私たちは、アイドルです。
西暦20XX年、かつて若者の街として栄えていたシブヤの中心に立つこのステージに、私は立っている。
「来たぞ!ラブリネスだ!」
どっと歓声が湧いた。ステージ中央の沈んでいた床がスポットライトで照らされ、ゴウンゴウンという機械音とともに上昇する。
「美波ー!!!!!!」
「さつきー!!!!!!」
「里帆ー!!!!!!」
ライトの下に立つ3人の少女に、次々と掛け声が向けられる。
美波と呼ばれた少女は、リーダーの高田美波だ。スラッと手脚が長く、肩にかかるくらいの黒髪が、白い肌に映えている。
その左に立つのが私、野田さつきだ。我ながら、くりっとした大きな瞳、端をキュッと結んだ小さな唇、高い鼻。人形のような顔立ちで、男女ともにファンが多い。
そして最後の1人は、真部里帆だ。褐色肌に金色に艶めく長い髪が特徴的だ。その小さな身体のどこから出すのかと思うほどの声量で、振り付けのアクロバットはほとんど彼女が担当するという、アクティブな最年少メンバーだ。
「今日もたくさんのイイネお願いします♪」
美波が言った。
"あいどる⭐︎バトル"は、このイイネの数が鍵となる。
イイネを貰うと攻撃ゲージが貯まり、決まった数に達すると、振り付けに合わせて攻撃を繰り出すことができる。
1曲が終わるまでに残っていた総HP残数が多いグループが1ゲームを獲得し、全5ゲームのうち3ゲームを先取したグループが勝者となる。
ただし、これはその場限りのバトルではない。その戦績によってアイドルは、最上位のランク5から順に、5つに区分されるのだ。
私たちラブリネスは今週デビューが発表された新人アイドルで、1番下のランク1だ。
とは言え、私たちが所属する事務所は、小さいながら抱えるのはトップアイドルばかり。私たちへの注目度はデビュー前から高かった。
「絶対勝とうね!」
やる気に満ちた顔で里帆が言った。
「バカね。あんたが前みたいにバク転失敗しなかったら勝てるわよ。」
相変わらず、情熱的な赤い衣装に似合わないクールな口ぶりで、美波が返事をした。
ムッとした顔で里帆が睨む。
やれやれ、と私が首を傾げていると、反対側のステージのライトが点灯された。
入場曲が流れ出すと、さっきよりも大きな歓声が上がった。
今日の対戦相手が現れたようだ。拳にぐっと力を入れた。
それも今や1ヶ月前の話。
私たちはランク1で停滞し、"期待外れ"と呼ばれていた──