第七話:ネフィリムの墳墓①
ダンジョン編スタート!
<<LOCATION:ヴァルムント帝国-ネフィリムの墳墓>>
<<WEATHER:快晴>>
「いや〜皆さん、今日はお日柄もよく〜絶好のダンジョン日和です! 移動中に言ったようにクラスごとに分かれてもらって〜そこから四から五人グループにさらに分かれてもらうよ〜」
グループごとに名前が呼ばれていき、一列に並ぶ。
「は〜い次Dグループ〜、スウィーピアさ〜ん、チタニスく〜ん、‥‥‥」
くそ、スウィーピアさんとは違うグループかぁ、チタニス許すまじ。
「次は〜Eグループ〜、ゼニウムく〜ん」
お、ついに呼ばれてしまったか、さぁ一体誰が同じグループになるのか。
「ニグラスく〜ん」
二グラス! よかった、仲の良い友達が一人でもいれば安泰だ。
「リリアさ〜ん」
リリア! まともだし、実力も申し分ない!
「最後に〜ルビリスさ〜ん」
「はーい!」
ああああああああああ! 最悪だ! ここまでめっちゃ良かったのに最後の最後で‥‥‥!
「よろしくね〜ゼニー! ニグっちもリリアも〜」
「はぁぁぁぁぁぁあああぁぁ」
馬鹿でかいため息が口から溢れる。
「ちょっと〜一緒に生徒と教師の愛の部屋を生き延びた中じゃん」
脇腹を肘で突いてくる。
そしてそそくさとリリアの方へ詰め寄る。
「リリア大丈夫? 飛行船からなんか元気なさそうだったけど」
「もう大丈夫だよ、心配かけてごめん」
そういう気遣いを俺たちにもやってほしいものだ。
「確かに考えられてグループ分けされてるな、俺たちみたいに‥‥‥一人ぶっ飛んでる奴もいるが実力が近い者同士、まあ実力の高い一人に任せきりってのを防ぐためだろうな、後はチタニスのところみたいな宗教チームってとこか」
ニグラスはこういうところに鋭い、意外にも筆記テストの点数はクラストップレベル。
隣国のオルドニア王国は宗教国家でもある、それに一番近い国境都市であるローデンは、少なからず影響を受けている。
「引率してくれる騎士さんや先生たちも〜割り当てられたグループの前に並んでくださ〜い」
待機していた騎士や先生たちが続々と動き出す、俺たちのグループの担当はどんな人なんだろう。
だが、いくら待ってもそれらしき人は現れなあった。
「よ〜しみんな並んだね、ダンジョンの入り口まではまだ少し歩くから自己紹介はその時に〜‥‥‥」
「あ、あの、レイナ先生」
リリアが手を挙げる。
「は〜いリリアちゃ〜ん」
「私たちの引率の人って‥‥‥」
「あ〜その件なんだけどさ〜、本当は私が入るはずだったんだけど〜急遽一緒に行けなくなっちゃって〜ごめんね〜、まあ、リリアちゃん強いし大丈夫でしょ〜」
「ええ‥‥‥」
適当すぎだろ、リリアが困惑するのも分かる。
「というわけで! ダンジョンへレッツゴー!」
◇◇◇◇◇◇◇
四人はひたすら長い石造りの階段を降りていく。
幸い、すでに探索されているおかげで明かりが灯っている。
「マジで引率居ないのかよ、生徒の身に何かあったらどうするつもりなんだ?」
「今考えてもしゃーねーだろ、今は目の前のことに集中しろ、見ろ、リリアなんかもうあんなに下にいるぞ」
「そんなことよりもさ! こんな良い武器が支給されるなんてレイナ先生も太っ腹だね!」
「俺らの学費から取ってるだろどうせ」
俺たちに支給された物は、耐熱性に優れたエンバーロック鉱石からできた剣が二振り、一般的な術師が使う標準的な魔石であるミドル鉱石か埋め込まれた杖、回復薬として、ハーブエキスが七本、ヒールポーションが五本、グレートヒールが二本、そしてレイナ先生がお詫びとしてくれたエリクサーが一本。
ちなみにこのエリクサーで帝都に庭付き一軒家が買える、なんで持ってんの?
「この剣の魔力伝導率どんくらいだ、ゼニウム」
「四十ニパーセントだな、結構高い」
騎士は自分の武器に魔力を込めて戦う、その魔力の通り具合のことを魔力伝導率という。
つまり高い方がいい物だ。
三十未満は民家用、三十から五十未満は一般の騎士たちの間で使われる、五十を超え出すと騎士長たちや、貴族が飾っているレベルだ、七十超えたらもはや国宝。
ちらっと、先頭を歩くリリアが持参した双剣に目をやる。
<<アエテルヌム>>
魔力伝導率:82%
<<ルクスフィニス>>
魔力伝導率:79%
‥‥‥今のうちに媚を売っておこうかな。
「お、開けた場所に出たよー!」
リリアの元へ急いで階段を降りる。
その階層へ足を踏み入れた瞬間、そこは地上とは全く別の世界だということを実感させる。
聖堂を思わせるかのような巨大な空間。
冷たく湿った空気が、肌を刺すようにまとわりつく。
足元には氷のように冷たい水が広がり、わずかに足を沈ませる。
水面に揺れる歪んだ自分の影が、不気味に蠢いた気がした。
天井を見上げると、無数の鎖に繋がれた棺が並んでいた。
漆黒の棺の表面には見たことがない文字が刻まれており、その一つ一つが生きた者を寄せ付けない悪意を放っているかのような錯覚に陥る。
「‥‥‥やば‥‥‥」
先ほどまで楽しく武器の話をしていた俺たちも、これには動揺を隠せなかった。