第四十八話:騎士
あれから数日が経過した、そこで得た情報の一部を他の三人やルディア騎士長へと共有し、そして旅行者という立場から騎士という立場に戻る時が来たようだ。
「こちらの方でも色々調べさせて貰ったが、ほぼ黒だろう」
ホテル最上階の個室、この都市ベルトリオンで最も防犯性に優れていると言っても過言ではないであろう。ルディア騎士長を始めとする騎士達が情報共有を行なっている、もちろん俺たちも共に参列している。
「エミリー・パーカー、このベルトリオンの人民部署や帝都の役所を漁っても手がかりどころか名前すら見つからなかった、いつからこの都市の裏で糸を引いていたのかすら不明だが、この事件の黒幕と捉えて良さそうだ」
ルディア騎士長は机の報告書を睨みつける。
「もう一人、リリアからの情報提供があったピエロの仮面を付けた男、調査の結果、名前はマグレッド・アルブレヒト、この都市の裏で五本指に入ると言われる殺し屋だ、そして黄金の騎士団に所属していた経歴を持つ」
黄金の騎士団、ヴァルムント帝国の最高戦力であり、他の騎士団よりも数が少ないものの、一人一人が一部隊以上の戦闘力を誇ると言われている精鋭部隊だ。
ルディア騎士長はその報告書を握りつぶす、魔力が荒波をたて、強く手を握りしめていた。
「民を守る騎士でありながら、このような残虐な殺人に加担するとは‥‥‥!」
騎士としての誇りが彼を許さないのだろう。
「すまない、少し冷静さを欠いていたようだ、この二名の足取りは全く掴めて居ないが、現れるであろう場所、時間はある程度予測できている」
すると一枚の紙を取り出す、何かの招待状のようだが、俺たちが持っているものとは形相が違う。
「これは汚職の疑いで目を付けていた貴族の元に届いたものだ、おそらくこの都市の闇へと誘う切符の役割を持つものだろう、ご丁寧に場所と時間まで書かれている、現れるとしたらここだ」
ルディア騎士長は報告書から目を離し、この部屋に集う騎士達を力強い目線で見渡す。
それを合図に周りの騎士達が姿勢を正す。
「鋼の誓いを胸に、帝国の敵を絶つ、我らはヴァルムントの剣、栄光の盾、死すとも誇りは砕けず、血を流せど信義は揺るがん、帝国に仇なすものを討ち滅ぼすのみ!」
「「「おー!」」」
この部屋が熱と歓声に包まれる、まるで空間が震えているような錯覚に陥った。
◇◇◇◇◇◇◇
会議が終わり、部屋の扉が開くと先程の空気が一気に流され、元の空間に戻る。
「情報提供感謝する、二人とも」
ルディア騎士長が俺たちの前までやってくる、初めて会った時よりもその姿は大きく見える気がした。
「ねぇ、場所も時間もわかってるんでしょ、何で軍隊を派遣してさっさと制圧しないの?」
ルビリスは悠々にお菓子を貪りながら椅子に腰掛けている。
こいつマジで何様なんだ?
「言いたいことはわかる、だがここは金と娯楽の街ベルトリオンだ、昼夜人で溢れかえっている、軍隊を動かせば騒ぎになり敵が察知すれば逃走される危険もある、それに相手は神々の執行者だ、能力がわからない以上迂闊に動くわけにはいかない、現に先遣隊を例の場所に向かわせたのだが連絡が途絶えた」
優勢に思われたが、思ったより事態は緊迫しているのかも知れない。
「そして一つ頼みがある、例の場所にゼニウムとリリア、君たち二人に同行してほしい」
「え」
何故俺たち? この人の部下には俺より強い人や経験豊富な人がいっぱいいるはずなのに。
「今回はあくまで調査だ、戦闘じゃない、君たちのスキルが必要不可欠だ、それに、どうやら莫大な借金を抱えているようじゃないか」
ギクッ
「もし頼みを聞き入れてくれるのならば、その借金、私が肩代わりしてやってもいい」
「やります!」
やるに決まってる! しかも借金を請け負ってくれるのならば残りの浮いたお金でサキュバス達のお店でキャッキャウフフできるじゃん!
「感謝する、流石キブシルに気に入られているだけはあるな」
懐かしい名前が聞こえた。
「キブシル騎士長が?」
「あいつの車ぶっ壊したんだろう? ロベリアから色々ガルツェンでの出来事を聞かされたよ」
ああ、あったなそんなこと。
「ロベリア騎士長と仲良いんですか?」
ルビリスが尋ねる。
「女性の騎士長は私とロベリア二人だけだからな、空いている日は互いに連絡をとっている、まさかロベリアがキブシルに好意を抱いていると聞いた時には驚いたがな、あの髭男のどこがいいんだか」
「口外していいことなんですかそれ」
「あ、だめだわ、やっべ」
「何してんですか」
場が和やかになる、今目の前いるのは先程の勇猛果敢な騎士長ではなく一人の面白い女性に見えた。




