表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Deceptive Love  作者: 緋色
第二章:ガルツェン編
33/67

第三十三話:代償


 遠くから人の声が聞こえ、次第にそれがハッキリしていく。


 懐かしい声、会話だ。


 「う‥‥‥ん‥‥‥?」


 目を開けて最初に映ったのは真っ白い天井だ。


 どこだろうここ、体の痛みも無いし、焼き切れたはずの足の感覚もある。


 「あ! 起きた!」


 耳を澄まして次に聞こえたのはムカつくやつの声だ。


 「やっと起きたか、流石に居眠りが過ぎんじゃねぇの?」


 「よかった、三日も寝たきりだったんだよ?」


 まだ頭の中がスッキリしない、えっと、両足が焼き切られて、頭から落ちてそこから‥‥‥


 「‥‥‥そうだ、みんな無事!?」


 体を勢いよく起こし周りを見渡すと、いつもそばに居てくれる三人の顔があった。


 リリアが俺のそばまで寄ってくる。


 「おかえり、ゼニウム」


 おかえり、その言葉にとても言い表せないような温かいものを感じた。


 「‥‥‥ただいま!」


 病室の自動ドアが開き、見覚えのある髭が入ってくる。


 「お、やっと起きたか、てっきりそのまま死んだんかと思ったぜ」


 「キブシル騎士長!」


 「寝起きのとこ悪いんだが色々渡したいものがあるんだ、歩けるか?」


  ◇◇◇◇◇◇◇


 キブシル騎士長に連れられ、大きな空間に出る、両脇には数百人の騎士が列を成し、正面の壇上にはロベリア騎士長も立っていた。


 その光景を見て緊張感を覚えた、一体何が始まるのだろうか。


 「ゼニウム、壇上へ上がれ」


 「え?」


 キブシル騎士長の突然の一言に理解が追いつかない。


 「他の奴らはもう終わってるから後はお前だけだ、それにお前には特別な物も渡すつもりだ」


 壇上の側に目をやると、ロベリア騎士長の手に勲章が握られていた、よく見るとニグラス達の胸にも同じものがつけられており、俺は全てを察した。


 「いやー何のことかさっぱりわからないなー」


 と言いつつも確信していた、俺が眠っている間に他の三人が色々報告してくれたんだろう、特別な物もあるって言ってたし、リリアとかが大袈裟に俺の活躍を語ってくれたのかな、照れる照れる。


 三人も騎士長達も俺のセリフを聞いて笑っている、俺がわざと知らないフリをしているのはお見通しってわけだ、別に悪い気分じゃ無い。


 俺は少し緊張しながらも壇上の上に登った。


 それと同時にロベリア騎士長が一歩前へと出る。


 「ゼニウム・アルヴェスト、貴公はその類稀なる洞察力と行動力を持って仲間の先頭に立ち、そしてこのヴァルムント帝国に大きな功績を残しました、よってこの勲章を授与します」


 ロベリア騎士長が俺のすぐそばまで寄り勲章をつけてくれる、キブシル騎士長の言ってたように第一印象は本当に完璧だ、顔達がよく気品あって美しい、そしてまっすぐ俺の目を見ててこっちがちょっと恥ずかしかった。


 周りから拍手と歓声が響く。


 その光景を見て胸の奥が熱くなる。


 お母さん、俺、立派な騎士に慣れてるかな。


 「そして、君にはもう一つ特別な物を渡さないといけない」


 というとロベリア騎士長は一枚の紙を取り出す、状況や紙の大きさ的に何が渡されるかは確信があった。


 「他の三人からの要望もありこれはリーダー的な立場にある君に渡すことになった」


 ふっふっふ、そんな焦らさなくても俺のこの天啓の瞳(オラクルアイ)には全てがお見通しだ! それにしても俺がリーダーだなんて、恐縮ながらここはみんなを代表して()()()を受け取るとしよう。


 ロベリア騎士長はその一枚の紙を差し出す、俺は順番に右手と左手を外側に回すようにして受け取り、一歩下がって深々と礼をした。


 顔を上げ、その紙に視線を落とす。


 「‥‥‥医療費請求書?」


 「ああ、深さ五千メートルから君たち重傷者を安全に地上へ送るための輸送費や特別な医療器具費、そして施設の提供費やポーション代、君の足を治すために使ったエリクサーとかかな」


 周りから再び拍手と歓声が響き渡るが、さっきとは違い胸の奥ではなく頭が熱くなる。


 「他の三人が言うにはこれはリーダーである君が()()受け持つらしく、流石に私も可哀想だと思ったが、流石リーダーと言われるだけある、あんなに美しく医療医請求書を受け取るとは思っていなかった、仲間がそれほど大切なんだね、尊敬するよ」

 

 「ゼニウム、なんか、ごめんね」


 「いやーゼニウム、今回ばかりは助かったぜ、今度美味いもん奢ってやるよ!」


 「アッハッハッハ! ちょっと待って、お腹痛い、アハハ! バカ高い医療費請求書を、卒業証書じゃないんだから‥‥‥!」


 ‥‥‥


 「一万ゴールドだが、まあ普通に騎士として働いていれば遅くても六十年くらいで返せるだろう」


 ロベリア騎士長は淡々と現実を押し付けてくる。


 「ロベリア騎士長、あいつらは仲間じゃないです、大切でもなんでもないです、家畜の糞以下です、あのまま全員死んじゃえば良かったんです」


 三人の方へ目をやると、背を向けてここを立ち去ろうとしていた。


 「やべ、逃げろ!」


 俺の頭の血管が切れる音がした。


 「待てやゴラああああああああ!!! ぶっ殺してやる、特にルビリス!!!」


 こうして二回目のダンジョン探索は無事(?)終わりを迎えた。


一万ゴールド、十億円くらいかな?

とりあえずナグルヴェイン峡谷探検は終わりです。

おもしろいと思ってくれた方、

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