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のうなし案山子は、空を見た。

作者: ほんの未来

 なんと カカシが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!

 いやはやどうにも困っちまったなぁ。

 え? 困ってるようなツラしてねぇって?

 冗談よしやがれってんだ。


 へのへのもへじなオイラにも、悩みのひとつぐらいありまさぁ。


 おっとこいつぁ失礼、まずは自己紹介をしねぇとな。


 生まれも育ちも山奥ど田舎、名は案山子。人呼んで、って、え? なに?

 あんやまこ、とか呼ぶんじゃねぇぞ? ちゃんと案山子(カカシ)って呼ぶんだよ。

 みんなオイラのことカカシって呼ぶんだけども、実際名前なんて特に無ぇも同然なんだけども、やまこちゃんなんて呼ばれた日にゃあ、オイラ泣くぞ?

 どうやって? そんなん知るかってんだい。


 っておいおいおい、イケてる顔に涙マークなんて落書きするんじゃねぇっての。

 ……あーあ、やっちまいやがったよ。まったくもう。


 こんな田舎の田んぼにボーっと突っ立ってるオイラなんだが、こうも長閑(のどか)な日々はそろそろ終わりを告げそうでねぇ。まいったもんよ。


 いやね、この田園の持ち主のガキの話なんだが、ええと? 名前はなんつったかな。忘れちまった。

 ああ? 頭に(わら)でも詰まってんのかって?

 その通りだよちきしょうめ。


 オイラのおつむの話は放っとけよ。

 まぁそのガキは大層頭が良くてねぇ。トンビが鷹を産むってなぁ、ああゆうのを言うんだろうね。

 チビの頃から利発で礼儀正しくて……オイラみてぇのにも、毎年のように新しいへのへのもへじを書いてくれたってぇもんよ。


 時が経つのは早ぇもんで、つってもオイラはここで朝昼夜に春夏秋冬(はるなつあきふゆ)と突っ立ってただけなんだけども。

 そんなチビ助も都会の大学行ったっきり帰ってきやしねぇ。

 そっちは田舎よりよっぽど楽しいのか、女でもできて一緒に暮らしてんだか知らねぇが、なんて思ってたらよ、どうにも具合が違うみてぇなんだ。

 宇宙開発だかベンチャーだか知らねぇが、今は軌道上の宇宙ステーションに居るっつうんだよ。いやぁ、おったまげたね。自分で撮ったっつう青い惑星の写真が届いたんだってよ。


 唯一の跡継ぎ候補がそんな感じってんで、そのうちここも放ったらかしの耕作放棄地になっちまうんだろうなぁ。オイラはいつまで突っ立ってればいいんだろうなぁ。


 ああ、そういやぁ、トンビや鷹で思い出した。

 オイラにとっちゃ、この辺の空を飛んでる奴ぁ大体マブダチでな。

 どいつもこいつも都合の(わり)ぃことは3歩で忘れる気の良い奴らばっかりなんだ。

 1歩も歩かねぇうちに忘れちまうオイラなんかより、ずうっと頭が良いときてる。

 そんなスズメよりもカラスよりも頭が良いアイツは、とうとう宇宙まで行っちまった。


 いやぁ、それにしたって不思議なもんだ。

 人間ってぇのは大概、翼も無ぇのにようやるもんだ。

 劣等感(コンプレックス)でも抱いてんのかね? ちぃっとばかし心配になってくらぁ。


 どうして、頭の良い奴ぁ、揃いも揃って、お空に恋い焦がれるんだろうなぁ。

 頭の悪いオイラにゃあ、そいつがよく分からねぇ。

 だって、どっちも同じじゃねぇのかな?

 世界の半分は、地面に見えてるし。

 残りの半分は、お空に見えてんだ。

 どっちが良いとか悪いとかじゃねぇんだ。

 キレイに仲良く半分こ。

 オイラには、そうとしか、見えねぇんだ。


 分っかんねぇんだよなぁ。

 日照りのときも、寒さの夏も。

 オロオロ歩くことさえできねぇときたもんだ。

 能なしカカシのオイラにゃあよう。

 それでもだ。

 春の田植えも。

 夏は水と肥料に気ぃ遣うのも。

 秋の一面に広がる(こうべ)垂れた稲穂も。

 冬の大事な土作りだって見守ってきた。

 いや、そんなもんどうだって良いんだ。

 ただ。腹を空かせたアイツが、握り飯を頬張る笑顔が、たったそれだけのことが。

 突っ立ってて良かったなと、そう思える全てだ。


 ある日、立ってろと言われた。

 NOなしカカシのオイラにゃ、断るスジもありゃしねぇ。

 朝も昼も夜も、ここに立ち続けた。

 風に吹かれ傾いちまった時も、そりゃロンのモチであったに決まってら。

 そのたびに、ダレカの手を借りて、毎度毎度よく立ち直ったもんさ。


 しゃんと背筋伸ばして、地面に足をつけて胸張って、ただただ立ち続けた。

 脳なしカカシのオイラにゃ、考えても分からねぇ。

資本主義(キャピタリズム)? 演算至上主義(ヴァーチャリズム)? 最近の話はよく分からねぇ。


 それでも、地上(ここ)だって、そんな悪かねぇだろ?


 そしていつの日か。

 この身は腐り果てる。

 かつて愛した大地に(たお)れている。

 すっかり朽ち果てちまった麦わら帽子。

 その透き間から、アイツの星が見えるんだ。


「ああ、綺麗だな」って。


 そして、涙浮かべて。

 ゆっくりと、目を閉じる。


   †


 なんつってなぁ、冗談さ。

 のの字の目ん玉をどうやって閉じるってんだ? 馬鹿言っちゃいけねぇや。

 涙だって落書きさ。てか書いたのオマエじゃねぇかよ。


 俺等(オイラ)はまだ大丈夫。しゃんと立ってられらぁね。


 お悩み聞いてくれてありがとよ。

 さて、仕事に戻るとすっか!


 そうして。

 のうなし案山子は、空を見た。

Q.なんでこんなの書いたの? 疲れてるの?

A.場面区切りで使ってる記号†(ダガー)がカカシに見えてきたから。


Q.寝たら?

A.今日は短編のアイディアが他に3つ浮かんじゃって眠れない。近日更新?


 あとがき下のところから、評価を頂けると作者のテンションが爆上がります。よろしくね!^^

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