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Deceptive Love  作者: 緋色
番外編:プレゼント大作戦
37/104


 <<DATE:ヴァルムント歴-996年>>

 <<LOCATION:ヴァルムント帝国-城塞都市ガルツェン>>

 <<WEATHER:晴れ>>


「あーあ暇だなー、ゼニーとニグっちは訓練に行っちゃったし、リリアはいつの間にか消えてるし、今思うとなんかムカついてきた、可愛い女の子を一人ぼっちにすると温暖化が進むってことを今度思い知らせちゃおっと」


 ルビリスは一人ぶつぶつと小言を言いながら建物の廊下を散歩している。


 「ん? くんくんくん、これは! 恋に悩む不器用な乙女の匂い! はっはっはー! この恋愛マスタールビリス様にかかればどんな恋事情も解決だ!」


 そして匂いのする方へと駆け出した。


  ◇◇◇◇◇◇◇


 同時刻、第一印象は完璧と称される銀髪の乙女は、ある男を探していた。


 「‥‥‥キブシルはどこだろうか」


 個室にはいなかった、駐車場にも車はあったし出かけていないはず、なら訓練室か。


 訓練室に近づくに連れ、賑やかな声が聞こえる、訓練室の入り口からそっと中を覗くとお目当ての人物を見つけることができた。


 「今は訓練中か、なら日を改め‥‥‥」


 「あ! ロベリア騎士長!」


 「ルビリス!?」


 ロベリア騎士長は手に持っていた小包を咄嗟に後ろへ持ち替える。


 「いやーこんなところで会うなんて奇遇だね、恋する乙女の匂いにつられてここまでやって来たんだけど〜、ん〜〜〜?」


 ルビリスは顔を赤くするロベリア騎士長と遠くに見えるキブシル騎士長を交互に見やる。


 はっは〜ん、やっぱりそうだったんだ。


 「ロベリア騎士長ってキブシル騎士長のこと好きだよね」


 「!!!」


 顔がより一層赤くなる。


 「やっぱり図星なんだ〜、まあ前からそんな気がしたんだよね〜、ていうことはその後ろに隠した包みはプレゼント?」


 「ち、違うぞこれは、そ、その、そう爆弾だ! 日頃の恨みを込めて、その‥‥‥」


 爆弾って、流石に無理あるでしょ。


 「ロベリア騎士長ってツンデレだったんだ! いつもはクールで強くて料理が壊滅的に下手なのにギャップすごい!」


 「さ、最後のは言わなくて良いだろう、お、お願いだルビリス、今回のことは誰にも言わないでくれ」


 ルビリスは小悪魔の様にニヤニヤした表情を浮かべ、ロベリア騎士長の顔を覗き込む。


 「えー? どうしよっかなー、こんなこと滅多にないしー? みんなに言いふらしちゃおっかなー」


 「お、お願い、なんでも、いうこと聞くから‥‥‥」


 ちょっとそんなんで泣かないでよ、こっちが悪いみたいになるじゃん! 


 ‥‥‥


 あ、私のせいか、こういう時にゼニーみたいなツッコミ役がいないと訳わかんなくなる。


 「まあまあ落ち着いてよロベリア騎士長、私は恋する乙女の手助けをするために遠路はるばるここまでやってきたんだよ」


 「‥‥‥あなたの個室からエレベーター使えば二分で着くでしょ」


 「そういうマジレスは言わないのがお約束! ほらこの恋愛マスタールビリス様に任せておけばどんな恋愛事情も解決だよ!」


 「ほ、本当に大丈夫なのか?」


 「もちろん! 一度も失敗したことないよ!」


 「‥‥‥一応聞いておくけど成功例は?」


 「ないよ! 今回が初めて!」


 一気にロベリア騎士長の顔に不安に染まる。


 「とりあえず、ロベリア騎士長は何をどうしたいの?」


 「何か贈り物を渡そうと思ってて、でも私はそんなキャラじゃないし、普段は私からあいつを毛嫌いしている様に振る舞っているし‥‥‥」


 なるほどなるほど、これは今までのツンデレエナジーがあまりにも蓄積しすぎて、いつの間にか取り返しのつかない状態になってるってわけね。


 「キャラなんて関係ないよ! うちのゼニーはダンジョンとかだとすごい頼りになるけど、恋愛になると急に変態になるんだよね、だけどあれでもいいところまで行けたんだから問題なし!」


