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Deceptive Love  作者: 緋色
第二章:ガルツェン編
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第三十話:ナグルヴェイン峡谷⑤


 「またヤベェのが出てきたぞ!」


 「こっちの位置がバレてる!」


 怪物の指先が光り輝く。


 「避けろ!」


 黄昏れ色の光線が四人の頭上を通過するとその終点で大爆発を起こし、辺り一帯を蒸発させる。


 「あれに当たったら即死だ、リリアは大丈夫か!?」


 「う、うん、もう自分で走れる」


 「ごめんリリア、私じゃその腕は応急処置が精一杯、こんな時にレイナ先生のポーションが有れば‥‥‥」


 今までは頼りになる先生がいたがここにはいない、救援を求めようにも深さ五千メートル近いこの場所では通信機材も使えない、つまり、


 「俺たち四人でなんとかしないといけないわけか」


 「‥‥‥どうする? 逃げる?」


 リリアが笑顔で聞いてくる、だが俺自身もリリアやニグラスもルビリスも俺の返答を分かりきっていた。


 「やってやるに決まってんだろ!」


 「そうこなくっちゃ!」


 「最近逃げてばっかだったからな、そろそろ暴れたい気分だぜ」


 とりあえず走りながら状況整理だ、俺たちは四人だが最高戦力のリリアは普段のように早くは動けないし何より片手が使えない、つまり普段の半分も実力が出せないってことだ、だが、


 「リリア、今回はマジの総力戦になると思う、一人一人が全力を出さないといけない、だからそのスキルについて教えてほしい」


 「はぁ、そこまで丁寧に頼まれたらこの私も鬼じゃないからね、全部話すよ、でも本当は誰にも教えちゃダメって言われてるけど、逆相(カオティック)因果(・フェイト)、簡単に言えば『逆』にするスキルだよ、さっきやったみたいに自分と対象物を入れ替えたり、力の弱い方が相手を吹き飛ばせたり、応用すればダメージ軽減もできる」


 今までの疑問が全て解消された、改めて聞くとぶっ飛んだスキルだ、だがあくまでサポート的なものであってあれを倒す決定打にはならない。


 「良い作戦が思いついた」


 「お、なになにー? まああのゼニーがそこまで言うんだからさぞかし素晴らしい作戦なんだろうなー」


 なんかムカつく言い方だな。


  ◇◇◇◇◇◇◇


 「ライトニング!」


 稲妻の矢が怪物の頭上にある岩肌を貫き、天井が一部崩れる。


 「剣術(ケイロス)風塵剣(ふうじんけん)!」


 落石と位置を入れ替え、怪物の頭上から俺とニグラスが斬りかかるが、見えない障壁に阻まれ弾かれる。


 怪物が落下する俺たちに向かって光線を放つがリリアのスキルですぐに小石と入れ替わり回避する。


 「これぞチキンレース作戦だ!」


 「名前だっさ、あの武器屋と同レベなんですけどー」


 これを繰り返し、相手に着実とダメージを蓄積させる作戦だが、見えない障壁に阻まれてるせいで攻撃が通らずもう作戦失敗と言っても良いくらいだ。


 「どうすんだよあのバリアみたいやつ、こっちの体力が減るだけだぞ?」


 「ゼニウム隊長! これはもはや作戦失敗では!?」


 「ふざけてる場合かリリア、だけどそれは確かにそうだ」


 「プフフ、あれだけ自信満々に言っといて秒で失敗とか笑っちゃうんだけど」


 「お前を前線に放り出してやろうか?」


 今のところあの怪物は、障壁とビームくらいしかやってこない、ビームはあれの指先を見とけば避けられるが、障壁をどうにかしないとお話にならない。


 「‥‥‥私の双剣貸すよ」


 と言うとリリアが一振りずつ俺とニグラスに差し出す。


 俺はギョッとする。


 「いやいやいや、それ国宝級の剣じゃん! もし壊したら俺もう人生詰みだよ、借金生活なんだけど!」


 「センキュー」


 ニグラスは普通に受け取る。


 「お前もっと遠慮しろよ」


 「その剣はね、遥か昔のすごい英雄が使ってたもので、何百年も一人の人物に振られてたからその人の魔力が染み付いてるんだってさ、だからきっとあの障壁も壊せるよ」


 確かに握った瞬間とんでもない魔力の圧を剣の中から感じる。


 「へぇおもしれぇ!」


 「ひぃぃ怖えよこれ握るの!」


 「ほら怯えてないでレッツゴー!」


 再び怪物の頭上へと移動する。


 少し下の方に飛ばされたニグラスが先に攻撃を仕掛ける。


 「おらあああ!」


 すると、壊れはしないものの障壁にヒビが入った。


 「チッ、力の入れ方とリーチがまだ掴めねぇな」


 俺は剣を両手で握り振りかぶった。


 その瞬間俺の視界が変わる。


 あれ、ここは?


 俺は草原に立っていた、だがここは夢で見た戦場ではない、目の前には大きな竜と一人の獣人がいる、そしてその獣人の両腕にはリリアの双剣が握られていた。


 次の瞬間、目の前の竜が粉々に崩れ落ちた、一何が起きたか理解できなかったが俺の目には映っていた、目の前の男が一瞬で竜を斬り刻んだのだ。


 俺はこの剣の振るい方を理解した。


 視界が戻り再び怪物が目に映る。


 俺は剣を片手に持ち替え、体を回転させるようにニグラスがつけたヒビ目掛けて振り下ろした。


 「うおおおおお!」

 

 障壁が木っ端微塵に砕け散る。


 「よっしゃ!」


 行ける!


 だが神は小さな子供達を嘲笑う。


 怪物が突如この世のものとは思えないような悲鳴をあげる。


 それと同時に四人の目と鼻から血が噴き出る。


 「ぐっ‥‥‥!」


 ただの雄叫びじゃない‥‥‥やばい、リリアのスキル発動が遅れ‥‥‥


 光線が空中で身動きが取れない二人に襲いかかる。


 「ニグラス!」

 

 俺は下にいるニグラスを蹴飛ばし攻撃から逸らす、それと同時に蹴った反動で避けようとするが、光線は俺の両足を焼き切った。


 「あああああああ!」


 俺はそのまま頭を地面へと打ち付けられ意識を失う。


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