かぐた王子
1
朝、教室に入るとそのど真ん中に竹が一本生えていた。直径50cmはあるだろうか。床から天井まで真緑の竹が一本生えている。じっと見とれていたが、しばらくなにも起こらなかったので、いつも通り花瓶の水をかえ、鉢植えに水をやった。そうこうするうちにクラスのみんなが教室に入ってきた。
みんな竹におどろいて触ったりするがしばらくすると朝の支度をして自分の席についた。
先生が教室にやってきて、5年2組の関係者が全員そろうと、竹の真ん中が光り始めた。
「かぐや姫じゃね?」
「やばくない?」
みんなが騒ぐ中「ちょっとまって、下がって下がって」と先生がみんなを教室のはしに寄せる。
先生が1メートルの定規を剣のように持って竹にそろそろと近づいた。そのときピシッと竹の真ん中にヒビが入り、おおきく2つにさけた。中からは先程よりも明るい光が放たれ教室は光に包まれた。
みんなが薄く目を開けると教室の真ん中、竹のあった場所には男の子がいた。男の子はかっこいいポーズをしていた。
スラリと長く白い足、と見えたのは白いタイツをはいているから。白い大きなビーチボールを2つ並べたような短いパンツに、スリムな胴体と両肩にも白いボンボンのような飾りがついている。きれいな金髪の頭の上にはどうくっついているのか、金色の王冠がチョコンと乗っていた。その服装から察するに
「王子?」
「王子?」
「王子?」
みんなが一斉に声を上げると、その王子はふうっと一つため息をつくと、髪を書き上げながらみんなの方を向いた。
「そう。僕は王子さ!かぐた王子だ。よろしく」
王子の後ろから光がさす。
「キャー!」
女子はメロメロだ。男子も一部メロメロだ。
「君、ちょっと職員室まで行こう」
王子は先生に連れて行かれた。
つづく
2
かぐた王子はかっこいい。みんなメロメロだ。
2学期の初めに急に現れたかぐた王子はその日のうちにみんなの人気者になった。
みんなはかぐた王子に学級役員をやってほしくてたまらない。
「学級役員はかぐた王子がいいと思います」
「賛成!」
「賛成!」
「さ・ん・せい!さ・ん・せい!さ・ん・せい!さ・ん・せい!」
いつのまにか賛成コールが起こった。
「みんなが言うのなら仕方ない。僕、かぐた王子が務めましょう」
王子はかっこいーポーズで立ち上がる。
みんなからは歓声が上がる。
そこに立ちふさがる人がいた。先生だ。
「ちょっと待った。かぐたくん、もう来ちゃだめっていったのに、今日もいるってどういうこと?誰かもわからない君に学級役員は任せられない!」
クラス中ブーイングだ。
「君たちもおかしいぞ。竹から出てきたんだぞ!人が!王子が!」
「その通り。僕がかぐた王子だ!」王子のかっこいーポーズ
「キャー!おうじー!」
「だめだ!みんな学級役員にはさせないぞ!かっこいいだけでは学級役員にはなれない」
「かっこよければいいじゃない」
「だめだ!かっこいいのは認めるが、だめだ」
ガラッと前のドアが開いた。
「認めよう」
「校長先生!」
校長先生が教室にあらわれた。
「校長先生、そんなわけにはいきません。こんなよくわからないかっこいー少年に学級役員はまかせられません」
「ふぉっふぉ。無条件に学級役員にはさせられないよ」
「えー」「えー」「えー」
クラスブーイング。
「さすが校長先生です。いくらかっこよくても学級役員はできません。で、その条件とは」
「うむ。①仏の御石の鉢、② 蓬莱 (ほうらい) 山の宝の枝、 ③唐土 (もろこし) の 火鼠 (ひねずみ) の 皮衣 (かわごろも) 、④竜の 頸 (くび) の五色の玉、⑤ 燕 つばめ の子安貝を持ってくることだ」
「そんなものあるわけ無いでしょー!!ぶー!」
クラス大ブーイング。
「あぁ、それなら・・」
王子はかっこいーポーズをとって、ズボンに手を入れた。王子の背後からいつも通りまばゆい光が放たれる。
すると右足から仏の御石の鉢が、左足から蓬莱山の宝の枝が出てきた。そして右肩に手を突っ込むと火鼠の皮衣 が、右の方からは竜の頸の五色の玉が現れた。
最後に髪をかきあげるとその手には燕 の子安貝があった。
「すごい!全部そろっているぞ!!」
5年生からは大歓声があがる。
「む・・ぐ・・・いや、それだけではない。『スーパーダイヤ』を持ってきたまえ」
「校長先生、そ、それは名探偵が怪盗と争った宝石ではないですか。今は、〇〇美術館に飾られているという・・」
担任の先生が後ずさりながら説明した。
「そんなの無理だろー!」
いつものようにブーイング
王子は再びかっこいーポーズを取っていた。そして校長先生に不敵な笑みを送る。
「なんだその笑みは!?」
「ま、まさか・・・」
王子は胸元からスーパーダイヤを取り出し、人差し指と親指でつまんで掲げた。今までで一番大きな光が王子から発せられる!
王子は警察に連れて行かれた。
3
王子がかっこよくて悲しそうな顔をして空を見上げている。
クラスで一番優秀なB君が話しかけた。
「どうしたの王子?給食にきらいなものが出るの?」
「ん?・・ああ、ごめん。確かに今日の給食のちくわが嫌なんだ。でもね・・」
王子は教室の前に行って、かっこよくみんなを振り返った。
「みんな、聞いてくれ」
王子の背後から光がさす。
「僕は実は月の住人なんだ」
クラスに衝撃が走る。
すると窓側の児童が月の異変に気付いた。なにか黒いひものようなものがこちらに向かって飛んできている。相当長い。
「君たちと出会って私はたくさんの楽しい思い出を作ることができた。」
「何だよ。王子そんな話するなよ〜」
ひもが教室に入ってきた。
「特に覚えているのは、みんなで廊下のカベの古いセロテープをとったこと。他にも・・うん・・ね・・」
「やめてよ。王子お別れみたいじゃない」
みんな泣き始める。
ひもが王子の体に巻き付いた。
「みんなと過ごした3日間はわすれない!」
「3日しかいなかったの!??」
クラス全員ずっこけた。
王子は月に連れて行かれた。