 「そ、そうだろうか」


 「まずは贈り物っていうのは良いと思うよ、まあ問題はその贈り物がどんなものかだけれどね、さあロベリア騎士長、その後ろに隠した物見せて」


 「あ、ああ」


  ◇◇◇◇◇◇◇


 「‥‥‥何これ、なんかの呪物?」


 包みの中には、円柱状の細長い棒の様な形をしており、その表面にはさまざまな表情をした人の顔に埋め尽くされているおぞましいものが入っていた。


 「嘆きの柱(グラフィオル)という魔物のキーホルダーだ、どうだ、なかなか良いものだろう?」


 なるほど、たしかに第一印象は完璧って言われるだけはあるね、その他はいろいろ壊滅的だ。


 「アウト」

 

 ルビリスはそのまま廊下の奥へそれを投げ飛ばす。


 「ああ! そんな!」


 「バカなの? あんなの渡されても悪夢見るか体調崩すかの二択だよ!」


 「そん、な、一週間かけて決めたのに‥‥‥」


 騎士長って思ってるより暇なのかな。


 「なんか騒がしいと思ったらテメェら何してんだ?」


 「キ、キブシル」


 「あ、髭じじい」


 今思うとロベリア騎士長はこの髭男のどこに惹かれたのかな、私はぜっっっっっっったい無理!


 「おいガキ、いい加減髭から離れたらどうだ? 俺は一応お前の上司だ、少しは敬えや」


 「えー? でもいっつもロベリア騎士長に迷惑かけてばかりじゃーん? 敬えるとこなんて一度も見たことないけどなー」


 「んだとテメェ」


 さあロベリア騎士長! この私がわざと悪役を演じてあげたんだから、キブシル騎士長を庇って好感度をアップしてよね! 


 ルビリスはロベリア騎士長に目線で合図を送る。


 「キ、キブシル」


 お! いいよ! その調子!


 「キブシル、重要な訓練をすっ飛ばして外に出てくるとは職務放棄じゃないか? 最近こういうことが多くなってるな、顎髭の長さがお前の怠慢に比例するなら今すぐここで切り落とすぞ」


 「‥‥‥」


 「‥‥‥」

 

 だめだこりゃ。


  ◇◇◇◇◇◇◇


 「うぅ、なぜ私はいつも上手くいかないんだ‥‥‥」


 「まあ外見以外何もかも絶望的だからね」


 「そんな直接言わなくてもいいじゃないか‥‥‥」


 私たちはあの呪物に変わる贈り物を買うために商業エリアに来ている。


 流石城塞都市、ローデンよりも大きいし品揃えも豊富だね。


 「プレゼントの選び方だけど、やっぱその人の人間像にあった物がいいよね」


 「ルビリス! これなんてどうだ? 千眼の幻影獣(モルガフェル)の人形‥‥‥」


 「却下」


 「ああ! そんな!」


 「いい? 贈り物って言うのはね、ただ買った物ってわけじゃないの、言葉に表すのが難しい自分の思いの具現化でもあるの! そんな気持ち悪いの渡してみなよ、死ねって言ってるようなものだよ」


 「私は可愛いと思ったんだが‥‥‥」


 ん〜、これはかなりハードモードだな〜


 「一旦魔物から離れようよ、そもそもあの髭男のどこが好きなの?」


 「え、いや、それは、その‥‥‥」


 「ここは大人の女性同士の秘密ってことにしてあげるからさ〜」


 「ルビリスはまだ十七だろう」


 「今年で十八だから成人してる様なものでしょ」


 「それはズルくないか」


 あーあ想像以上にめんどくさい、早く言ってくれないかな、ま、そのギャップがまた可愛いんだよね〜ロベリア騎士長は。


 「‥‥‥別に大した理由はない、最初は私も小汚い男だとしか思っていなかった、私は侯爵家かつ騎士長だから学生時代の友人や今の同僚達とは距離感があった、今思うと孤独に感じてたのかもしれない、でもあいつと会話をすると、なんというか、とても、近くにいる気がしたんだ、それがすごい嬉しくて、戦場を共に生き抜いているうちに彼の人間性に惹かれたのかもしれないな」


 なにそれ! 恋愛小説にありそうな展開じゃん! 


