マゾ魔族を討伐せよ。
あばばばばばば
廃教会は長らく放置されていたのかガラスは破れ、建物にはヒビが入り、蔦に覆われいている。
「何してんだ?早く入るぞ?」フォルテがなかなか進まないので急かす。
「やっぱり、これは罠よ。嫌な予感がする。」
まあ、確かにこんな人目のつかないところへ誘導しているのだから、穏やかにことが進むとは俺も思ってはいない。
「ラーニャは一旦置いていくか。」
「私も行きますっ!」
珍しくラーニャが不満をこぼしたのに驚いた。自分の問題はやはり他人任せにしたくないのだろう。フォルテも天使の力を失ってしまっているので戦闘力は並の冒険者程度しかない。連れて行こう。
皮肉にも一番役に立たないのは俺だが。
生い茂る茂みをかき分け、中に入ると確かに誰かいる気配がした。
「…こんにちわ」とりあえず、声をかけてみる。影にいてあまりよく顔は見えない。
「やっと来たか。」
影の主がこちらに歩きながら言う。割れた窓から差し込んだ光か顔を映し出す。漆黒の翼に尖った爪、腰には刀を刺している。…魔族だ。
「私は魔族四天王の一角、一燐だ。」
「大操吹が欲しいんだが…」
やばいやばい気配がやばい、前のボスモンスターと同じくらいやばいオーラを放っている。
交渉できる相手とは思えない。
「安心しろ、あの台座の上にある。私に勝ったならくれてやる」
…デスヨネー。
「3日待たされるという焦らしプレイもなかなかだったが、今から打ちのめされる自分を想像すると、盛るものがあるな」
おおっと、まずいこれは魔族じゃなくてマゾだ。
「まあ、最もお前ら雑魚の攻撃なぞ喰らうまでもなく、このサディス刀で苦痛の海に沈めてやるがな…!」
何その矛盾したダサい武器!?自分で自分を傷みつけて興奮するやり手かこいつ!?!?
「食らいなさいっ!」痺れを切らしたフォルテが、神聖術魔法を唱える。
当たれば効果は抜群だ。
「ぐっはあああああああああん」呆気なく直撃し、なんとも色気ない声を出しながら一燐は悶絶する。
「ふっなんてな。大きなダメージを受けたことでスキル〈マゾーン〉が発動するぜ。」
よくそんな小っ恥ずかしいことをよく言えたもんだと思ったが俺も似たようなものか。
「くらえっ!」一燐が攻撃してくる。さっきよりも速度が上がっている。
くっ…避けれない。
だが、ラーニャがギリギリのところで守ってくれた。ラーニャの反射神経も負けてはいない。
しかし、パワーは負けており押されている。
くそ、どこかに突破口が…。
さっきのダメージ的にもう一度神聖術魔法を当てさえすれば倒せるはずだ。
「フォルテ俺がこいつを引き寄せるから、フルパワーで吹き飛ばしてくれ」
「そんなことしたらあんたまで浄化されちゃうわよ!?」
「大丈夫だ。俺に任せろ」実際、この作戦が果たしてうまくいくかわからんが、そんなこと言ってられない。
「…いいわ信じてあげる。」
「よし、ラーニャは俺の援護を頼むっ!」
「はいっ!」
戦闘の慣れもあるかもしれないが、かなりチームワークが良くなった気がする。
「こっちだ魔族っ!そのネーミングセンスのかけらもないガラクタでかかってこいよ!!」
「なんだとぉ!あの大操吹とやらを買うのにどんなけ私の愛剣を売ったと思ってるんだ!!普通そういうのは経費からだすもんだろっ!」
いや、知らんがなっ。
だが、十分に時間は稼げたようだ。フォルテが神聖魔法をぶっ放した。
眩い光は俺ごと一燐を飲み込んだ。