【千佳と賢子】白線から出たらサメに食われるゲーム
さっきから賢子の歩き方がおかしい。
等間隔で歩いているかと思ったらジャンプをしたり。
「あ、賢子。白線から出たら負けゲームしてるでしょ。」
私は異変に気づき、こう言った。
賢子はクスッと笑った。
「ばれた?白線から出たらサメに食われるゲームやってた。」
正直高校生になってまでやるゲームじゃないが、賢子だから許されるようなところはある。
「けどさぁ、白線の外側にいるサメは白線から出ちゃった人間を食べて生きているわけだよね。」
唐突に賢子はこう言った。
「うん。まあ、そういう設定だから。」
「けど、気をつけてたら滅多に白線の外に出ることってないじゃん。白線ザメは何食って生きてるんだろね。」
「それこそ地面の中の虫とか、モグラとか食べてるんじゃないの。」
「すぐ簡単に結論を導こうとする。千佳の悪い癖だよ。もっと考えてこうよ。」
賢子は続けてこう言った。
「地面の中を自由に動いて、モグラとか食べれるなら、わざわざ横断歩道で人間を待ち伏せする必要なんてないじゃん。」
「たしかに。ぐう正論ですわ。」
私はネット掲示板を読むのが好きで、時々出てしまう。
「そもそも、サメって何で白線の上には登ってこないんだろう。」
「ん。もしかしてサメには肉体がない?」
「そう。もしサメが横断歩道にうじゃうじゃ泳いでたら、道路なんてめちゃくちゃだよ。」
「そっか。サメには肉体がないから、道路には影響がないのか。」
「でも、サメは人間を食べるんだよね。何のために食べるんだろう。」
賢子はこう言って頭をぐりぐり指で押していた。
「恨みとか?怨恨とか?」
「たしかに。サメって海の中だと最強だけど、人間に簡単にとられちゃうもんね。」
「だね。しかもフカヒレとかにして食っちゃうわけだし。」
「サメは人間を恨んでるんだよ。どんなに努力しても勝てない、一方的に殺される。」
「それでサメは人間を恨んで霊になった。海じゃなくあえて横断歩道を選んで、油断している人間を呪い殺している。」
「白は神聖な色だから、サメの呪いは弾かれる。だから、白線から外に出るのを虎視眈々と待っているってことか。」
「千佳、やったね。長年の謎を解明したね。」
笑う賢子に私は足元を指差してこう言った。
「賢子アウト」
賢子の足は見事に白線の外に出ていたのだ。