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Deceptive Love  作者: 緋色
第一章:ローデン編
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第六話:準備


 <<LOCATION:ヴァルムント帝国-ヘルムバルグ山脈-上空>>

 <<WEATHER:晴れ>>


 「うわぁ! すっごい高いよ! ローデンがもうあんなにちっちゃい!」


 「おいルビリス、あんま乗り出すなよ、あぶねーぞ」


 「え、何? もしかしてビビってるのニグラス? プププー、だっさーい」


 「んだとテメェ!」


 今日から一週間、俺たちはネフィリムの墳墓という国内最大のダンジョンでの研修がある、まあ言ってしまうと実線練習だ、騎士や魔導士というのは他国との戦争以外にも、都市外の魔物の討伐やダンジョン調査にも駆り出されるのだ。


 今俺たちは目的地に向かっている飛行船の上にいる。


 飛行船なんて久しぶりだな‥‥‥


 「ゼニウムもリリアもだいぶ落ち着いてるな、俺は初めて乗るからちょっと緊張してるよ」


 何でも出来て勇敢なチタニス様でも苦手なものがあるのか、ちょっと意外だな。


 「まあ俺は元々ヴァルトグラートから来た身だからさ、ローデンに行く時に乗ったことあるんだよ」


 「へぇわざわざ帝都からこんな田舎に来たんだ、知らなかったよ、まあ人それぞれ事情があるもんな、あんまり聞かないでおくよ、リリアは?」


 ずっとタブレット端末の画面を見ていたリリアは突然の質問の投げかけで。


 「え、私? ああ、うん、私もそんな感じ」


 挙動不審に答えた。


 ふふ、強がっているだけか、この飛行船プロフェッショナルの俺の目は騙されないぜ、まあ俺もまだこれで乗るの二回目なんだけど。


 「楽しんでるところ悪いんだけど〜みんな聞いて〜」


 レイナ先生の声が聞こえ、みんな中央デッキに集まる。


 「は〜いみなさんおはようございま〜す、体調は大丈夫ですか〜、後三時間ほどで目的地に着きますので〜私からいくつか皆さんにこれから行くダンジョンの説明や動きについてお話ししようと思いま〜す」


 レイナ先生は珍しくしっかり背筋を伸ばして、普段よりも少し大きい声で話し始める。


 「今から行くのはネフィリムの墳墓ってとこだよ〜、千年以上前にこの大陸に君臨していた魔王の一人が住んでいた場所でね〜、世界でも四大ダンジョンの一つって言われているんだ〜、国内では()()()()()()()()()と同じくらい有名だね〜」


 古い文献によると、千年以上前にこの大陸には四人の魔王がいたらしく、勇者パーティーが接戦の末、全員討ち取り、平和をもたらしたらしい。


 まあよく聞く御伽話だ。


 小さい頃、俺も寝る前にお母さんによく読み聞かされたものだ、今となっては遥か昔の記憶だ。


 「目的地についてからは〜先生たちの方で決めさせてもらったグループに分かれてもらうよ〜、各グループに先生や騎士団の人が一人ついてくれるから〜、ちゃんとその人たちの言うことを聞くよ〜に〜、まあ、もうほとんど探索し尽くしちゃったダンジョンだから〜お宝とかは当てにしちゃダメだよ〜? それに見つけたら国の所有物になるから、持って帰るの禁止ね〜」


 生徒たちからブーイングが起こる。


 まあこれも一つの余興だ。


 「ダメなものはダメなの〜ダメったらダメ〜!」


 両手をバタバタと動かしたレイナ先生の姿は可愛かった。


  ◇◇◇◇◇◇◇


 やばい、酔った、風のせいで揺れがきつい。


 二回目だから余裕だと思っていたが、そんなことは全くなかった。

 

 外と柵に寄りかかり、少しでも風を感じようとする。


 そこへ一つの足音が近づいてくる。


 「だいじょ〜ぶ? ゼニウムく〜ん」

 

 「あ、レイナ先生、いやちょっと揺れがすごくて‥‥‥オエ‥‥‥」


 「それはたいへんだ! そんな時はこれ! てってて〜 酔い止め!」


 「ありがとうございます」


 レイナ先生の手のひらに乗った酔い止めを手に取る。


 その時、彼女が普段からつけている指輪が目に入る。


 学校では全く気にならないのだが、今はとても興味が湧いた。


 「その青い宝石のついた指輪、いつもつけてますよね、結婚指輪‥‥‥な訳ないし、魔道具ですか?」


 「さらっとひどいこと言うね〜、まあ魔道具ってのは大方あってるかな〜」


 レイナ先生は外の景色を見つめる。


 風が吹き、美しい黒い髪がたなびいている。


 どんな表情をしているのか気になったが、日差しが強く、よく見えない。


 「これは古い親友からもらったものでね、私じゃ使えないんだけど、唯一の思い出なんだ」


 その声色から、どこか懐かしく、また寂しさが感じ取れた。


  ◇◇◇◇◇◇◇


 <<LOCATION:ヴァルムント帝国-国境都市ローデン-郊外>>

 <<WEATHER:晴れ>>


 「‥‥‥漸く索敵範囲から外れましたか、相変わらずすごいですね」


 その招かざる客は地面に置いていたスーツケースを手に取り歩み出す。


 「正面から行けば多分勝てないですし、与えられた任務も失敗するでしょう」


 世界で最も偉大な科学者というのは、目標のために様々な道を準備してから挑む。


 「こういうやり方はあまり好きではないですが、目標の物は手に入れるには確実でしょうし、ついでに害虫も処分できると考えれば一石二鳥‥‥‥か、フフ、魔女よ、恨むならこの世界の神にしてください」


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