勇者ゼロ
きっといつかロリを掴むその日ーまーでー
目を覚ます。体を起こし、目を擦ると黄金に輝く神殿の柱の様なものがぼんやりと見える。
段々と視界が戻ってくる。
確信した。間違いない、俺が死んだ時に来た場所だ。
しかし目の前に高価な椅子に座った女の天使は居なかった。そこには大きな穴があるだけだった。
恐らく俺が開けた穴だ。
「罪悪感でも感じているのかい?」何者かに声をかけられ、振り向く。
そこには、紫色の髪の中学生くらいのロリがいた。
「誰だ?」
俺は幼女だろうと、舐めてかかると痛い目に遭うことは、よく知っているので、警戒する。
天使かとおもったが輪っかがなければ、羽もない。
「そう警戒しないでくれたまえ。僕はその世界、すなわちアンノウンの創造主だ。」
こんな子どもが創造主…?だがそうなら今の状況にも納得できる。
俺が憎んでいたのはこの子だったのか…?
「今まで君が見ていたのは、言うまでもなく前世のきみさ。楽しんでもらえたかな?」
「何が目的なんだ。」俺は創造主の目的が分からず困惑する。
「あはははは、僕はあえて君が好きだった異世界を構築し、前世の君と接触のあった人間に近い生命体を生成した。最も、全て天使君がリングを破壊した副作用のようなものだ。」彼女は紫色の髪をなびかせた。
「もし君が望むのなら、君を今み見てきた世界。と言っても、本当に君が生きていた世界とは異なるんだけど…。まああの世界に、君を、送ることができるんだ。」
「何故そんな俺にメリットのある選択肢を与える?その目的を聞いているんだ。」
「僕は、君に借りを作っているんだ。最も、もう10年くらい前の話だけどね?あ、この姿は当時の私に近いアバターだよ。あのことは本当に感謝しているよ。」
10年前?俺の若い頃だろうか。全く記憶にない。だが確かにこの子どこかで…。
「で、どうするの?アンノウンか今の世界、どっちに転生する?ゼロのあなたか、透としてのあなたどちら?」
考える時間を全く与えてくれない。
だが、俺の選択は昔から決まっている。
「俺はアンノウンに帰る。やり残したこともいっぱいあるしな。」
今までいた世界も嫌いじゃないむしろ好きだ。もういけないとなるとかなり寂しい。
だが俺のいるべき世界ではない。
創造主は優しく微笑んだ。
「君なら、現実世界にもう未練なんてないって言うと思ったよ。」
そしてパチンと指を鳴らした。
だんだん視界が明るくなっていく…。
「君の名前は?」俺は遠のく意識を保ちつつ彼女に尋ねる。
「そうそう、答え合わせの時間だね。君と遭うことは残念ながらもうないからね。」と彼女は少し俯きながら話し出した。
「私の名前は入江穂波。10年前…。あなたで言うと前世最後の日最後の1秒、私を庇って死んだあの日から、私は10年近い年月をかけて、僕は死んだあなたの細胞を、人為的に生み出した世界に転送するシステムを開発したの。」
「あなたに恩を返すために…!」そう言った彼女の瞳からは涙が流れていた。
そうか、だから俺は、前世に未練を感じなかったのだ。誰も救えなかった無力な俺がロリの命を救えたのだから。
「あとこれ、忘れ物だよ。」そう言った彼女の手にはラードセルが光り輝いていた。
「さよなら…、私の勇者様。」彼女は言った。
何か言おう思ったが何も考えられない。そのまま俺は眠りに落ちた。
目を覚ますと、アンノウンに戻って来れたようだ。見覚えのあるいつもの景色が広がっていた。隣の部屋をそっと覗くと、ラーニャとフォルテは気持ちよさそうに眠っていた。
この世界でも夏が始まるのだろうか、少し蒸し暑い。
あれは実は夢だったのではないかと思うくらい日常が流れていた。
だが、俺のベットの横には確かにラードセルが赤く光り輝いていた。
頭の整理がおいつかない。俺は、現実世界のシステムによって構築された世界にいるとか言っていた。
考えてみても全くわからない。
だけど今はそんなことはどうだっていい。
だってそうだ
俺はこの世界の勇者なのだから!!!