第十三話:帰路
操作方法が分からず最近ようやく気づいたのですが、
ポイントやブックマークつけてくれた方ありがとうございます!
「負傷者を運べ! 回復薬はあるだけ全部もってこい!
「こっちに重傷者一名! 回復魔法が使える方、応急処置をお願いします!」
ダンジョンの外では騎士達が忙しく走り回っている。
死者は大勢出たものの、不幸中の幸いか、生徒達の中にそれに当てはまる者はいなかった。
「ぷはー! 外の空気が美味しい! あんな息詰まる空間はもう懲り懲りだなぁ」
俺たちは近くの簡易テントで休んでいた、最初にダンジョンから出てきたこともあってか、騎士団や、この出来事を聞いて駆けつけた大勢の記者達から質問攻めで殺されそうになったが、こういうのはチタニスに全部お任せだ。
「レイナ先生遅いな、てかあの騎士を一人で対処できんのか?」
ニグラスは珍しく落ち着きがない、椅子に腰をかけているが、足を仕切に揺らしている。
「でも、レイナ先生もあの騎士同様ステータスが見えないんだ、今思うと、やっぱすごい人だったんだな」
「そうだね、普段の振る舞いからは全くそんな感じしないけどね」
これからはもう少しだけ敬ってあげようかな。
「‥‥‥ルビリス」
ニグラスが名前を呼ぶ。
「ひゃあい!?」
「お前さっきから一言も喋らねぇな、ずっと俯いてやがるし、レイナ先生のことは分かるがゼニウムの言った通りあんまり気を重くしなくていいんじゃねぇの?」
意外にもしっかり周り見てるんだなこいつ。
「いや、心配してるんじゃなくて、その‥‥‥」
心配しろよ。
すると、少し離れたところでざわめきが聞こえた。
そしてその中から見知った姿が現れる。
「レイナ先生!」
俺たちは全員で駆け寄った。
「お、みんな元気そうだね〜よかったよかった」
見た感じ、どこも特に怪我はしてなさそうだ、あの騎士相手に、本当に何者なんだろう。
「先生大丈夫ですか!? お体でどこか悪いところはないですか!?」
「先生! 結局あれはなんだったんですか!?」
「先生が無事でよかったです! で、あの騎士はどうなったんですか!?」
今度はレイナ先生が質問の嵐にタコ殴りにされる。
「ちょ、ちょっと皆んな落ち着いて〜、このか弱い私を休ませて〜!」
◇◇◇◇◇◇◇
「結論から言うと‥‥‥ごめん! あの騎士はどっか行っちゃった! そもそも私戦ってない!」
「な〜んだ、せっかく先生の英雄譚が聞けると思ったんだけどな〜」
「そんな不満そうに言わないでよリリアちゃ〜ん、私も怖かったんだよ〜? 流石にあれを相手するとなるとどうなるかわからないんだよね〜、これが最善だったと思うよ」
その時には普段の雰囲気に戻っていた。
「そもそも今回の事件の原因はあの騎士のせいだね、多分だけど、洞窟の奥に住む魔物達があれから逃げてたんだよ、それで一気に魔物が扉に押し寄せて耐えきれず、どかーんって感じ」
その説明は確かに納得できるものだったが、それでもまだ疑問は沢山残る。
「あの騎士はなんだったんですか? とんでもない身体能力に、圧倒的な魔力、殺されるかと思ったら急に何処か行っちゃうし」
「‥‥‥リリアちゃん、そのリリアって名前をつけたのって君のお母さん?」
「そうですけど、なんでそんなこと聞くんですか?」
「そう‥‥‥まあ私も全然わかんないな! ちんぷんかんぷんだよ〜」
絶対に何かを隠しているのが全員に感じ取れたが、今は深追いはしないでおこう。
「先生、あんたは何者なんだ? 騎士団を従えたり、あのやばいやつと真正面から向き合ったり、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねぇの?」
ニグラスの質問こそ、俺たちが今最も疑問に思ってることだ。
「そうだね、そろそろこの私の正体をお披露目する時が来てしまったようだ」
席から立ち上がり変なポーズを決める。
「実は私、超すごい魔法使いなんです!」
「‥‥‥うん、で?」
「え、なんで皆んなそんな反応薄いの? チューベリー先生の時はガラスが割れるくらい叫んでくれたんだけどな〜」
俺たちが求めていたのはそういう回答じゃない、先生がすごいのはもう十分に理解している。
なぜそんなすごい人が、ローデンという辺境都市で、しかもこんな小さな学校で魔法科の教師をやっているのかということだ。
「あ〜それね、言ってしまうと〜知り合いに頼まれたんだよ、まあ半分脅しみたいなものだったけど、だから皇帝に、五年分有給を使わせてちょ〜だい! って、そして今の私があるわけだ」
大丈夫なのかそれ、不敬罪で普通に絞首刑じゃないの?
「君たちの質問には答えたよ〜、今度はそっちが私の質問に答える番だ、あの騎士のほかにもう一体すごいのがいたでしょ? それについて教えて欲しいな〜、私が来た時は跡形もなく消滅してたからさ〜」
俺たちは感じたこと、見たことを全て洗いざらい話した。
「神々の先駆兵ね〜、おかしいな〜あれは今居ちゃいけないやつなんだけど、まあいいや! それよりも〜さっきから全く喋らないルビリスちゃん! そのポケットに入ってるものを見せて欲しいな〜」
「え!? いや、これは‥‥‥」
ああ、魔石か、さっきから喋らないと思ったらずっと魔石が没収されないかを危惧してたんだ。
「一旦見せてくれるだけでいいからさ〜」
ルビリスは渋々ポケットから取り出し、レイナ先生に渡す。
「お〜! エーテル魔石か〜ここまで綺麗なのは久々に見たよ!」
ルビリスはずっと下を向き何も喋らない。
「基本は上級魔導士や貴族しか付けちゃダメなんだけど〜、そうだね、未来の大魔道士であるルビリスちゃんなら持ってても問題ないかな〜」
彼女の顔がパッと明るくなる。
「いいの!? やったー! 先生大好き!」
レイナ先生に飛びつく。
「いや〜照れちゃうな〜よーしよしよし!」
ルビリスの頭を撫でまくりながら、俺たちの方を見る。
「いろいろあったけど、皆んなお疲れ様! これにて、ダンジョン研修は終了です!」
こうして俺たちの、短いがとても濃かった旅は終わったのだった。
次回からまた学園編です!