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Deceptive Love  作者: 緋色
第四章:テルグラス焦土編
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第六十九話:愛の答え

読み直してみたら誤字脱字が多くて急いで修正しました。

国名一部修正。

不注意で申し訳ございませんm(_ _)m


 <<LOCATION:テルグラス焦土>>

 <<WEATHER:快晴>>


 一隻の陸上戦艦が黒い煙を上げながら廃都市の中を前進している。幾つもの高層ビルが建ち並んでいるが、窓ガラスがなく、塗装も全て落ちている。コンクリートでできた道はどれも亀裂が入っており、信号機は傾いているが、薄暗く点滅もしている。


 例えるなら終末世界、と言ったところか。耳に響いてくるのは戦艦が道端の瓦礫を粉砕する音だけ。人どころか、動物の気配もしない。まるで自分達以外の生き物が全部消えてしまったような‥‥‥


 「この先に放棄された造船所がある。長年使用されていないが、この船を隠す場所としては最適だろう」


 日が沈み始め、建物の隙間からオレンジ色の光が漏れ出し、この廃都市に明かりが灯った。その光景は、過去にこの都市がどれほど栄えていたのかを彷彿とさせるものだった。


 「でけぇ都市だろ。元々はどこの国にも属さない独立都市だったんだぜ」


 甲板で夕日を眺めていると、キブシル騎士長が横へ並んだ。ポケットからタバコを取り出して火をつけると、そのまま口へと運ぶ。


 「お前も吸うか?」


 「体に悪いのでお断りします。それにまだ未成年なんで」


 「体に悪い? それは反社会勢力の洗脳教育だな。タバコってのはまるで魔法だぜ。辛いことがあっても煙と一緒に吐き出せる。楽しいことはより一層楽しく感じる。人間の短い人生をより充実したものにしてくれんだ」


 言ってることに全く同感できなかったが、タバコについて熱弁するキブシル騎士長の姿は、哀愁漂うただの中年男性に見えた。周りに見せないようにしているだけで、彼も本当は疲れているのだろう。


 「一緒に吸いたいならロベリア騎士長にでも頼めばいいのでは」


 「昔火つけて近づいたら顔面に水ぶっかけられた」


 かわいそうに。まあ確かにロベリア騎士長が吸ってるイメージはない。むしろそういうのには厳しそうだ。


 俺達は船の修復が終わるまでの三日間、この荒廃した都市で過ごすことになる。通信手段がないため現在の戦況が全く把握できていないのも事実。この都市を出た時、世界どれほどが変わっているのかは全く予想できないのだ。閉鎖された空間に閉じ込められたような気分になり不安が増してくる。


 「明日は探索隊を出すつもりだ。物資があのクソ鳥に燃やされたおかげでいろんなもんが不足してる。当然お前達のこともこき使ってやるから覚悟しとけよ?」


 キブシル騎士長は指に挟んだタバコを俺の方へ向ける。その時にはいつもの騎士長の姿に戻っていた。不安が安堵に変わり、今日の疲れが一気に体へと押し寄せてきたが、辛くは感じなかった。


 「余裕ですよ、任せてください!」


 俺は船内へと戻り、そのままベッドの上で横になった。


  ◇◇◇◇◇◇◇


 翌朝、俺達はキブシル騎士長達と共に物資調達に出た。ロベリア騎士長の小隊は別行動で、郊外方面への探索に向かった。俺達は高層ビルが建ち並ぶ中心街に向かう。四十名ほどの騎士も同行しており二列に隊列を組んでいる。


 「おいチビ、通信機が使えないない今、お前の唯一の取り柄である広範囲魔力探知が役に立つ。今日くらいちゃんと働けよ」


 「は? 人に何か頼む時の言葉遣いが成ってないんですけど。ていうかそれって〜今のおじさん役立たずってことだよね〜。プフフ! おじさんから仕事取っちゃったらもう髭しか残んないんですけど〜!」