 「ならやっぱちゃんとした贈り物をしないと!」


 「‥‥‥何かおすすめのものはあるだろうか」


 「ダメだよちゃんと自分で選ばないと、こればっかは手伝ってあげれないよ」


 「うぅ‥‥‥」


 さて、言えることは言ったし、後はロベリア騎士長次第かな〜


  ◇◇◇◇◇◇◇


 〜翌日〜


 「ねぇ髭仙人」


 「なんだ胸ペタロリータ」


 ルビリスはロベリア騎士長より一足先にキブシル騎士長の個室へ来ていた、そして今まさにその空間で戦争が起きようとしていた。


 「‥‥‥」


 「‥‥‥」


 危ない危ない、今日は聞きたいことがあるんだった、今ここで喧嘩になったら元も子もないし、ここは私が大人の対応をしてあげようかな。


 「なんかムカつくこと考えてるだろ」


 「そんなことないよ、それより聞きたいんだけどさ、ロベリア騎士長のことどう思ってる?」


 予想にもしなかった質問で少し驚きの表情を見せるがすぐに元の顔に戻る。


 「ロベリア? 前にも言ったが第一印象は完璧な女だ、だが中身は壊滅的にひどい」


 「そういうことじゃなくて、はぁ、脳みそに毛生えてんじゃないの? 一人の女性として見た時のおっさん自身の感想を聞いてるの」


 「お前マジで一言二言多いよな、まあそうだな、強いて言うなら、とんでもなく恐ろしい女だ、俺のお袋の次くらいにはな」


 「‥‥‥嫌い?」


 「別に嫌いってわけじゃねぇ」


 「じゃあ好きなの?」


 「お前マジで極端だな、そもそもあいつは侯爵で俺は子爵、しかも養子だからな、立場が違いすぎる」


 「告られたらどうする?」


 「なんなんだ今日のお前は、断るに決まってんだろ、あんな恐ろしい女、命が幾つあっても足りねぇよ」


 ふーん、なんか違和感があるんだよね〜、鈍感なのかわざとなのか、まあそろそろ時間切れかな。


 扉のノック音が響く。


 「噂をすればか」


 部屋のドアが開くとロベリア騎士長が入ってきた。


 「おい、まだ入って良いなんて言ってないぞ、もし俺が素っ裸だったらどうするつもりだ」


 「その時は変態を牢へ入れるだけだ、ルビリスもいたのか」


 「あ、ごめん、暇だったからちょっとこのおっさんをからかってただけだよ、お仕事の話があるならリリアと遊んでくるね」


 通りすがりにロベリア騎士長にウィンクをし、どこかへ行ったと見せかけて、ドア越しに耳を澄ませる。


 「一体何の様だ、お前の秘蔵していた酒を一本盗んだことで仕返しに来たのか? それともお前の車を勝手に借りて擦った件か?」


 「初耳だがその件はまた後日にしよう」


 ロベリア騎士長は小さな白い小包をキブシル騎士長に投げつける。


 「‥‥‥爆弾か?」


 「黙って開けろ」


 恐る恐る開けると中には小さな箱が入っており、さらにそれを開くと美しい純白の弾丸が一発入っていた、表面には花の模様が刻まれている。


 「‥‥‥これで自害しろってことか?」


 「する分には一向に構わないが‥‥‥日頃の礼だ」


 「え、怖、急にどうした、転生でもしたのか? 俺の知ってるロベリアじゃねぇな」


 「いいから受け取れ髭男、キーホルダーだが実弾としても使える優れものだ、要らないなら敵の脳天にでも捨ててこい」


 ロベリア騎士量はそそくさと部屋を後にする。


 「‥‥‥困ったな」


  ◇◇◇◇◇◇◇


 ‥‥‥緊張したあああ! はぁはぁ、危うくあいつの前で平常心を崩すところだった! だけどなんとか渡すことができた! よしよし! よし!!!


 心の中でガッツポーズをする。


 「お疲れ様、良い贈り物だったと思うよ!」


 部屋の外ではルビリスが待っていた


 彼女の助けがなければ、これを成し遂げることは出来なかっただろう。


 「ありがとうルビリス、本当に感謝している」


 「へへへ、なんだって私は恋愛マスターだから! また困った時は気軽に頼ってね!」


 「ああ、そうさせてもらうよ」


 二人は笑顔でハイタッチをした。

 

次回からは第三章ベルトリオン編です。


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