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Deceptive Love  作者: 緋色
第一章:ローデン編
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第三話:何気ない日常②


 「槍術(ドラクス)迅雷突(じんらいとつ)!」


 「剣術(ケイロス)焔烈斬(えんれつざん)!」


 稲妻と炎が弾け散る。


 「二人とも良い勝負だね」


 「それな、どっちが勝つか賭けようぜ」


 「やだよ、どうせスキルで見てるんでしょ、不公平」


 今は騎士科の授業の真っ最中、オルドニア王国に最も近いこの国境都市ローデンは人口50万人ほどの小都市だが、国境を沿いなだけあって優秀な騎士団が駐屯している。


 疾風の子爵と呼ばれるヴォルツェン騎士長の騎士団だ。


 毎回現役の騎士が二、三名、指南役として来てくれる。


 「そこまで! 二人とも良い動きだった、現役の騎士団と遜色ないほどにな」


 「はぁ‥‥‥チッ、引き分けかよ、クラスリーダーの鼻柱折ってやろうと思ったんだがな」


 「ふ〜、良い勝負だったよニグラス、まあまだまだ負けないけどね」


 言い合っているが、なんだかんだ最後は互いに肩を組んで待機場所へと歩いていく。


 「次、ゼニウムとリリア!」


 「待ってました! ゼニウムも早く!」


 満を持したかのように校庭へ飛び出してスキップしながら自分の位置に向かっていった。


 俺を訓練用の剣を一本とり、後に続く。


 先に言っておく、俺は今までで一度もリリアに勝ったことがない、というかリリアが他の誰かに負けてるところすら見たことがない。


 「一本勝負だ、頭を狙うのは禁止、手足が折れても回復魔導士は配備してあるから存分にやれよ、もちろんスキルの使用もありだ、自分の出せるものを全て出し切れ!」  


 騎士団への入隊に必要な最低レベルは800、俺は812、ニグラスとチタニスはそれぞれ846と872、自分を含むこの三人は学校でもトップクラスなのだが、リリアのレベルを見てみると。


 1427。


 一人だけぶっ飛んでんだろ、なんでだよ、そこに立ってる騎士さんより上じゃねえか、英雄と言われる騎士長達でさえ2000ちょいなんだぞ、不公平だ。


 「両者構え! ‥‥‥始め!」


 「行くよ!」

 

 合図と共にリリアが突っ込んでくる。


 双剣術(ディアマクス)の強みは圧倒的な手数の多さ、止まることのない連撃で相手に攻撃の隙を与えない、だが同時に弱点もある。


 それは剣術(ケイロス)とは違い片手なので、一撃一撃の威力、そして防御力が低いということだ、特に後者が致命的で、双剣使いと戦う時は相手の剣ごと強力な一撃できりふせてしまえば良いので、そもそも使用者が極端に少ない。


 「双剣術(ディアマクス)嵐刃双舞(らんじんそうぶ)!」


 刃の嵐が巻き起こる、俺は剣を大きく振りかぶった。


 まだだ、まだ遠い。


 リリアとの距離がどんどん近づいくる‥‥‥そして自分の間合いに入った。


 一撃で叩く!


 「剣術(ケイロス)月華一閃(げっかいっせん)!」


 渾身の一撃がリリアの頭上へと降り下される。


 リリアはそれを片方の剣でタイミングを合わせ迎え撃つ。


 金属同士がぶつかり轟音が響きわたり、砂埃が舞う。


 ゼニウムは自分でも完璧な一撃だと自負していた、だが彼の放った渾身の一撃は、リリアに軽々と受け止められてしまっていた。


 「うっそーん」


 尽かさず彼女はもう片方の剣で彼の脇腹へと剣を振るう。


 彼は咄嗟にバックジャンプする。


 剣が空を切り、彼はすぐに構え距離を取る。


 「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥あっぶね、死ぬとこだった」


 いったいあの細い腕のどこにあんな馬鹿力があるのだろうか、そう、リリアには双剣使い特有の弱点がないのだ。


 再び剣を振りかぶり向かってくるリリアに振り下ろす、轟音が響くが、今度は振り下ろした剣を弾き返されてしまった。

 

 彼女はもう片方の剣を振り上げる、後ろに退こうとするが、片足を踏まれて跳ぶことができない。


 やばいやばい、動け動け‥‥‥!


 必死に片足を引き抜こうとする、その間にも剣が下から迫ってくる。


 「うぉおおおおおおおおお!」


 と、急に足が軽くなった、踏まれていた靴から自分の足が抜けたのだ。


 よし! と思ったが、突然の出来事なので体勢が崩れる。


 「あ」


 三度目の()()()とリリアの剣の衝突、だがその場に響いたのは、金属同士の轟音ではなく。


 「◎×♪$&◇※?!」


 ゼニウムの声にならない悲鳴だった。


 俺は尻を美しい空へと突き出した体勢でその場に突っ伏した。


 「そこまで! 勝者リリア!」


  ◇◇◇◇◇◇◇

 

 「大丈夫か、てかお前普通にリリアの頭狙ってただろ」


 医務室で休憩中の俺の元に我が親友であるニグラスが来てくれた。


 「普通に勝つことしか考えてなかった」


 さっきまで騎士の人にその件で怒られた。


 「ていうかせっかく名前だけは凄そうなスキル持ってるくせになんで使わないんだ? 使ってればもうちょい良い勝負だったできたんじゃねーの」


 名前だけって言うな、そう、俺には天啓の瞳(オラクルアイ)というスキルがある、見た相手の情報がわかるんだ。

 

 「これ別に戦闘用のスキルじゃないから、魔道具なしで名前とレベルとスキルが見えるってだけだよ」


 「レベル上げたら未来とか見えんじゃねーの?」


 「漫画の読みすぎだろ」


 ちなみに他にも、年齢、身長、体重、ウェストなどなど生体情報も見ることができるが、言うと絶対にみんなから変態呼ばわりされるので言わない、あとなんか称号? ってのも見れるが、実際に持っている人を見たことがない、レベルが高い人が持ってそうだが、自分と差が大きいほど見えないので今のところはなんなのかわからない。


 しかし、他人を盗み見することがここまで楽しいものだとは! 見られてる側はいったいどんな気持ちなんだろうな!

 

 すると、医務室の扉が勢いよく開く。


 「やっほー、ゼニー、見舞いに来たよ! あ、ニグっちもいたんだ!」


 声が響くとともに封印されていた記憶が蘇る。


 「げ、ルビリス‥‥‥」


 「そんな反応しないでよ〜、せっかく見舞いに来てあげたんだからもっと感謝して欲しいなぁ?」


 あの悪意に満ちた顔を見て感謝なんてできるか‥‥‥待て、なんでここにいるって知ってるんだ? さっき授業が終わったばかりだぞ? 


 嫌な予感がする。


 「いやぁ、レイナ先生が途中で寝ちゃったからさぁ、その隙にトイレ行こうと思ってたんだけど、そしたらゼニーたちが授業してるのが見えて、面白いから観戦してたんだよね!」


 嘘だろ‥‥‥


 「でさぁ‥‥‥ッッ、プッ、股間潰されて悶絶してるゼニーが校庭のど真ん中でお尻突き上げてるの‥‥‥アッハッハッハ!」


 心の中で何かが崩れていく。


「まあそれで写真撮ってスウィーピアちゃんに見せたよね! ゴミを見るような目してたよ!」


 ‥‥‥よし、もう他人を盗み見するにはやめよう!


しばらくはひたすら日常を書きます!

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