 「よし、こいつは今日置き去りにしよう」


 この光景にももう慣れた。キブシル騎士長とルビリスは今日も仲良く場を賑やかにしてくれる。


 船を降りてからしばらく経つが、足場が揺れたり地層の隆起で非常に歩きにくく成っている。ルビリスはもう四回は転んでいる。短い足じゃ少し歩きにくそうだ。


 「まだ都市に電力が残ってるんだね。自動販売機で稼働してるのもあるし、信号機も光ってる」


 リリアは好奇心旺盛に辺り一帯を見回している。サルヴィオさんが言うには、まだ一部の地下発電機が稼働しており、場所によっては太陽光発電により電力が供給されているらしい。


 


 その後も俺達は、コンビニや大きなショッピングモールで賞味期限の切れていない食料や医療品などを回収した。この時点で既に半日が経過していた。


 「魔力反応はあるか?」

 

 「今のところはないよ。先に言っとくけどここだとあんまり遠くまでは感知出来ないからね! ロベリア騎士長の場所とかもう分からないから!」


 ナグルヴェイン峡谷から少し離れているせいか、この周辺に漂う魔力の質は、ルビリスのものとはあまり似ていないらしい。その影響か、魔力探知の範囲が凡人ほどに低下している。


 ていうかもっと早く言えよ。


 「ロベリアの場所は大体分かるから問題ない」


 「え、きっしょ。ストーカー?」


 「違うわアホ。腐っても十年以上の付き合いだからな、互いの魔力の質が似てくるんだよ。信頼、尊敬、家族だと‥‥‥愛情とかか? まあ諸説あるが、心の奥底、魂から相手に対して強い感情を抱き続けてると次第にそうなるらしい。そのおかげかある程度向こうの位置が把握できる」


 魔力の質、ルビリスの規格外の魔力探知も似たような原理だろうか。俺やリリア達もなんだかんだ長い付き合いになるが、相手の位置を把握することなんてできない。ニグラスに視線を送ってみたが、彼は横に首を振るだけだった。普段は犬猿の仲のように見える騎士長達も、多くの戦場で心を通わせてきたからこそできるのだろう。


 「まあ俺の場合は信頼だろうな」


 キブシル騎士長はあくびをしながら瓦礫に腰を掛ける。そこへルビリスが口を挟む。


 「愛じゃなくて?」


 最近やたらルビリスが騎士長の御二方の関係性を恋人同士にしたがっているように感じるが、俺は到底ありえっこないと思っている。そもそもロベリア騎士長は常にキブシル騎士長にキレてるし、キブシル騎士長も。


 「愛? 恐怖の間違いだな。何度でも言うがあいつは第一印象は完璧だが、それ以外はマジでダメ女だ。俺が何回あいつに殺されかけたと思ってんだ」


 まあこう思うのも無理はない。


 「‥‥‥ふーん」


 ルビリスは大変不満そうだ。誰の目から見てもこうなるのは必然だと思うが、ルビリスがこれに固執するのは何故だろうか。




 「‥‥‥ん?」


 突然、キブシル騎士長の雰囲気が変わった。瓦礫から立ち上がり、何処か遠くの方へ視線を向ける。


 「ど、どうしたの?」


 ルビリスは突然の空気の変化に少し臆したように見えた。


 「魔力が乱れた。ロベリアが交戦中だ」


 え、こんな廃都市で一体誰が、他国の軍隊がいるはずがないし、ここまで魔物の痕跡もなかった。


 「部隊を二つに分ける。半数は俺と共にロベリア隊の援護に向かう。もう半数はサルヴィオに任せる。物資を持って船まで戻れ、ガキどもも一緒にな」


 騎士長の掛け声で騎士達は一斉に移動の準備を始める。俺達も大きなリュックに荷物をまとめた。


 嫌な予感がする。未知の敵、というだけでここまで不安が募るとは思わなかった。心拍数が上がり、緊迫した空気が場を包む。


 「ご武運を。よし、我々は最短ルートで帰還する、行動開始!」


 サルヴィオさんの後に続き、俺達は荒廃した大通りへと飛び出した。


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