第二十五話:逃走
俺たち四人は大型のショッピングモールに来ている、昨日俺とニグラスの買い物に付き合ってくれた女性陣に今度は俺たち男性陣が付き合う番ということだ。
リリアとルビリスはさっきからずっと衣服店で色々試着をしていた、衣服というのは第一印象を良くするためにも手を抜くことが許されないのは分かる、分かるんだ、そして、女性の長い買い物にしっかり付き合ってあげれてこそ、一人前の男になれる。
だが。
「あああああまだ決まんねぇのかよ! もう六時間経つぞ! さっきから同じ服を着たり脱いだりしやがって、はよ決めろやぁ!」
俺とニグラスは衣服店に来る前に寄った化粧品や、部屋の家具、おもちゃなど前が見えなくなるほどの荷物を全て持たされている、そのまま六時間も経過したんだ、そりゃあニグラスもブチギレる。
「もー短気だなーニグっちは、女子にとって服選びは命の次に大切なの! もうちょっと謙虚に生きようとしないとモテないよ?」
「謙虚に生きるのと奴隷として生きるのは話が違げぇんだよ! そもそもお前胸ねぇくせにブラジャーたった一枚選ぶのに何時間かけてんだ! いらねぇだろうが! デカく見せてぇんならその辺のデパートでスイカでも買ってこいや!」
「今言っちゃいけないこと言った! あーあそういうこと言っちゃうんだー、あれ、今これ買おうと思ってたけどやっぱやめよーかなー?」
「私はもう買ったよー、ゼニウムもごめんねそんなに荷物持って貰って」
ルビリスにもリリアのこういう気遣いを見習ってほしい。
◇◇◇◇◇◇◇
「いやー車って便利だなー、あんな大量の荷物を歩いて持って帰るなんて絶対やりたくない」
「全くだぜ、ルビリスも少しはリリアを見習って荷物を持ってやるとかしろよ」
「嫌だよ! こんなか弱い私に肉体労働させるとか非国民なんだけど」
俺達は、キブシル騎士長がパトロールで自分の車を今日使わないと言うので、貸して貰った高級車に乗って帰宅中だ。
「にしても、リリアが運転できるなんて想像もしてなかったよ! マジで助かった!」
「‥‥‥」
「いつの間に運転免許取ってたんだね! リリア運転上手!」
「‥‥‥」
ルビリスが褒めるもリリアは一言も発さない。
とあることが頭を過ぎる。
「リリアさん‥‥‥? 嘘だよな?」
「あ、あの、別の国でなら、取ってるよ、免許‥‥‥」
おいおいおいおいダメだぞそれ、普通に違法だ。
「おいマジかよ、気をつけろよマジで、擦ったら終わりだぞ?」
ニグラスの言う通りだ、仮に擦りでもしたらキブシル騎士長に殺される。
「そうだね、少しスピード上げて何事も起きないように早めに帰ろう」
車のスピードが上がる。
「あ! 見てー! 限定キャラ当たったー!」
あまりの興奮で、ルビリスがリリアの座席を蹴りまくる。
「ちょ!? ルビリスやめて! 危ない!」
「あ」
車から鈍い金属音が響いた。
「‥‥‥擦ったな」
「ああ、擦った」
「擦っちゃった」
「え、これ私のせい? リリアが運転下手くそなだけだよね?」
どう考えてもお前だろルビリス、さっきと言ってることが正反対なんだが?
「ていうかやばいぞ! 騎士長の車擦った挙句無免許運転なんて知られたらどんな罰が‥‥‥」
突如後ろからサイレンが響き、それが次第に近づいてくる。
一台の装甲車が猛スピードで後ろから走ってきた。
『そこの車止まりなさい、そこの車止まりなさい』
機械音声が鳴り響く。
「これって‥‥‥私たちじゃないよね?」
「俺らに決まってんだろ! やばいやばいパトロール中の騎士団だ! どうする!?」
するとリリアが自信を持った声でこう言い放つ。
「一回擦ったら、もう何回擦っても同じだよね? なら私に任せて! こういうカーチェイスは昔何度もやったことあるから!」
スピードがさらに上がる。
「しっかり捕まってて!」
◇◇◇◇◇◇◇
『そこの車、今すぐスピードを落として止まりなさい、さもないと攻撃します』
「はぁあああ、せっかく今日は平和なパトロールだったっていうのに、最後の最後でこんな面倒ごとが起きるなんてな、なぁサルヴィオ?」
「そんなこと言わないでくださいキブシル騎士長、これも騎士としての義務です」
「かーー! お硬いねー! ‥‥‥にしてもあれ高級車じゃねぇか、修理費高いぜ? あんなに擦りながら逃げるくらいなら、大人しく止まって罰金払った方が絶対得なのによ」
「キブシル騎士長と同じ車種じゃないですか?」
「言われてみればそうだな、あのブランドはイカしてるから結構気に入ってんだ、ふぅ、ナンバーだけメモっとおくか‥‥‥ん?」
キブシル騎士長の手が止まる。
「どうしました?」
「うちのやつと同じ番号なんだが‥‥‥」
「へ?」
『警告無視警告無視、前方の車へ発砲します』
「おいおいおい待て待て待て!」
装甲車に付いている機関銃が前方の車へ発砲する。
「あああああ!!! やめろおおおおお!!! 早く銃を止めろあれ俺の車だ!!!」
「自動発砲になってるためできません!」
「このクッソコンピュータがあああああ!!!」
前方の車は窓ガラスが割れ、車体に穴が空きまくり、煙が出始めるがそれでも止まらない。
『機関銃では静止できないと判断、高密度レーザー砲を使用します』
紫色の光が装甲車の屋根の上で輝く。
「やめろおおおおお! 俺の長年の愛車が!」
『目標補足、発射』
騎士長の叫びは虚しく、車が紫色の光に貫かれ、大爆発を起こし、木っ端微塵になった。
「あああああああああああ!!!」
こうして俺らの休日は終わった。
乗ってた四人はどうなったんでしょうか。
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