数の刃が俺たち三人に襲いかかる。




 その直前、銃声が響いた。目の前のロボットが頭から煙を上げ、目の光が消える。その瞬間、無数の矢が雨のように降り注ぐ。その矢は非常に正確で、次々に敵の脳天を撃ち抜いた。


 「やべぇことになってんじゃねぇか」


 「少し時間をかけすぎたようだ」


 建物の上から見知った人影が二つ降り立つ。その瞬間、俺達の心の中に希望が芽生えた。


 「騎士長!」


 キブシル騎士長が俺達の側まで駆け寄って来る。


 「無事かお前ら!」


 「はい! ギリギリなんとか! でも‥‥‥」


 俺は力尽きた騎士達の方へ目をやった。自分達は生き残ったが、多くの人が間に合わなかったのだ。サルヴィオさんも含めて‥‥‥


 「分かってる。だが今は、お前達が無事で何よりだ」


 キブシルは拳銃を強く握りしめた。


 「ロベリア騎士長ー!」


 ルビリスはロベリア騎士長に飛びつく。


 「ルビリス、無事だったか、もう大丈夫だ」


 「うえーん! 怖かったよー!」


 胴体に纏わりつくルビリスの頭を優しく撫でる。


 騎士長二人の奇襲で敵は全滅。しかもどの攻撃も的確に頭を撃ち抜いている。改めて騎士長の実力を実感できた。そして。


 「大丈夫かリリア!」


 俺は先程からしゃがみ込んでいるリリアの側へと寄る。襲撃を受けてから明らかに様子がおかしい。彼女の顔は青白く、両手で口を抑えている。


 「リリアに何かあったのか?」


 「それが、分からなくて。ていうか良く俺達の場所が分かりましたね」


 俺はリリアの背中を摩りながら、キブシル騎士長に疑問を投げかける。すると彼の顔が強ばり、俺達が走ってきた方向を睨みつける。


 「そりゃあ、あんな馬鹿みたいな魔力を放ってれば嫌でも分かる」


 再び鼓動が加速する。一つの人影が一歩一歩俺達の元へと近づいて来る。騎士長二人は俺達との間に立ち、現れた女性を警戒する。俺は他の仲間にいつでも動けるようにと目で合図をした。


 キブシルはこの現状を分析した結果、一つの答えに辿り着いていた。それは、彼自身が最も危惧していたことだった。


 「‥‥‥てめぇ、ゼルファリスの惰性の十翼(ダクシオン)か」


 横で聞いていたロベリアはキブシルの発言に対し一瞬動揺した。横目で彼の方を見るが、彼の目は確信に満ちたものだった。それ故に認めるしかなかった。


 「ご名答。惰性の十翼(ダクシオン)の第七席次を務めている。アニスと呼んでくれ」


 忘れ去られし英雄、ここに立ちはだかる。


八月は投稿頻度が上がると思います!

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