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Deceptive Love  作者: 緋色
第一章:ローデン編
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第十四話:蕾


 <<LOCATION:ヴァルムント帝国-国境都市ローデン>>

 <<WEATHER:晴れ>>


 ピピピピピピピ


 アラームは鳴り響き、寝ている主人を起こそうとする。


 「‥‥‥朝」


 俺はベットから起き上がり、窓を開け、居間へと降りると、食卓には当然のように出来立ての朝食が置いてある。


 「おはようお母さん」


 「おはようゼニウム」


 席に着き朝食を食べる。


 今日は普段よりも少し余裕があったので、リモコンでテレビをつける。


 『臨時ニュースです、昨日ネフィリムの墳墓で魔物が大量発生し、駐屯中の騎士156名と、遺跡の調査関係者11名が死亡しました』


 昨日のことがここまで大事になっているとはこれっぽっちも思っていなかった。


 テレビには次々に遺跡内部の映像や、チタニスが取材答えているシーン‥‥‥チタニス‥‥‥いやお前どんだけ喋ってんだよ、さっきから永遠にチタニスが喋ってるシーンしか映らないんだけど。


 『この大事件を受け、皇帝は、三日後に公爵会議が行われることを発表しました、各地から‥‥‥』


 俺は朝食を食べ終え、歯を磨き、荷物をまとめ玄関で口紐を結ぶ。


 「ゼニウム‥‥‥」


 背中に母の声がかかる。


 いつも通りの何気ない会話‥‥‥にはならなかった。


 「ゼニウム‥‥‥本当に騎士になるの?」


 「え?」


 予想外のことを聞かれ、靴紐を結ぶ手が止まる。


 「さっきのニュース、昨日生中継されてたのを見たの、父親と同じように自分の息子もう家帰ってこなくなっちゃうんじゃないかって、いってらっしゃいと言ってあげれる人がいなくなっちゃうんじゃないかって思うと、とても怖くなって‥‥‥」


 「お母さん‥‥‥」


 悲しむ母親の顔を見て、自分の道が果たして正しいのかどうか疑問が浮かび上がってくる。


 だがそれと同時に、あの困難を共に乗り越えた友達の顔と、小さい頃に憧れていた騎士である父親の後ろ姿が頭の中に現れる。


 俺はもう迷ったりしない。


 「お母さん、俺は騎士になるよ、今ではもう背中を預けれる仲間も沢山いる、それに、ずっとお母さんに守られてきたから、今度は俺が守るよ、だから安心して見送って欲しい、そしておかえりって言って欲しい、絶対帰ってくるから!」


 この思いは真っ直ぐだ。


 「ゼニウム‥‥‥忘れ物ない?」


 靴紐が結び終わる。


 「うん大丈夫、いってきまーす!」


 勢いよく玄関を飛び出る。


 「‥‥‥いってらっしゃい!」


  ◇◇◇◇◇◇◇


 「ゼニー、朝ニュース見たー?」


 次の授業の準備をしていると、ニヤニヤしたルビリスが俺の机の上に上半身を乗り出して聞いてくる。


 首にかけている魔石を自慢したいのか、制服の第一ボタンを外している。


 何がとは言わない、魔石よりもチラッと見えてしまいそうなものが服の中にあるが、平たいダンジョンの壁にくっついている丸い虫にのようなこいつ()に興味はない。


 「あー昨日のダンジョンのニュースだろ? チタニスしか映らなかったぞ」


 魔石に無反応だったのが癪に触ったのか、ルビリスはムッとなる。


 そしてさらっと第二ボタンも外した。


 「違う! アルヴェスト伯爵の艦隊が()()()()()()()から帝都に帰還したの! ゼニーのおじいちゃんでしょ?」

 

 「へー」


 俺の方へさらに乗り出してくる。


 「なんでそんな無反応なの? あ、そっか! こ・れ・が、羨ましいの〜?」


 痺れを切らしたのか魔石を取り出して、俺の顔を突いてくる。


 うぜぇ。


 実際祖父に興味はない、というか、大っ嫌いだ。


 「ふーん、ゼニウムのおじいちゃんって大騎士だったんだ、そんな凄い人‥‥‥っていうか、名家なのになんでこんな辺境に住んでるの?」


 遠くから様子見していたリリアが近づいてくる。


 「帝都をお母さんと一緒に追い出されたんだよ、きっと父さんが死んで用済みになったから捨てようと思ったんだろうな、元々結婚は反対してたらしいし、俺もちっちゃい頃に数回くらいしか会ってないな」


 「ゼニーの家って複雑だね、私やニグっちはごく普通の一般家庭で、チタニスやスウィーピアちゃんのところは宗教家だったよね、あそこもなんか大変そー、リリアは?」


 「私は‥‥‥秘密」


 リリアのところは未だに謎だ、昨日のダンジョンでさらに仲が深まったはずなのだが、お堅い女だ!


 ふと、背後から嗅いだことのある香水の匂いが漂ってくる。


 「あ、あの、ゼニウム君、ちょっといいかな」


 スウィーピアさんだ。


 レッツゴーフィーバータイム。


  ◇◇◇◇◇◇◇


 「あの時はありがとう、本当に助かったわ」


 スウィーピアさんは丁寧にお辞儀をする。


 その美しすぎる所作は、どこかの御令嬢を彷彿とさせた。


 「いえそんな、当然のことをしたまでです(自称イケボ)」


 こういう状況に備えて家でイケボの練習しといてよかったー!


 お母さんにバレた時は病院に連れていかれそうになったけど。


 「そ、そうなのね、実はお礼がしたくて、何がいいかしら」


 お礼だって!? お付き合いしましょう! いやもうここは一気に結婚! いやさらにぶっ飛ばして‥‥‥コホン、流石にやばいか、ていうか声に出してたらガチで終わってた。


 「あ、これなんてどうかな」


 彼女は自分の首に手を回し、かけていたペンダントを取る。


 そのペンダントには白い六芒星のエンブレムのようなもの付いていた、が、俺は今の一連の動作に目を奪われていた。


 スウィーピアさんは超清楚だ、汚い言葉も絶対に使わない、だが今の一連の動きは、俺のこの天啓の瞳(オラクルアイ)には全てがエロく映っていた。


 「ゼニウム君‥‥‥?」 


 「あ、はい! なんでしょうか?」


 「知ってるかもしれないけど、私の両親はオルドニア王国出身でね、宗教色が強いんだ、これはその宗教に属してますよっていう証」


 彼女の手が俺の手を持ち上げる。


 肌スベスベ! っと、今そんなことを思ってる場合じゃないな、うん、ツルツルだ。


 「宗教勧誘ってわけじゃないけど、よかったらこれ貰って欲しいな」


 そっと俺の手に乗せる。


 暖かい。


 「そんな大事そうなもの、貰っちゃっていいんですか?」


 聞くとスウィーピアは顔を赤らめる。


 「うん、だって、友達よりも、一歩奥へ行きたいんでしょ‥‥‥?」

 

 ああああああああああああああああああああ!!!


 俺の理性が全て弾け飛んだ。

 

いい感じの仲になりそうですね。

前にも書きましたが、この作品はシリアス強め(の予定)です!

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